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第十六話 ~戦いの結末~

 カンナバル平原での思わぬ襲撃で国王に対する追撃を中止したエレーナ師団は、そのまま近くの城に入って国境向こうへと撤退していった王国軍の動きをうかがうこととなった。


 そうした一連の流れの中、アランの襲撃が終わってすぐ、最低限の事後処理が終わったところでアンナのところへと飛んでいった。

 俺をかばってくれた相手だし、それはもう心配したのだが、思ったよりも元気だった。

 いや、元気すぎると言うか……。


「ほっ……。アンナ、元気そうで安心したぞ」

「カ、カール様!?」

「ああ、そんな飛び起きるなよ。攻撃が通らなかったって言っても、かぶとが派手に砕けるくらいの衝撃を後頭部に受けたんだ。ありがとう」

「お、お礼なんてそんな! カール様の頭脳は、きっとこれからのエレーナ陣営どころか、帝国全体の至宝となるべきもの! こんな私の命一つでお守りできるなら、どれだけでもささげてみせます!」


 俺は震えたよ……。


 こいつ、エレーナ様からのポイントを稼ぐ手段として俺を派手にヨイショするために、命までけた? いや、まだ本調子でもない中で、命を張った状況を、ヨイショするために最大限利用してやがる!

 それに気付いて、震えが止まらなくなった。

 この、目的のためにはどんな状況でも根性と頭脳で最大限利用しつくしてやるとの執念が足りている同い年の少女は、きっと将来大物になるに違いない!


「ありがとう……ありがとう、アンナ。お前のことが、また少し分かったよ。お前がうちに来てくれて、本当に良かった」

「え? 気持ちが、伝わった? ……カ、カールさまぁぁぁぁあああああ!!!!!!」


 そのまま大泣きまでしてみせたアンナをしばらくあやし、負傷者の負担になってはいけないと早めに立ち去った。

 後日、以前よりも明らかにエレーナ様の覚えめでたい様子のアンナを見て、彼女のたくましさを再確認した。


 で、アランがどうして湧いて出たかとか、王国軍がこの先どう動くかとか、何も分からないままにしばらく師団を休めながら様子を見る日々。

 そうこうしている間に、王国側に大きな動きがないまま、アルベマール公の率いていた王国の前線部隊の方を国境の向こうへと叩き出したマイセン辺境伯の率いる西方諸侯軍と合流した。


「えー、では。今回は互いの情報交換会ということで、どうぞよろしくお願いいたします」


 合流先の城の一室でさっそく、ソフィア殿下、マイセン辺境伯、俺の三人で合流までの状況について情報交換するために集まっていた。

 軍は存在するだけでも幹部陣の仕事は多いし、今は戦時だけあって余計に、だ。情報交換くらいならとりあえずは最低限の人員で行って、必要とあらば勢ぞろいでの会議を開く形にしないと、非効率極まりないのだ。


「こちらについては、大したことはございませんでしたわね」


 早々に笑顔でそう言ったソフィア殿下に対し、難しい顔をしたマイセン辺境伯は何も反応しない。

 本当に報告を聞く限りは大した話はなかったが、たぶん、俺たちがアレギア山脈を越えるために離脱した後も、諸侯を抑え込むために殿下が色々とやってたんだろう。それはもう、仕掛けられた方が悪辣あくらつさに最後まで気付かないような、そんな政治家らしい立ち回りを。

 これまでの殿下との短い付き合いと、マイセン辺境伯の反応を見る限り、恐らくは合ってるはずだ。


「えっと、じゃあ次はこっちなんですけど、まずは先にお渡ししていた通り、中央の参謀本部から王国への逆侵攻の命令が――」

「無視しておけ。次」


 マイセン辺境伯はバッサリだが、当然だろう。

 今回の一連の戦いの中では、王国軍を追い散らしただけで、殺せた数はそう多くない。

 アランが率いていた帝国南西部へと攻め込んできていた軍勢も国王に合流しており、そのアランを抑え込んでいたラウジッツ辺境伯は後で報告するつもりの理由によって動けない。

