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その6



ペンタ・ブルー国の地下、広大な地下室で

正十二面体が5体、数倍大きな1体の十二面体を取り囲んでいた。

彼らはどれも、その針にはキャップ、その核にはレンズを装着している。


そこから遠く離れた場所にいる五角形が

針を一本、真上に突き出し、合図を送った。


5体の正十二面体が、巨大な十二面体に一斉に襲い掛かる。

バチッ!という強烈な音が、立て続けに5回響いた。

5体の正十二面体のレンズは、一つ残らずヒビ割れていた。

一方、巨大な十二面体のレンズは、ヒビのないきれいなままだった。


遠くから様子を見ていた五角形が声を発した。


五角形:「いやはや、素晴らしい性能じゃ」

    「後はこやつを量産できれば、他国の兵士など恐れるに足らんわい」


五角形:「さて、試験終了じゃ。十二面体の諸君は帰っていいぞい」


5体の十二面体は、壊れたレンズとキャップを外し

ぞろぞろと外に出て行った。


遠くで機械をいじっていた別の五角形が

先ほどまでしゃべっていた五角形に声をかけた。


別の五角形:「教授、このデータについて見て頂けないでしょうか?」


五角形:「ふむ、どれどれ」


巨大な十二面体は、少しの間だけ放っておかれた。


巨大十二面体の目に、配線が何本か出た機械が映る。

配線の先には、吸盤がついている。


この機械をみると、心がざわめく。

教授の命令に従うこと、そして敵と戦うことしか頭になかった

巨大十二面体にとって、実に奇妙な感覚だった。


機械に近づき、スイッチやレバーを

教授の動作をそっくり真似ていじる。

機械の画面がついた。

画面には、いくつかの項目が映っていた。


材料Aの思考パターン

材料Bの思考パターン

~中略~

思考パターンの削除



教授と呼ばれた五角形が事態に気づいた。


教授:「今すぐやめ・・・」


遅かった。

巨大十二面体は、吸盤を体に貼り付け

材料A~Qの思考パターンを受信していた。

恐ろしい量の記憶の波が押し寄せ

巨大十二面体は一時的に思考不能に陥った。


教授が駆けつけ、「思考パターンの削除」項目を実行しようと

針を伸ばした。

突然、機械が横に吹っ飛び、壁に激突した。

巨大十二面体が機械に体当たりをくらわせたのだ。


教授:「貴様、この裏切り者め!わしの研究機材を台無しにしおって!」

   「そこを動くでないぞ?お前はわしの命令には逆らえんはずじゃ」


巨大十二面体:「そうかな?」


巨大十二面体は、教授の命令を無視し

出口に一直線に向かった。


巨大十二面体:(俺は取り戻した。何もかも)

       (俺の識別番号は、311-111、レイン、その他大勢)

       (十角形は、五角形が5年の歳月を経て成長したもので

        更に4年で12体まで培養された)

       (一方、三角形は、全て拉致により集められた)

       (記憶を消され、実験材料にされたのは腹立たしいが

        おかげで強力な体を手に入れたので、まあよしとしよう)


巨大十二面体・311-111は、出口に何度も体当たりして

この巨大な身体が通り抜けられるだけの穴をこじ開けようとしていた。


一方、教授は、コントローラーのようなものを持ち出してきた。


教授:「このスイッチを押せば、奴の20の頂点を補足する機械が

    一斉に起爆し、奴も木っ端微塵じゃ」

   「残念じゃが、致し方あるまい。奴の制御はもはや不可能じゃ」


教授がコントローラーのスイッチを押す。

機械が爆破され、地下室の出口は爆煙に包まれた。


311-111は既に、ペンタ・ブルーの地上に出ていた。

機械部分が爆発する刹那、311-111は二十面体に変化し

機械部分を切り離して誘爆を回避した。

その小さい体のまま、出口を通って地上に出たのだ。


ペンタ・ブルー全土で、警報が鳴り響く。

311-111は頂点の失われた巨大十二面体、すなわち

切頂十二面体に再び変化すると

全速力で地下通路の入り口に向かった。


次々と現れる十二面体たちを軽くねじ伏せながら

たった10分ほどで地下通路の入り口についた。


針を地下通路の蓋の隙間に引っ掛け、無理やり引っぺがすと

二十面体に変化し、地下通路に潜った。


トリ・レッドの地下に向けて、迷路のような地下通路をひたすら進んでいくと

見慣れた三角形と四角形に出会った。


三角形:「な、なんでこんなところに二十面体が」


四角形:「ここは俺がなんとか時間を稼ぐ!おめえだけでも逃げろ!

     2体ともやられるよりはマシだ!」


三角形:「そんな!兄貴を置いて逃げられるかよ!」


311-111:「あー、悪い悪い。俺だよ」


311-111はジャンク組所属の五角形に変化した。


三角形:「え?五角形の兄貴?」


続いて七角形に変化する。


四角形:「七角形の旦那!一体どういうこった?」


2体に事情を説明する。



四角形:「随分とまあ派手にやらかしたもんだなあ」


三角形:「旦那がペンタ・ブルーの秘密兵器と融合するなんて

     これでもう俺たちジャンク組に怖いものなどないや!」


311-111:「ああ。だがとりあえず今は、トリ・レッドにある自宅に戻って

     休憩したいよ」


三角形:「いや、それはちょっとやめたほうがいい」


311-111:「ん?」


三角形:「トリ・レッドは今、隣国のテトラ・グリーンに戦争を仕掛けてるのさ」


311-111:「え?」


三角形:「トリ・レッドの秘密兵器の、巨大な戦闘マシンが完成して

     そいつでテトラ・グリーンとの国境にある壁をぶち破ったのさ」

    「それで、両国民は全員徴兵され、いつ駆り出されてもおかしくない状況だ」


311-111:「そんなことが・・・今すぐ止めなくては」


     「お前たちにお願いしたいんだが

     ジャンク組の六角形20名、四角形30名ほど、至急集めてくれないか?」


四角形:「何をするおつもりで?」


311-111:「両国王を止めるための戦力増強さ」

     「たとえ切頂十二面体でも、彼らに敵うとは思えないのでね」


ジャンク組の3名は三手に別れ、彼らの仲間をかき集めに回った。



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