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この作品には 〔ボーイズラブ要素〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

壊れそうな程にシリーズ

危ういほどに

作者: まこちにゃん

捺芽視点。出してみました。

死ぬとか多いので、苦手な人は逃げて下さい!

彼は、酷く虚ろな目をしていた。

綺麗な顔をしているのに、もったいないな。そう感じていた。

あの日、白線の外にふらりと出た彼を見て、咄嗟に助けた。

彼は、危うい。心が壊れかけている。だから、オレはその心を守ってやりたかった。

次の日、目が覚めた彼は、何故助けたのかとオレに問った。何故死なせてくれなかったのかと。


彼が言った言葉に、咄嗟に返した台詞は、『オレが君を愛するから、死なないで』だった。とにかく、何でもいい、彼には生きて欲しかったんだ。


契約は1ヶ月。その間に、彼の心を奪う。それができれば、彼は死なない。

そして、1ヶ月の共同生活が始まった。



オレは、徐々にではあるが、彼の本質をわかってきた。

羽原巽……巽くんは、凄く、寂しがりやなんだろう。

朝起きて、隣にオレがいると、少し嬉しそうな顔をする。

そして、同時にとても脆い子だ。危うい雰囲気は変わらずついて回っている。

既に、彼と出会ってから一週間が経つが、いまだに少し切なげな目をして、空を見ていることがある。本人は、きっと自覚して居ないのだろうが。



オレは、ネット投資で稼いで生きている。それなりに蓄えもあった。だから、積極的に彼を外に連れ出した。そして、彼が少しでも楽しそうにしていると、オレも嬉しかった。


ある日、オレの冗談を皮切りに、彼はオレにキスを仕掛けてきた。

脳が痺れる、とは、この感触の事なのかと、オレはなぜか感心していた。

好きな人がいたはずだと彼に尋ねると、彼は不器用に笑って、もういいんだ、と言った。

妙に切ない気持ちになり、オレは彼を抱き締めた。



1ヶ月は、着々と過ぎていく。ああ、願うならこのまま、終わらなければいい。彼との居心地のいい時間は、そろそろ終わりを告げようとしているのに。

オレは、何もしていない。心など、奪える筈がない。だってはじめから、オレは何もしてないんだから。

でも流石に、このまま死なれたくはなかった。オレは、彼の事が好きだ。それは、本当だ。ただ、オレの傍にいても、彼は幸せにはなれないのだろう。

いっそ、明るく送り出してやろうか。

そんなことを真面目に考えていた矢先だった。



彼は言った。最近死ぬのが怖いのだと。

オレは言った。なら、やめればいいと。

何も行動を起こさなかったオレが、彼を引き留めたことで、彼は死ぬのを恐れ始めていた。それは、オレにとって幸運だった。

なんとなく、彼の自殺願望には事情があることも察していた。それでいても、敢えてオレは、彼の傷を抉る。

「死にたくないから、オレを好きになる?」

等と言って。

「もう二度と、人を好きになんてならない」

ほら、これで、失恋完了だ。危ういのはオレの方だ。

ならばと最後に伝えた言葉は、彼を容赦なく突き刺したのだろう。

「君の為なら死んだって構わないのに」

こんな、安っぽいドラマのような台詞に、返ってきたのは、叫び声だった。



概要を説明するならば、彼の過去のはなしだ。

親を火災で失い、恋人を失い、親戚の力も借りる事は許されない。

もう愛さないと決めても、次は大丈夫かも知れない。そう期待して。目の前で泣きじゃくる青年は、一体何度裏切られてきたのだろう。

彼はきっと、疲れてしまっただけだ。人生の迷路に迷い、一人きりで。

彼さえ良いなら、オレは彼を支えてやりたい。一人ではないと、言ってやりたい。


彼は言う。アンタも死ぬんだ。俺が、愛してしまったから……。

それを聞いたとき、何かに突き動かされた。巽の名を呼び、頭に手を乗せて。

何度も、謝った。気付けなくてごめん、辛かったよな、苦しかったよな。

それでも、オレは君が好きだ。そう言うと、でも、アンタが死ぬのは嫌だ、と返された。

本当に好きな人と居れるなら、死ぬのも怖くない、と言うと、なら、アンタが死んだら俺も死ぬ、とまで言われた。

ここまで愛してくれるなら、心中も悪くない、と冗談混じりに告げる。


「そう簡単には死なないから、心配しなくて良い」

そう伝えると、初めて見る程の笑顔で、頷いた。



後で、巽から、過去に売りをしたことがあるのだ、と聞かされた。

オレには、恋人の過去をとやかく言う趣味は無い、と言ったら、ありがとう、とはにかんだ。

それが可愛くて、オレには、破壊力が強すぎた。惚れた弱みとはこの事か。

悔し紛れに額にキスを落としながら、思う存分巽を弄り倒した。

小さく喘ぐ巽に煽られ、何度も、同じ場所を攻める。巽は耳が弱いのだと、初めて知った。

耳元で囁くだけで、身体を強張らせる。

「可愛いな、巽」

またそう呟き、何度目かわからない反応を楽しんでいる。こういう所、実は自分はサディストだったようだ。


眠っている巽の横顔を見つめ、オレは頬を緩めた。

綺麗な顔立ちだとは思っていたが、寝顔は天使のようだ。

いろいろあったが、今、巽はオレと居てくれるのだ。

死んでも離さないから、覚悟しろよ?そう呟くと、巽は微かにほほえんだ。

今後も、もしかしたらこの話やるかもなー。

そしたら、どうぞ二人を見守ってやって下さい。




自殺者が減ることを願います……。

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