 そうなると、推定こちらの四倍以上とも考えられる王国側に対し、こちらから地の利まで捨てて攻め込むなどといくらなんでも自殺行為だ。

 中央を牛耳ぎゅうじっていてエレーナ閥の政敵である三大派閥としては、あわよくば痛い目でも見て来いってことだろう。だが、適当に何かやったけど上手くいきませんでしたとでも報告書をでっち上げておけば、こんな無茶な命令の責任を問うなんていう、責任を問う方の恥をさらすだけの行為まではしてこないはずだ。


「それでは次ですが、ラウジッツ辺境伯が隠居なされるそうです。跡継ぎは、長男だそうで」

「居城を落とされ、方面軍をほぼ崩壊させてしまった責任を自主的に取る、か……。これまでの実績を考えれば、しばらく謹慎きんしんするくらいでも文句を言う者などおらんと思うが、アレは真面目だからのう……」


 オットーがラウジッツ城が陥落していたって情報を持ってきた時は、しばらく何も言えず、その後で再調査を命じた。

 結果、一度落ちたのは事実で、国王の危機に迷わず城を放棄して救援に行くと決めたアランが、一度生け捕りにしたのを今更首を飛ばしたりはしないと、ラウジッツ辺境伯以下捕虜をすべて解放したと聞いて、変な笑いが出た。


 やけっぱちになって抵抗されて面倒事になるのを避けるためだったんだろうが、武人として殺されてもおかしくない場面で見逃されたってのも隠居の理由の一つだったのかもしれない。

 まあ、主たる理由は、責任も取らずに総大将であり続けるのは不都合も大きかったんだろうが、次のラウジッツ辺境伯となった三十代前半の長男が体制を整えるまでしばらく戦力として計算しにくいのは困るんだよなぁ……。

 それを覚悟してでも代替わりしないとやってられない状況にまでなってたのかもしれないけどさ。


「次が大きなものとしては最後ですが、アラン・オブ・アルベマールが断絶していたウェセックス伯爵家の名跡を継ぐことになったと、公式に王国で発表されたそうです」

「ラウジッツ城陥落の立役者にして、カンナバル平原での活躍。それ以前のことも考えれば、か。王国に、訳の分からん若者が出たな……」


 しばらく俺の方を見たマイセン辺境伯が、重く深いため息をく。

 気持ちは分かるぞ。あんなチート野郎を見て、やってられるかってんだ。


 まず、ラウジッツ城陥落の経緯が頭おかしい。

 包囲を解いて偽装退却し、追撃に出てきた、今では『前』ラウジッツ辺境伯となった男の率いる軍勢を逆に叩いた流れ。

 第一に、偽装退却したところで、籠城している前ラウジッツ辺境伯の司令部が追撃に出る確証がないとの博打ばくちに勝たねばならない先行きの見えない策である。帝国が三正面作戦中だったとの戦争全体の情勢を考えれば追撃に出る動機は大きいとはいえ、釣り出せなければ将兵に徒労感とろうかんだけが残って、後の攻城戦にも悪影響が出かねないのだ。

 第二に、釣り出せたところで、アランにすれば、本当に引き上げるように見える陣形でないと釣り出しなんてできないことから、迎え撃つ陣形は完全に戦闘用のものではなく、反転時や陣形変更時のことを考えれば、高い部隊運用能力がなければ釣り出した部隊に本当に打ち倒される危険がある。

 第三に、結果としてはカンナバル平原で彼らの国王を救う結果となったが、攻め落とす時点では西方戦線は王国優勢で、先に上げたようなリスクを積極的におかす必要はない。


 これらの条件下でやり抜いた実力と幸運、さらに結果的に迅速な国王救援に結びついた部分での更なる幸運と、敵としてみるとふざけてるとしか言いようがないやつだ。


 カンナバル平原のことも随分とヤバい。

 時系列で考えると、俺たちが国王と近衛兵団を追いかけ回してると聞いて、即座に帝国攻略における重要拠点であるラウジッツ城の放棄を決めている。この自分の功績の象徴にたいする思い切りは、どう考えても十代のガキが簡単に出来ることじゃない。

