第十八話 ~戦いの終わりにⅠ~
●皆様、お久しぶりです。
随分と久しぶりの投稿となりました、申し訳ないです。
あと、本日、令和元年6月25日は、本作の書籍版『剣と弓とちょこっと魔法の転生戦記2 ~凡人貴族、好敵手との邂逅~』(http://mfbooks.jp/7113/)の発売日です!
どうか皆さん、買ってください!(切実)
web版を呼んでくださった方々にも楽しんでいただけるように、手を入ってますから!(迫真)
●本章のあらすじ
帝国においては、度重なる周辺国からの侵攻を経て、今こそ元凶たる王国征伐の時との機運が盛り上がった。
エレーナの政敵である三大派閥系の皇族たちや部隊が本隊として華々しく戦いを繰り広げる中、エレーナ軍団は、囮として別動隊を率い、アラン・オブ・ウェセックス伯爵の籠るウェセックス城で激しい攻防戦を繰り広げていた。
しかし、帝国本隊が敗退の報が入ると、状況は一変。
エレーナ軍団は、敵中に取り残されぬため、急いで撤退をすることとなった。
しかし、ガリエテ平原でエレーナのいる本陣方面へと中央突破を仕掛けて無事に撤退して見せた将才と胆力を持つアランが、黙って見逃すわけもなく。わずかな帝国側の部隊連携の乱れから状況の変化を読み取り、素早く追撃態勢を整えていた。
その後、しんがりの潰走を受けて足止めのために残ることにしたカールは、ついに実用段階に入った鉄砲などを駆使して圧倒的な兵数差をものともせず戦うが、限界は近かった。
そんな中、カールを落ち延びさせるために副参謀長ナターリエ・フォン・ヴィッテや、カールの私兵時代からの部下であるホルガーらがカールを武力でもって制圧するとの強硬策に出たところ、エレーナ率いる騎兵部隊が戦場に到着。
そのまま、両者後退との形で、ウェセックス城退却戦は終幕を迎えた。
「いや~、心配かけたみたいで悪かったね」
「本当ですよ、義兄上。自ら敵将と一騎打ちして、流れ矢を受けて落馬なんて……ゴーテ子爵家当主という、自らの立場の重要性をお分かりですか? 落馬を見て戦死と誤情報が出回っただけだからまだよかったものの、もしも本当に戦死していたら、私が姉上にぶっ殺されかねないとかいう次元の問題じゃないんですよ? 何より、エレーナ様の来援が少し遅かったら、義兄上にお任せしていた戦線が崩壊していたかもしれないんです」
「え? ……お、おう」
釈然としないって顔に書いてある、天幕内のベッドの上でまだ絶対安静の義兄上を見てため息を一つ。この人は、事の重大性が分かってるのやら。
――若くて優秀なエレーナ様よりの人材なんて、簡単に替えがきかないんだから。
「では、義兄上。お大事に」
「うん。その気持ちはありがたく受け取らせてもらうよ」
ウェセックス城からの撤退戦は、エレーナ殿下率いる騎兵部隊の急襲で双方引き上げという形で決着がついた。その後、騎馬部隊ばかりで駆け付けたらしいエレーナ様らに遅れてやってきた、マイセン辺境伯率いる主力の歩兵部隊と合流し、全力で帝国領内へと撤収。
その間、俺は怪我をしてたでもないのに、なぜか全部の仕事を免除され、常に誰かしらの監視下で大人しくさせられてたんだが、重傷だった義兄上が目を覚ましたと聞いて見舞いに来たのが現状である。
早く逃げないといけなかったこともあり自らの扱いに異論を挟めなかったが、味方勢力圏へとたどり着いたんだし、色々と言いたいことを言ってもいい時期じゃなかろうか。
「なぁ、オットー?」
「それはちょうどよかった。エレーナさまがお呼びです。どうぞ、こちらへ」
久しぶりに一人になり、もしや『本職』の暗部の連中がついてるのかと冗談半分で、我らが諜報部の長を呼んでみれば、いつもの人畜無害そうな笑みを浮かべながら本当に出てきやがった。
……まったく、プライバシーも何もあったものじゃないな。
そうして誘導されるままに陣内を進むのだが、その様子を見てどうしても気になったので、思わず口を開いてしまった。
「なあ、オットー。俺がどうかしたか?」
「いえ、特に何も」
振り向きもせず、淡々とそう返される。
とは言え、明らかに後ろからついていく俺を気にしてる素振りだし、何か気になってるんだろうけど――と、どう聞いたものかと考えていれば、しれっと思わぬ言葉が耳に入ってきた。
「ただ、私のような怪しげな者に、いざとなればソフィア皇女殿下を殺せなどと命じた時よりは落ち着かれたなと。それだけです」
「別に、その言葉もトチ狂って出たわけじゃないぞ」
物騒な話題だからか周囲を気にしていたオットーは、俺の返答を聞いて、いつもの笑みが少し崩れかけ、何とか持ち直した。
「お言葉ですが、皇女殿下の生殺与奪を、私のような日陰者に決めろなどと言う『遺命』を残されたのですよ?」
「俺に死ぬ気はなかったってことは置いといてだ。お前だってバカじゃない。そんな、お前しか聞いてない『遺命』なんてものが、お前ら諜報部の身を守ってはくれないことくらいは分かるだろう?」
皇女を殺すなんて、それこそ一大事だ。
足がつけば一発アウトだし、そうでなくてもエレーナ様やマイセン辺境伯らから胡散臭がられている諜報部は、変に疑われて動きにくくなったり、軽んじられるようになるリスクもある。
「それに本当にソフィア殿下が後ろ暗いことをしてるなら裏を取って真っ当に告発してくれて万々歳。足もつけずに私利私欲で暗殺しきる能力と意思があるなら、俺が何を言わずとも利益になると見れば殺すだろ?」
「その『遺命』のために、暴走するとは考えませんでしたか? 勝手な正義感で、疑わしいところを暗殺し、混乱を招くだとか」
「俺が死んだ後、そんな程度の判断力のやつが諜報関係を握ってるようじゃ、何もかもが足りないエレーナ閥が生き残るのは無理だろ。――がっかりしたか? 信用されてるからこその言葉じゃなくて」
「安心しました。簡単に裏世界の人間を信じるようなお人好しを上司として仰ぐことにならなくて」
いくらか明るくなった声でそう言ったオットーは、会話の間にたどり着いたある陣幕の前で足を止めた。
「では、どうぞ」
そんなオットーの言葉に見送られて陣内へ入ると、そこは控えめに言って地獄だった。
「来たか、カール」
底冷えするような言葉で俺を迎えたエレーナ様をはじめ、エレーナ閥の幹部・重鎮が勢ぞろいなのだが、全体的に居心地が悪くなるような圧が強すぎる。
――俺は今から、処刑でもされるのだろうか?
え? 短い?
今度は短期間に投稿する予定なんで、許してください(震え声)
何でもはしないけど!
それでは、改めまして、本日6月25日発売の『剣と弓とちょこっと魔法の転生戦記2 ~凡人貴族、好敵手との邂逅~』(http://mfbooks.jp/7113/)をよろしくお願いします!




