似非傍観者は答える、夢は夢だと。
長い。
8000文字超えました。
――あは。面白い感じで事が進む。見ているだけってのも加害者? っていう言葉があるけど、私はちゃんとお手伝いしたわよ? まぁ、聞いた事をそのまま教えただけの、伝言係みたいなものだったけど。正直言って、この立ち位置が中立かな? と思ったからこそ、選んだわけで。
週初めの朝礼のため、体育館に集められた全校生徒を横から見つめる。舞台上には、未だに校長先生の長くて固い、しかし、何時かの時には為になるだろう話が繰り広げられている。
話を聞いていない生徒の中――後ろの方では、誰々が居ない、だとか、アイツ逃げやがった? なんて言葉がちらほら聞こえている。また、前の方では男子生徒が多数で一人の少女を囲み、ようこ大丈夫? ようこちゃん疲れてない? とかいう甘く優しく心配する声が聞こえてきた。
馬鹿馬鹿しい、と思って、呆れたようにその逆ハーレムを作っている女を見やる。その女はだらしなくにやけている顔で、色の妖しい瞳で男どもを見据えて、何ともまぁ嬉しそうにしていた。
――本当にキモチワルイ。なんであんな欲望の目で見つめられて、あの馬鹿男達は喜ぶのかねぇ……? 本物の陽子、私の心友とは大違い過ぎて、笑いが止まらなくなりそう。笑い袋を決壊しないようにしないと。
周りに気付かれないように、鼻で小さく笑う。本当に馬鹿達だ、と。
“私”は己にある今の愛情がすべてだと思っていて、周りから守られていることが真実だと思っている、よく解らない物から与えられたらしい……気味が悪い眼を使っている女を睨みつけるように見た。
うっぷ。危ない危ない。あの女をまじまじと見ていると吐き気がするのよね。何て言うのかしら……においのキツイ香水を全身に振りかけられた状態、みたいな臭いを連れてくるのよね。本当に臭いの。
まぁ、そんな臭いモノに蓋をするために、私の陽子の名誉の為にも、独断で行動を起こしてみたのだけれど。気づいたら、二人ほど協力者が釣れちゃったわけで★
しかも、一人は女子で、一人は女装男子。私達のように『転生者』ではない子供達。そんな彼女達は、私の事を何故かオカルト好きでイケメン好き……だなんて思っているみたいで、失礼しちゃうわ、なんてね。
もちろん、イケメンは見るのは好きよ? 関わるのは断固お断りさせていただくけれど。鑑賞する事と干渉する事は、読み方は同じだけれど目的は違うもの。
特に、その協力者になってくれた女装男子には、『ゲーム』上では全く見覚えが無かったのだけれど、二年次にやって来た転入生だったから……きっと『世界』が選んだ、『ヒロイン』代わりの人物じゃないかしら? って思ったの。だから、色々と手助けしてあげたけど、ふふ、正解だったみたいで幸いだわ。
それに、もう一人の女子は『ゲーム』上の『ヒロインの親友』ちゃんで。でも、その子はあの女をキモチワルイと言っていたし、女装男子ちゃんと仲良しさんみたいだから。幾ら、あの女が懸命に、友人になろう、と誘っても無駄だと思ったの。そう考えたら、綻びが見えてきた気がして、このまま叩き込めば……? って思ったわ。
だからこそ、彼らにアレを渡したのよ。
私が知っている……あの女がいつも、あの時間、あの場所に居て、嘘のような怪しい独り言を言っている、なんて情報を握らせて。隠しカメラに関しては、私が前以って設置してあげてたから……此処一ヶ月弱のを。
少なくとも、あの子たちを嵌めた嘘★虐めに関する決定的な証拠が見つかれば、そしてそれを証明されれば、あの馬鹿女の栄華(笑)も終わるんじゃないかってね。
――この後に訪れるであろう彼女らにとっての悲劇、私たちにとっての喜劇が待っているとは知らないで、周りの男子に持て囃されながら、先生たちに注意も受けず、その眼の謎の力を使って、意気揚々としているのを見ると、本当に馬鹿残念でならないわ。あーあ。今日、陽子に会いに行こうかしら?
