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その2



しばらく通路を進むと、開けた場所に出た。

底辺が三角形のピラミッド(すなわち三角錐)状の建造物が

規則的に並んでいる。

その奥には、ひとつだけ他より数倍大きなピラミッドが

どっしりと構えていた。

ピラミッドはどれも狭い底辺のわりに高さがあるため、

建物群はまるで巨大な剣山のようだ。


案内ロボ:「いかがですか?トリ・レッドの街並みは」

311-111 :「あの奥の大きな建物は?」

案内ロボ:「王宮です。国王と数十名の優秀な兵士が居住しています。

     一般国民の立ち入りは原則禁止されています」


細長い建物群に入り、進んでいく。

案内ロボは、一つの建物の前で止まった。

案内ロボ:「311-111様の住居はこちらになります」

311-111 :「案内ご苦労様」

案内ロボは軽くお辞儀をする(上のほうの三角錐を傾ける)と、

今来た道を戻って行った。


建物の三角形の入り口をくぐる。

大きな部屋はがらんとしていて、脇に二階へ続くスロープがあるだけだ。

スロープにそって浮かび、二階へと登る。


二階には、壁に大きな画面といくつかの窓、そして天井には照明があった。

さて、これから何をしようか。

画面の脇にあるいくつかのボタンを押し、情報を引き出す。

画面が明るくなった。


「北86西51地点で、死亡破片が発見されました。

破片の情報から、死亡したのは309-444さんで、

現場に争った形跡があることから

警察は309-444さんが

何者かに殺害されたものとして捜査を進めています」


「自分の身は自分で守ろう!針道の勧め」

「昨今、凶悪事件が多発しています。

 ぼーっとしていると、おもわぬ不意打ちでやられてしまうかも?」

「自分の針を華麗に使いこなし、脅威から身を守りませんか?」

「お近くの針道道場は北20西20です。ぜひともご参加ください」


311-111:「ふむ・・・」

自身の針を全て伸ばしてみる。

赤い三角形の角につき1本ずつ、計3本の針を持っている。

もし、三角錐型だと角は4つあるので4本、

八面体型だと6本ということになる。


三角型は、トリ・レッドでは最も非力な形態なので

早めに針術を身につけるに越したことはない。


というわけで、針道道場に通うことにした。


311-111 :「北20・・・西20・・・っと」


道場は高さの低いピラミッドがたくさん積み重なり、

クリスマスツリーの高さを縮めたような外観だ。

早速道場に入る。

中では、大勢の三角形が整列し

掛け声に合わせて、針を振り回していた。

赤い三角錐型がこちらに気づき、近づいてきた。


三角錐:「ようこそ!早速だが、位置に着きたまえ」


三角形の列の後ろに誘導される。


掛け声に合わせて、見よう見まねで針を動かす。

20分後・・・

八面体型の師匠が合図を出した。

参加者全員に、針の先端につけるキャップと

核を保護するための丸いレンズが配られた。


この星の住民の弱点は、体の中心部にある核である。

核が少しでも傷つくだけで、爆発を起こしてしまうのだ。

なので、針道の試合では

キャップとレンズの着用が義務付けられている。


師匠:「これから針道の練習試合を始める」

   「各自壁に寄れ!」


安全装置を取り付けた三角形たちは部屋の脇により、

中央のスペースを空けた。

床を見ると、三角形の広い枠が描かれている。


師匠:「名前を呼ばれたものは、枠内に入るように」


参加者のうち二名が呼ばれ、部屋の中央で向かい合った。


師匠:「はじめ!」


二体の三角形は、各頂点の針を全て突き出し

勢いよく針と針を交えた。その衝撃で互いの体が細かく振動する。


311-111は試合のルールが分からず、近くの参加者に聞いてみた。


三角形:「相手の核に攻撃を当てれば勝ち。見てれば分かるよ」


戦っている二体は、確かにお互いの核を狙って

攻撃を繰り出しているように見える。

片方が突きを繰り出すと、もう片方はヒラリとかわし

そのまま回転して、相手の核に斬撃を叩きつけた。


師匠:「そこまで!」


戦っていた二体は針を引っ込め、再び向き合った。

少しした後、壁に集まっている参加者の群れの中に戻っていった。

負けたほうの三角形は、いささか落ち込んでいるように見える。


師匠:「次!」

   「310-321、311-111、前に出たまえ」


いきなり出番か。

311-111は枠内に入り、相手と対峙した。

相手も自分と同じ、薄っぺらの三角形型だ。


師匠:「はじめ!」


相手の針が、こちらの核をなで斬りにしようと迫る。

際どいところでこちらも針を出し、相手の針を弾く。

同じような攻防を何度か繰り返しているうちに

相手の動きが読めるようになってきた。


311-111 :(この体勢なら、次の攻撃はこうだ!)


ワンテンポ早く相手の攻撃をかわし、相手の隙を生み出す。


311-111 :(もらった!)