 さらに軍勢の大半が落伍らくごするような強行軍で駆けつけて疲弊ひへいしきった兵力で簡単に突き崩されなかった先陣も凄いが、それが崩れる前に少数で斬り込んでこっちの陣内を混乱させ、短期決戦で追撃を止めてみせたアランはもっと凄い。


 アランが馬を失って孤立した時は、奴を討ち取る最大のチャンスだったが、それも失ったしな。

 後から考えれば、余裕ぶって軽い雰囲気を出してたことや会話も、馬を失って逃走が困難になったことから味方の救援を待つ時間稼ぎだったのかもしれない。


「それにしても、マイセン辺境伯の管轄沿いにある両国の国境の領地を与えるのに、辺境伯でなく伯爵なのですわね。王家の血筋とも近い公爵家の出であることと、若すぎる出世での嫉妬しっとを考えた上で、出来る限り大きな権限を与えたのでしょうか。形の上では父親であるアルベマール公が責任者となるのでしょうが、配置的に、一定区域の防衛は実質的に新伯爵の担当になるのでしょう。アランとかいう若者には、アルベマールの家に残っていただいた方が面白かったのですが、仕方ないですわね。せめて中央で抜擢ばってきされれば、急に湧いて出た三男坊に次期アルベマール公の芽が分かりやすく残ることからまだ『期待』出来るのですが、そんな半端はしないでしょうしね」


 そんなことをぶつぶつ言ってるソフィア殿下の黒い笑顔が邪悪すぎて、俺もマイセン辺境伯も何も声を掛けられなかったです。

 いやだって、『期待』って何ですかとか聞いたら、想像の上をぶち抜いて行くような言葉が当然のように出てきそうな雰囲気だったし……。


 総じて特筆するべきことは何もない話し合いでした。うん。





 カンナバル平原での衝突から約四か月。

 帝国西方では、両国共に何の動きもないままに過ぎ去っていた。

 こちらとしては動くには兵力が足りなすぎるし、王国側は推測になるが、王国西方から無理矢理兵力をかき集めてまで編成した、ガリエテ平原で失ったメンツを取り戻すための軍勢が叩き返され、士気的にも政治的にも積極的に動ける状況になかったのだろう。


 そんな平和な西方の動きを受けて中央から予備兵力が大きく投入された、北の対連合王国戦線と南の対南洋連合戦線はむしろ戦いが激化したらしいが、ついに終結したらしい。

 ガリエテ平原の時と違って、王国軍が崩壊したわけではないことからまだ戦略的に無価値にはなっておらず、南北の敵が即時撤退には至らなかったようだ。


 そんなこんなでまたもや戦後処理のため、久しぶりの帝都である。

 帝都に戻ってすぐ、前ラウジッツ辺境伯が、結果として自らの失態を取り返してくれた礼であるとして家宝の一つを持ってエレーナ様のところを訪れるも、カールのお蔭だぞとか何とか意味不明な供述をしてエレーナ様が俺のところにたらい回すとかいうトラブルはあったが、大したことではない。

 上司として責任も功績も第一義的に受け取るべきはエレーナ様だってことを教育するのは、もう諦めた。

 まあ、そのときにならねば分からないとはいえエレーナ様は責任だけは勝手に背負ってくれそうな感じもするし、俺たちが今後たらい回された人に頭を下げれば何とかなるはず。


 今は、ソフィア殿下が持ってきた情報を聞き、エレーナ師団帝都郊外の本部で、幹部たちが顔を突き合わせているところである。


「今回の戦争における論功行賞。エレーナ様は勲功第二位、ですか」

「ええ。おそらく、間違いはないでしょう。三大派閥としても、またもやエレーナ様が第一位となれば良い顔をしないでしょうし、政治状況を考えても間違いないと思いますわ」


 俺の確認に、淡々と返すソフィア殿下。

 今回の西方での一連の戦いは、敵陣を崩しはしたが、殺した数はそう多くない。同時期のラウジッツ城陥落の衝撃でかすんだのか、何か人為的な働きかけがあったのか、中央ではそう大きく取り上げられることはなかった。