* * *
こんなにあの女を馬鹿にしている私には、あの女と同じような大きな秘密がある。
それは、私が今いる『世界』とは違う異世界から転生してきたという事。そして、今いる『世界』は、私の知っている『前世』では、ある乙女ゲームになっていたという事。
そのゲームは、舞台となる学園に通うことになった主人公が、何かしらの生き甲斐を見つける→それに伴う相手役と仲良くなる→恋愛or友情ルート突入! という、乙女ゲームだった。
よくある? 逆ハーレムエンドは無く。また、恋愛ルートによるバッドエンドでも、結局のところ主人公が学園で得た生き甲斐で、最終的には自分で自分の幸せを得る! という物だったから、どのエンドでも非常に後味も宜しく楽しめるゲームだったと思う。
そうね、言ってしまえば……あれは乙女ゲーム主体、というよりも、主人公育成ゲームが主体だったのかもしれないわ。だって私も、すごく、主人公ちゃんを育てて一喜一憂してたもの。
そんな『ヒロイン』の名前は、桐栄陽子。
柔らかそうな茶色の髪に、最初こそは何もかもを諦めている様な茶色の瞳が、生き甲斐を見つける事でキラキラと輝く様が良い。決して太っているわけではないし、モデル体型っていうわけでもない平均体型で、女の子特有の柔肌は白め、高い所に手が届かないという小動物の様な可愛らしい身長。見つける生き甲斐によって性格も変わるが、困った人を助けるという根本的な部分は変わらない、心優しい少女。
それが、私の知っている本物の桐栄陽子だ。
間違っても、あの女の様な、『原作主人公』とは全く真逆な容姿・身長・性格を持つ人間を、桐栄陽子と偽らせておくのは、私としても心友の陽子に申し訳が立たない。
そう。
私はすでに出会っていたのよ。この世界における、本当の桐栄陽子に。
私と彼女が出会ったのは、私が高校一年生で、彼女が小学二年生の時。ちょうど冬休みだったのかしら、桐栄夫妻――陽子の叔父夫婦――主催のパーティがあり。当時、『今世』の両親が少なからず名門であった為、その子供であった私を紹介するとかで、両親に連れられたあの日。
『原作』とは違い、素晴らしく力を上げていった桐栄氏の会社。その会社の繁栄を願っての祝パーティでの出会い。
『ゲーム』では、生き甲斐を見つけるまでは無表情だった主人公と違い、こちらの桐栄陽子は、喜怒哀楽を全面に出して、愛らしい子供の様だったのを覚えている。ふんわりカールされた茶色の髪に、真ん丸な茶色の瞳。寒い所から温かい所に来たからか、頬を林檎のように赤く染めて、桐栄氏を見上げていた彼女。
そこで私が最初に思った(確信した)のは、あぁ、この子は自分と同じ転生者だ、という事。だからこそ、面白いと思って、彼女に近づいた。そして、よくある逆ハーレム狙いの女ならば、今の内に粛清しておくべきかな、なんて物騒な事を考えて。今思えば、なんて浅はかな考えだったのだろうか、と。きっと記憶を持って生まれ変わった事に、周りから『前世』の記憶を駆使して、ずっと、何かと持て囃されていたことに、いつしか驕っていたのだろうけど。
――おにいたん、よーこはね。しあわせになるのよ! わたちたちは、いっちょに、しあわせになるの!