こちらの針を相手の核に叩き込もうとするその時、

相手の核から白く強力な光が放たれ、視界が真っ白になった。


師匠:「そこまで!」


気がつくと、対戦相手は既に枠の外に出ていた。

何がなんだかわからないまま、311-111も枠の外に戻る。


先ほどルール説明をしてくれた三角形を見つけ、

あの妙な光について尋ねる。


三角形:「やあ、初めての試合にしてはいい線いってたね」

    「まあ、初心者ならビームを知らなくても仕方ないか」

    「針道では、針での攻撃の他、ビーム攻撃も認められているんだ」

    「自らの力を核に集中させ、発射したい方向に狙いをつける。」


    「これには一発につき体内エネルギーの半分を用いるから、

     連射は禁物だね」


なるほど。使いどころによっては便利な攻撃手段となりそうだ。


試合は次々と行われ

三角錐型二体の試合が巡ってきた。


師匠:「はじめ!」


今まで見てきた試合を、倍速で早送りしているような感覚に襲われた。

両者の全ての動きが速い。

三角形型と三角錐型のスペック差がこれほどとは、予想外だ。


二体の三角錐型のうち、一体の核が光った。

白くまっすぐなビームがもう一体を襲う。

もう一体は体を傾け、ビームを赤い三角面で受けた。

ビームは赤色に染まり、ビームを撃った方に跳ね返った。

赤いビームは同じように跳ね返され、そしてまた跳ね返り

ビームのラリーとなった。


片方が、これで終わり、とばかりにビームをスマッシュした。

もう片方はビームを針の先で受け止め、そのまま突きを放った。

針先に当たったビームは反射することなく、吸収され

突きは相手の核のど真ん中に入った。

勝負あった。


その後、格上同士の試合が十数回行われ

試合は全て消化された。


師匠:「本日はここまでとする。

    キャップとレンズは私の前に置いて行くように。」


各々、キャップとレンズを返却し、ぞろぞろと出口に向かう。

ほとんどの三角形が道場を後にし、

師匠と数名が後片付けのために残った。


師匠:「えーと、たしか311-111だったか?早く帰りなさい」


周囲の様子を観察しているうちに取り残されてしまったようだ。

急いで道具を返却し、出口に向かう。

ドン!

出ようとした瞬間、出口に何者かが立ち塞がり、

こちらが弾き飛ばされてしまった。

その者の輪郭は六角形で、見る角度によっては十角形にも見える。

三角形の面を、

これまで見てきた住人の誰よりも多く持っている。


師匠と残っていた数名に緊張が走った。


師匠:「貴方は・・・まさか」


???:「近くに用があったのでな、ついでに見物に来たのだが」

    「もう終わってしまったようだな」


事情が飲み込めない311-111は、近くの者に小声で尋ねた。


311-111 「誰なんだい?」


三角錐:「正二十面体。我々トリ・レッド国民が行き着く最終形態と言われている」

    「そして、二十面体のそのほとんどは、国王護衛の任務に就く最上級兵士だ」


二十面体:「軽く手合わせをしたいのだが、誰か相手をしてくれないか?」


といいつつも彼は、八面体である師匠以外は眼中にないようだ。


師匠:「喜んでお相手致します。キャップとレンズをご着用ください」


二十面体:「そんなものは不要だ。安全装置に頼っていては

      実戦で役立たない針道になる」


師匠:「しかし・・・」


二十面体:「トリ・レッド国王護衛隊である俺の言うことが聞けないのか?」


師匠:「で、では、そうさせて頂きます」



両者向かい合う。しばしの沈黙。

師匠代理の三角錐が開始の合図を出す。


師匠が6本の針をフルに活用し、二十面体に猛攻をしかける。

一方、二十面体は、

たった2本の針で、攻撃を全て受け流している。

三角錐同士の試合よりも更に動きが速いので、目(核)で追うのがやっとだ。


二十面体:「その程度か。なるほど」


二十面体が一言呟いたと同時に、姿を消した。

師匠が場外に弾き飛ばされ、壁に激突した。


三角形型の目では捉えられないほどの速さで攻撃したのだ。


三角錐:「そこまで!」


その場にいた数名が、心配そうに師匠の周りに集まる。


師匠:「大丈夫だ。針が何本か折れただけだ」


師匠の6本の針のうち、2本がポッキリ逝っていた。


二十面体:「安心しろ。核は外してある」

     「国王護衛隊が罪もない国民を殺すことは

      あってはならんからな」


311-111は3本の針を伸ばし、飛び掛ろうとしたが

すぐそばにいた三角錐に止められた。


三角錐:「やめておけ。お前の手に負える相手じゃない」


二十面体:「邪魔したな。治療費は出しておいてやるよ」


突然の訪問者は去って行った。


311-111はムシャクシャしながら

帰り道を辿っていた。

一刻も早く針道の道を極めて、

あの二十面体を超える強さを身につけたいものだ。

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