7.ある日の誤算 後半
窓から外の様子を見る、もっとも部屋の角度からは彼らの姿は見えないのだが、あれほど騒ぎになっていたのだ。その野次馬たちが解散していった所をみると帰っていったのだろう――
「はぁ……」
ここに来て漸く気を張るのを止め先ほど起こった出来事を振り返る。
何者かは分からないが、乗ってきた馬車や供といい上流の者に違いない。そんな者がこんな貧民街に何の用があってきた?けど確かに悪意はあのアホそうな男にあったとも思えない。結局思いつく理由が見つからずむしゃくしゃしている所に短いノック音が3度聞こえた。
「鍵なら開いてるよ」と声をかけるとやがて室内に入ってきた2人の子供。一人はそばかすを幼い顔に残す赤毛の少年で怒った様子でこちらに詰め寄ってきた。
「姉さんっ!!表に居たあいつら何もんだよ!?何であんな上流の奴がここに来んだよっ、何でもめてんだよ、何したんだよ!!」次々とまくし立てる弟分に頭を抑えながら
「あーもーうるさいっ。私だって同じこと聞きたいわっ!揉めたのはたまたまで追っぱらおうとしただけだっての。」
「本当に?―じゃああの人たちは本当に何しに来たんだろう…?」不安そうに分厚い眼鏡を握るもう一人の少年がそういうとデイシーは結局はわかんないと言った。
「ただ―結局は様子を見るしかないってこと。」今の状況が吉か凶かも出ていないのだ。早急な考えは良くないと彼らを言い聞かせて部屋から追い出した。
青白い月明かりが窓を通し室内に差し込んでいる。その脇に肩を預けながら彼女はさっきから非常に後悔をしていた。彼らにああ言った中には、自分に対してもそう思いたかったのかもしれない。
一抹の不安があったから。
「あの供の男――」私が普通じゃないのに気づいてた?あの時、とっさに反応してしまったのはまずかった。
その数時間後。帰宅したリコが状況を知ると皆に謝っていた。「ごめんっっ……その人ってたぶん私の依頼人かも…」「はぁぁ??」
だったらムキになって追っぱらおうとしなくてよかったんじゃない…てかそもそもスルーしてればこんな悩むことなかったんじゃ…ああ、もうどうしようかな。目の前のリコをとりあえず腹立ったからと頭をグリグリいじって勘弁してあげた。まぁこの子も悪くないんだけどさ。あのバカ二人組、今度あったら覚えてろよと自身の復讐リストに刻んだのだった。