しかし、彼女は不思議だった。
幼いながらに強い意志。それでいて、利己的なヒロイン至上主義者だったのよ。自分達――桐栄陽子の幸せの為になる存在は、誰であろうと何であろうと、使える物は使い、使えない物は切り捨てる……そんなイメージをその場では感じ取ったわ。
彼女は、自分と主人公の二人が合わさって、桐栄陽子に成ったのだ、と言っていた。その回答にちんぷんかんぷんだった私が、ならば『ゲーム上のヒーロー達』について、どうか? と尋ねると、彼女は、
――『ゲーム』でのよーこは、じぶんのしあわせが、だいいちで、れんあいは、にのつぎだったでちょ? だから、わたちたちは、まず、しあわせになるの。
……舌足らずで非常に聞き取りにくかったが、要は、何も恋愛をするのが『ゲーム上の舞台』である、聖心学園のヒーロー達でなくても良い、まずは桐栄陽子が幸せになった後でも良いじゃないか。という話だった。
その話を聞いた私は、彼女の事を多少なりとも逆ハー狙いのクソ雌豚だと推測していたが、これは態度を改めなくてはいけないな、だなんて考えて、当時は本当に上から目線だったの。これは流石に本人にも言えないので、私にとっても黒歴史になっているのは、本当に秘密。
そして、そのまま会話を続けている(周りから温かい目で見られていた気がする……)と、彼女曰く、学校は亡くなった両親の母校である、清廉学園に通おうと思っているとか言われてね?
私はこの時、一種の戦慄を覚えたの。……初めて知ったのよ。そんな、桐栄陽子の両親の母校なんて。これも、この世界が『ゲーム』ではないという事を、表している一部なのだろう、ってやっと悟ったの。
本当に遅い悟りだったけれど、そこで初めて、私は自分の立ち位置を考えたわ。
『ゲーム』の世界には存在しない自分、『ゲーム』では起きなかった桐栄氏の発展、『ゲーム』には名前も設定も無かった清廉学園。
じゃあ、自分は一体どうするべきなのか? と。
そんな私の心情を知ってか、桐栄陽子は舌足らずな言葉で、私に、お兄さんは聖心学園に行きますか? と尋ねて来た。何となくだけど、彼女の質問の意図が分かったの。
だから、決意したわ。どうせなら、私もこの『世界』を彼女のように楽しもう! って。
たとえば、『前世』では養護教諭だったのだから、これを活かせばいいんじゃないかしら? ……なんて考えてワクワクしたわ。
たとえ、かつての『前世』が“女”で、『今世』が“男”であろうとも、どうとでもなりそうだわ、とも考えたわ。
誰よりもズルをしているかもしれないけれど、私の目標はその時に決まったわ。
もう一度、同じような勉強をするのは億劫かもしれないけれど、それでも私の『前世』を活かしてみたい。日本で一番の、国立大の養護教員養成課程がある所へ行く。絶対に聖心に行くんなら、とびきりの学歴じゃないと他の家柄の良い女子に取られちゃうわ! ってね。
そうして、念願の聖心学園の採用試験に合格! とでもなれば、確かにあの学園に身を置き、ゲーム通りに進まなかった未来が見えるでしょうしね。そう、久しぶりに腕が鳴るような感覚を、努力を惜しまない気持ちを持てたのも、彼女のお蔭だったのかもしれないわ。
彼女は、不思議そうに首を傾げるだけでしょうけどね。ふふふ。
――ありがとう。その提案に賛成させてもらうわ。
――こちらこしょ、ありがとーございます。ふふ。たのしめりゅと、いいですね!
こうして、私と桐栄陽子との契約が結ばれた。
私は『今世』の父と母に頼み、中学生時代に憧れた保健の先生みたいに成りたい、なんて適当に嘯いて――とはいえ、熱心にこれでもかと言うくらいに熱弁はしたけれど――、望みの国立大に進んだ。
自分以外にも努力を惜しまないライバル達が居たけれど、私も絶対に負けなかった。
時折、陽子、彼女から来る手紙やメールに励まされながら、実力を惜しむことなく発揮した。そうしなければ、成績上位なんて、すぐに誰かによって落とされてしまったのだから……当然よね。
そして、彼女が清廉学園に入る頃には、私の聖心学園の採用試験も合格した。長かったわ……本当に、大変だった。一度したことがあるとは言え、女性と男性では、そもそも相手が受ける気持ちが違うものね……うん、女性養護教諭なら女子も男子もお母さんお姉さんって安心できるものね。男性養護教諭は、女の子達ドキドキしているみたいだったもの……まぁ、オネェ要素を出したら、そんなことは無かったのだけれど。
それにしても、本当に聖心学園の採用率があんなに厳しいなんて……!! さすがに『ゲーム』によくある設定だけど、舞台となる学園が名門校だとねぇ。まぁ、知っていたけれど、『家柄を重視して且つ成績優秀者を採用』、だなんて。私もそれなりの家柄って事だけだったら、本当にダメだったかもしれないわね。良かったわ、日本一の大学を出て、その上で成績優秀者になって。……勉強は前よりも大変だったけど、私以外にも多くの女子養護教諭候補が多かったから、本当にダメかと……こんなに躓きそうになるとは思わなかったわよ!? とびきりの学歴に感謝だわ……オネェというハンデもあった事だし。
ご都合主義の『ゲーム』の世界にしては、厳しすぎないかしら? と思っちゃったわ……。
だって、清廉の方の採用試験は家柄云々関係なかったのに、姉妹校のこちらは……なんて。違い過ぎて可笑しい気もするわ。受かったのだから、文句は言わないけれど。まぁ、そもそも、私も彼女と契約してなかったら、割と清廉に行きたかったからかもね……。
――こんなことになるんだったら、ねぇ?