 むしろここしばらくの帝都は北や南の激闘一色であり、その中でも戦争末期の一つの戦いが話題になっていた。


「ターレス河畔かはんの戦い。中央軍第一師団長ライナルト・フォン・ライツェン男爵が、五万の軍勢を率いる軍団長として、南洋連合の二十万の軍勢を消し飛ばした。僕が生まれる前からずっと英雄だった人だけあって、流石さすがだね」


 ナターリエが感心したようにながめる新聞の一面を連日独占するのが、その中央軍大将ライツェン男爵である。

 今、帝都はこのターレス河畔の戦い一色であり、確認するまでもなく彼が勲功第一位なのだろう。

 三大派閥系の諸侯でもあり、むしろエレーナ様より上に持ってくるのに、これ以上はない人材だ。露骨にエレーナ様を低く扱えば三大派閥系の横暴を印象付けることとなり、非三大派閥系の派閥まで刺激しかねないが、ライツェン男爵ならばいくらでも正当性を理由づけられる。


「なあ、私は勲功第二位なんだろう? そんなに評価されて、何か問題があるのか?」

「え? ああ、いえ、具体的にどうということはないですよ」


 そう。エレーナ様の言うとおり、大戦争での勲功第二位は十分な高評価。

 だが、その戦略的・政略的価値に比して本当に正当な評価であるのか。これからの三大派閥の出方を予想する上でも、小さな問題ではないのだ。


「私も士官学校でお名前や評判は良く聞いたのですが、実際のところはどのような人なんですか? ヴィッテ子爵は、元同僚ですよね?」

「役職的には同格に並んだことはあるが、とてもあの人に並びたてたなどと言えないな」


 アンナの言葉に、ヴィッテ子爵は困ったように笑いながら答える。

 様子を見る限り、ライツェン男爵に対し、悪い印象はない様だ。


「あの方は、若いころから功績を残し続け、七十歳を超えた今でも精力的なお方だ。エレーナ様が元帥に叙されるまでは、生前か死後かはともかく次の元帥に最も近い者とも言われていた。ここしばらくは後進に経験を積ませる意味もあって出来るだけあの方自身は前線へと出ていなかったが、それで衰えたようなところは見えなかった。一方で領主貴族としては変わっていて、政治的な活動はほとんどしない方だった。武人としては政治に関わらないというのは立派だったが、領主貴族としてはあの圧倒的な武功がなければやっていけなかっただろう。まあ、政治に関わらなくともやっていける点は、私も含めて軍内にうらやむ者も多かったが」

「有能で政治的に従順で、血筋的にも身内。三大派閥体制下においては、多少の警戒だけしておけば使いやすい部類ですわね」


 ソフィア殿下の分析に、ヴィッテ子爵は何も言わず、肯定するようにただ肩をすくめる。


 にしても、政治的に何もしないってのはすごい。

 中立派とか気取ってる連中も、中立とは場合によっては全部を敵に回す可能性もあるからこそ政治的立ち回りは余計に重要になる。

 これは、派閥内であっても、派閥内派閥の対立など複雑なアレコレを考えれば同じく政治的な難しい考慮は重要となる。

 うちだっておじいさまは色々と気を遣って動いてくれているからこそ俺が好き勝手やってるわけで、そりゃライツェン男爵をうらやむ連中は少なくないだろう。


「すると三大派閥としては、大きな脚色をしてでも持ち上げたとして、後で調子に乗ったライツェン男爵に手をかまれる心配は薄いんですよね。正直なところ、ターレス河畔の戦いは、どれくらい脚色されていると思いますか?」


