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ある病人の臨終
まだ春の朝も明けきらぬ頃。
一人の少年がこの世を去った。
「ご臨終です」
医師の無情な声が、遺された家族の悲しみを呼び覚ます。
母親は少年に取りすがって泣き、父親はがっくりとうなだれる。
「どうして……どうして……!」
「もういい。もうこれで楽になったんだ」
母親を、父親が慰める。
少年は、全身の激しい痛みと戦った。筋肉は硬化し、動くこともままならなくなった。
そして――彼の全身は、黒く染まっていた。内出血の類ではない。まるで漆を塗ったかのような、純黒。忌まわしい色に、皮膚が冒されていた。
原因不明の病であった。
初出:2016年丙申04月01日