そう。
桐栄陽子が居ない代わりに、よく解らない存在が居たのよ。容姿も全く違うし、性格も偽っているようで、自分を隠しているその様が、まるで道化師のように見えたわ。
でも、あの女は、自分を桐栄陽子と名乗った。
私は陽子を知っている分、まさか同じ転生者!? なんて、ちょっと疑問に思って。全校生徒の名前を覚えるため、なんて真剣さを込めて先生方に頼んで、クラス名簿を見せてもらったけれど、確かに『桐栄陽子』という名前があったのよね。……ただの同姓同名ってやつかしら? って最初こそは思ったけれど、今は、ねぇ……。
――なにが、「カミサマにお願いして、トリップしてきたアタシは特別! 此処はアタシの世界なのね!」……なのかしらね。
私がこのセリフを、あの偽物女の口から聞いたのは、私自身が学園に慣れてきた頃の事。帰宅途中で、裏庭から声が漏れていたものだから、よくある先輩による後輩虐めでも起きているのでは? と疑ってその場所へ近づいた時。
そこで私が見たのは、艶やかな黒髪を振り乱しで、狂喜に騒ぐに女の子だった。
怪しい色を帯びた変な瞳を何もない空中に向けて、興奮した様子でぺちゃくちゃ喋っていたその女の言葉は、今でも覚えているわ。あぁ、こういうのが現実を観れない夢見る女の子であり、もっと悪く言えば、逆ハーレム狙いのクソ雌豚なのね……、って思ったわ。
流石に、上から目線になってしまった事は反省するけれど。私も成長してないわね、って事でね。でも、それ以上に驚愕して、現実を見ていなくて、同時にすっごくがっかりしたわ。あの女よりも前に陽子に逢ってしまっていたからかもね……。
――同じ名前なら、私の陽子が良いわ、だなんて思ったりして。ただの惚気かしらね? ふふ。
そんな場面を見て以来、あの女は、次々と『ゲーム上のイベント』を熟していったわ。良く見かけたもの。見覚えのある『特定の男子生徒』と一緒に居るところを。それも、一人に絞るんじゃなくて、『ゲーム上の攻略対象』全員に、よ?