 俺の問いかけにヴィッテ子爵は少し考えると、思ったよりもずっと早く答えが返ってきた。


「私にとっては材料が少なすぎて、とてもじゃないが判断が付かない。ただ、南洋連合は軍事を軽く見ていることもあって、正規軍は治安維持に最低限必要な程度しかない。外征軍は傭兵団の寄せ集めで、質も連携もそう期待できない。四倍くらいの戦力差であれば、ひっくり返すことが出来る者は何人か居るだろう――数の暴力を前に攻めるべき時と場所を正確に見極め、万を越える将兵を掌握しきる統率力と、動かすべきところに動かせるだけの部隊運用能力があれば、だが」


 つまり、見極め、統率、運用と、いずれもライツェン男爵は持ち合わせてるって評価か。

 比較的高齢だが、さっさと死んでくれれば、との甘い見通しはやめた方が良いだろう。

 三大派閥の隠し玉としてこれからはどんどんと出てくるかもしれないな。


「あの、そんなすごい人なら、エレーナ様に対抗して今回の功績で元帥叙任もあるのではないですか?」


 先のことを考えていた俺の脳内でフィーネのその言葉が処理されたとき、思わず「あっ」という言葉がれた。


 確かに、対抗馬という意味であれば軍事的な面だけでも同格にしてくる可能性は高い。

 何かそうなったら不都合があるかと考え始めたところで、上品な失笑が聞こえてきた。


「いえ、失礼。出来なくはないでしょうが、三大派閥側としては、その手は使えないと思いますわ。だって、ライツェン男爵が今回消し飛ばしたものは、『二十万の敵』ですもの」


 何を言われたかすぐには分からなかった。

 そうしてしばらく考え、とある新聞が目に入ったときに答えが浮かんだ。


「数だけ多くても、名も無い雑魚ばかり……」

「ええ。元帥号には釣り合う人材かも知れません。ですが、今のタイミングでは、つい最近叙任されているエレーナ様と比べられてしまいますもの。わざわざ話題が下火になっているエレーナ様の話題を復活させる必要はないですし、一戦で一国を傾かせるほどの数の有名な将の首をった若き元帥との比較などされたくはないでしょう」


 結局、オットーの元諜報部の組織を活かしてエレーナ様の評判を流すくらいしか案は出なかった。

 正直、今回のエレーナ様の戦いは、素人にも分かりやすい派手さはないことから効果は疑問だが、やらないよりはマシだろう。


 三大派閥の出方についても、今回の評価は露骨な介入は見られないし、しばらく様子を伺うしかないということで意見はまとまった。





◎カンナバル平原の戦い


第一次世界大戦後期、カンナバル平原で行われた戦い。

イセリース丘陵の戦い後、国王の首を獲らんと追撃する帝国軍に対し、『獅子王の爪牙』アランが攻め掛かって追撃を断念させた戦い。

エレーナとアランの一騎打ちで有名。


一説には全軍の八割を超える落伍らくご者を出した強行軍でアランは駆け付けたともされる。


この戦いにおける一騎打ちでは、止めひもを切られたアランは兜を飛ばされ、エレーナは後頭部に攻撃を受けて共に兜を失った。

この時の兜は、一時期行方不明になった後、長年にわたって、アランの物は帝国で、エレーナの物は王国で国宝として保存されていた。しかし、大陸歴千九百八十七年に極東での代理戦争をきっかけにした両国間の直接衝突から第四次世界大戦は必至と考えられていたところで行われた、両国の電撃的国家元首会談における歴史的和解であるフリシェク条約の締結と共に、両国の友好の証としてそれぞれの保有する兜の交換が約束された。

現在、兜はそれぞれの祖国に戻り、国宝として管理・公開されている。


帝国史用語辞典(帝国歴史保存協会、第九版、大陸歴千九百九十七年)の同項目より抜粋



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