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この作品には 〔ガールズラブ要素〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

はぁ?

作者: 唯優 ゆい





「詩音が好きです。」


「はぁ?」


それが人生初の告白だった。


帰り際に見つけた下駄箱に置かれた手紙に一言書かれた《屋上で待ってます》という文字に期待して、早速向かったら一人の女の子がいた。


そして、まさか…と思っていたら今に至った訳である。


「えっ?あっ…ちょ…女の子だよね?つか、隣のクラスの谷口さんじゃん???????」


「そうだけど、私のこと知ってたの?」


「ま、まぁ…」


隣のクラスの女子に人生初の告白をされた。


え、なにこれ?悪夢?ゲーム?二次元的ななにか?


「えーーーっと。待って待ってとにかくまって?」


「う、うん」


アタシは話に待ったをかけた。


ん?女子だよ?相手女子だよ?


百合?今流行りの百合?


GL?つかレズ?


「分かったぁ〜、罰ゲームかなんかなんだ?」


「え?」


谷口さん普通に可愛いし彼氏いそうだしな。


もてなくて女にはしるとかそーゆーんじゃないだろう。


私はそう判断した。


「違う…けど?」


彼女は可愛らしく小首をかしげる。


ちょ、落ち着こう。


私、おんな


彼女、おんな


あれー?やっぱレズ?


「えー、えーえーっと、れ、れれず?谷口さんってレズだったの?」


「れず?ん?なにそれ?違うってー私はただ詩音ちゃんが好きなだけー」


だよねー。ってアレ?


女♀が女♀を好きなんでしょ?


普通は ♂×♀じゃん?でもって、♂×♂これがホモじゃん?


じゃあ♀×♀ってさ…


レズじゃん!!!!!!!!!


「谷口さんってさー、ちょーっとずれてんの?つか彼氏ふつーに作れるっしょ?あーもしかして、真性レズビアンってやつ?」


「真性…レズビアン?」


「んーそう。なんか病気的なヤツなんでしょ?それ。」


冗談交じりに言ってみる。


貴女の好きは本当の好きじゃないんだよって伝えてみる。


“それ”は滴り落ちた。


不意に“それ”を綺麗だと思ってしまった。


本当ではないと伝えた途端に彼女の目から溢れ出てきた涙を綺麗だと思った。


「…う!!!違うよ!!!私はレズビアンなんかじゃない!!!けど、けど、詩音ちゃんのこと……」


泣き崩れだす彼女を見てなんてか弱いのだろうと思った。


男が女を守りたくなる気持ちを少し理解出来た気がした。



彼女を…詩音ちゃんを一目見れただけで、今日は一日幸せだなーとか生きてて良かっただとか思っていた。


彼女こそが私の世界に彩を与える存在だった。


だからこそ、理解出来なかった。


彼女の口から告げられた真実を受けいれることが出来なかった。


瞳から溢れ出てくるなみだ


うっとおしいよ。もう……


暫く泣き崩れていると、彼女が声をかけてきた。


「あ、えーっと泣かせるつもりはなかったってゆーか。ごめんってゆーか…」


もうわけなさそうな顔をしている詩音ちゃん。


私は彼女に質問した。


「し、詩音は、私のこと気持ち悪いって思うのかな?」


「ん?そりゃまぁ…」


やっぱりそうなんだ。


瞬間、私は全てを悟った。


同性を好きになるということはこの異性愛の世界ではタブーだということを。


「ご、ごめん。まさか泣くとは思わなくて…それほど、アタシに本気でいてくれたんだよね?大丈夫?」


「だ…大丈夫っ」


彼女は心配してくれたけれど、涙や鼻水など溢れ出てくるもの全てで、私の顔面はドロドロだった。


だから、見られたくなかった。


顔を覗き込んでくる彼女に顔を見られまいと私は下を向いた。


「ぜ、全然大丈夫だってば!!!!それより、私こそ好きなんて言ってごめんね?」


「こっちは大丈夫だよ!びっくりしたけど」


詩音ちゃんが言いながら笑ってた。


きゅううっと胸が締め付けられる。


可愛いと私の全てが意識せずとも思ってしまう。


やっぱり、彼女が好きなんだ。


自分の気持ちには抗えないことを痛感した。



「そーゆー優しいとことか大好きだよ。困らせちゃってごめんね?」


「そ、そんな申し訳なさそうな顔しなくていいよ、ただ間違えちゃっただけっしょ?」


「違う、違うよ。」


間違えてなんかないよ。とでも言いたげに谷口さんは真っ直ぐ私の瞳を射抜いてくる。


確かに、同性愛とかレズは気持ち悪いって思ったよ?けどさ…けど…


「ああもう、確かにさ、レズとか気持ち悪いって思ってたけど、…れ……嬉しくない訳無いじゃんか。」


「え?それって?……付き合えたりとか?」


目を輝かせる谷口さん。


「あー、いや、付き合うとかは無理だけど…私フツーに男好きだし?けど…」


「けど?」


気になるよ!とばかりに顔を近づかけてくる彼女。


「アタシに好きって言ってくれてありがとう。こんな私でも好きって言ってくれる人が居たんだって嬉しかった!!!!」


半ば叫ぶように言った。


「私も、私も、貴女を…詩音を好きになれて良かった!!!!」


負けじと彼女も言い返してくる。


参ったな…


恥じらいを隠すために頭をポリポリとかいた。


「詩音っ?」


「ん?」


不意に名前を呼ばれた。


「この気持ちが無くなるまで、貴女を好きでいてもいいですか?」


あーあ。


ほんっとまいったな。


谷口さん、めっちゃ本気じゃん。


けど……


「別にいいけど、はやく新しい恋しなよ?」


「善処…する…」


谷口さんは悲しげな声で、か細い小さな声だったけれど、しっかりとしたその決意はちゃんと私の胸の奥まで届いた。


あーあ。レズとかホモとか今まで馬鹿にしてきたけれど、人を好きになる気持ちってあんなに……真っ直ぐなんだ。


「谷口さん。」


「はい。」


「風、気持ちいいね。」


「うん、そうだね。」


先程まであんなにも喜怒哀楽を示していたのに、お互いに笑い合う二人の女子高生達。


暖かい風が彼女達を包み込んで流れそして、去って行く。


春はもう近いのかもしれない。




ーendー


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