『ゲーム』には無かった逆ハーレムエンドでも、勝手に起そうとしているのかしら? なんて、かえって感心しちゃったわ。
でも、それだけじゃなかった。不思議なの事に、入学してきた一年の時、あの女は何故か、いつも屋上に居たのよね。授業中も、テスト期間中も。休み時間や放課後以外。私の保健室から見えたのよ、あの女の姿が。
あまりにも気になったから、あの女が居た筈の当時のクラス担任に聞いたら、桐栄陽子? あぁ、彼女ならそこに居ますよ。ほら、あそこで、読書をしている……、なんて言って指した場所には、何もなかったの。誰も居なかったのよね。
でも、クラス担任は言葉を続けて、彼女は成績優秀で、今回のテストも一位だったんですよ、って嬉しそうに言うのよ? ドッキリかと思ったけれど、あまりにも嬉しそうだったから、私の方が可笑しいんじゃないかって、思ってしまうくらいだったわ。
嘘みたいな話だけど、本当にテスト期間中、学校にあの女が居なくても、全く誰も気にしないのよ? たとえば、私が学園に着く前に、あの女がゲームセンターで遊んでいたのを発見したのだけれど……その後、あの女が学校に居る様子は無かったのに。でも、確かに桐栄陽子という名前のテスト用紙があって、その解答は満点で……張り出された順位の一位に、桐栄陽子という名前があって。
一番衝撃だったのは、クラス担任が職員室で体を回し、まるで、目の前にいるであろう桐栄陽子に向き合って話しかけている姿が、独り言を大きな声で喋っているように見えた事。すごく、怖かったわ。だって、私以外、誰もが当たり前のように、クラス担任の目の前辺りを優しい目で見つめているんだもの。そこに誰も居ないなんて、誰一人として疑っていないのよ。私以外。
恐怖よね。よく解らない不気味さが募って、ますます、あの女に不信感を抱いたわ。だから、調べたの。オカルトにも手を出して……あぁ、コレのせいでオカルト好きと思われているのかしら? とにかく、調べて調べて、……結局、何もでなかった。
けれど、代わりに協力者は得られたわ。世界が選んだであろう、『ヒロイン』役と『その友人』役さん……なんて言ったら失礼よね。生きている人間だし、何よりとてもいい子たちだもの。ちょっと難癖があるようだけどね。
独りで恐怖していた、この一年が過ぎてしまったけれど。
それと同時に安堵したわ。あぁ、私が可笑しいんじゃないんだって。
だって、協力者の女の子は、一年次に同じクラスだったらしいけれど……桐栄陽子という名のあの女の事を、全く見覚えが無い初対面のはずだ、って言ったのよ?
――本当に、どうなっているのかしら? あの女が言う、カミサマのせい? とにかく、早く終わってほしいものだわ。あの一年間は、それはもう、まるで、見たくもない悪夢を淡々と見せられているようだったもの。
* * *
逆ハーレムを構成している馬鹿女を観つつ、過去を思い返していた。その半分をあの女で占めてしまったのは、なんだか不満だわ。どうせなら、私の女除けに・陽子の男除けにペアリングを付けている過去とか、思い返して占めればよかったのかも……? なんて、誰も見ていないからこそ、できるにやけ顔よね。
それに比べて、あの馬鹿女は周りの馬鹿共に見られまくっているのに、にやけてだらしない顔を隠そうともしていないのよね。本当、なんであそこの馬鹿共は気付かないのかしら? あの女には何かの膜? オーラ? フィルター? なんかが張り付いて、馬鹿共には照れくさそうに笑っている顔でも見えてるのかしらねぇ?
もう、あの女の存在が不可思議すぎて、この先何が起きても可笑しくない領域にまで達してしまったわよ……私の思考が。
――あら。そろそろかしら? ちゃんとセッティングした? 隠し映像と、隠しボイスをスクリーンに流せるように★ ちゃんと映れていないと、あの女だって言う事実にはならないもの。……でも、何故かしら、とてつもなく、不気味な気配を感じるのよね。とうとう本格的にオカルトに染まってしまったのかしら? なんて、そんなこと無いわね。
そんなことを考えていたら、校長先生以外の先生方の話も終わったらしく、主任の先生が何か他に話したい事はありますか? と、周りに聞いていた。居ないようですね、と主任の先生が言うのを遮るかのように、体育館の舞台上のスクリーンが勝手に下りてきたわ。
ふふふ。勝手に下りて来たんじゃなくって、あの子たちが下ろしたんでしょうけどね。でも、突然な事もあって、インパクト大になった事は間違いないわ。
だって、ほら、あの女もその馬鹿共も、不思議そうにしてスクリーンを見ているもの。
――さぁ、準備は宜しくて? お馬鹿ちゃん? ……なんて言葉、私の趣味ではないけれどね。
本物と偽物。
果たして、本物はどんな子で、偽物はどんな子なんでしょうね?




