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その13



地上から神々の神殿までひとっ飛びする刹那

奇妙なものが見えた。

空中に浮かぶ中規模の島。大きな灰色の建物がいくつか並び

何本もの煙突から煙が立ち上っている。


今はそんなものに気をとられている場合ではない。

浮遊する島を遥か下方に置き去りにして神殿を目指す。


間もなく神殿に到着した。

神殿は立方体状で、色は灰色。

側面の壁がなく、代わりに無数の立派な円柱が並んで配置されている。


311-111は神殿の周りを軽く一周し、入り口を探したが

4つの側面のどこも、柱の間に均一に隙間があるだけで

ここが入り口、と分かるような特別な隙間は無かった。


一番近くにあった柱と柱の隙間に飛び込み、神殿内部に進入する。


神殿の内側には更に、間を通り抜けられないほど密集した

細い円柱に囲まれている部屋らしきものが5ヶ所あった。

格柱は天井にまでは達していないため

天井と柱の間を通って格部屋に入れそうだ。

とりあえず真ん中の最も大きい部屋に入ってみる。


その部屋の中央には正方形のテーブルと

それを囲む4つの丸椅子が置いてあるだけで

神々の姿はどこにも無かった。


大きな部屋を出て、他の4つの部屋を見回るも

どの部屋も空っぽだった。


ひとまず神殿の外に出る。

彼らが神殿にいないのなら、広大なディスクのどこかに

いるということになる。


ふと、神殿に来る途中に見た光景を思い出す。

円型の間で語り継がれる神話に、あの島は登場しない。

よって先ほど目にするまで島の存在すら知らなかった。


まずはあの島から探索することにしよう。

神殿まで来たコースを戻り、宙に浮かぶ島に降り立つ。


規則的に並ぶ灰色の建物はどれも、自らの出す煙で

薄汚れていた。

建物に窓はなく、閉じたシャッターから侵入するしかなさそうだ。


311-111は一本の針を伸ばし、シャッターの縁を針で力強くなぞった。

甲高い金属音と共に激しい火花が散った後、切り取られたシャッターは

内側にゆっくりと倒れた。


建物の内部に入ると警報が鳴り響いた。

壁や天井から多数の銃口が顔を出し、一斉射撃してきた。

しかし下級神の力を手にした311-111とって

銃弾はあまりにも遅すぎた。

銃弾の雨の中をものともせず、建物の更に奥を目指し突き進む。


広い部屋に出た。部屋には見覚えのあるマシンが6機ほど待機していた。

かつてトリ・レッドの軍勢として大暴れした、クモ型の巨大マシンだ。

いや、よく見ると、あのときのマシンとは細部が異なる。

マシンはそれぞれ

五角形、六角形、七角形、八角形、九角形、十角形を基礎とした胴体を持ち

足も各々の胴体の形に対応した本数だけ生えている。


全てのマシンがこちらに気づき、戦闘態勢に入った。

八本足のマシンが足を不気味に動かしながら、こちらに迫ってきた。

その太い足の一本を大きく振り上げ

円型の311-111を下敷きにした。


と思いきや、その足が物凄い速度で持ち上がり、根元からボキッと折れた。

311-111はその場に無傷で浮いていた。


311-111:「お前達に聞こう。ここは一体どういう所だ?」


6体のクモ型マシンの頭部が上下に割れ、一斉にビームを放ってきた。

311-111は少しだけ体を横にスライドさせた。

ビームは311-111の核のすぐ横、透明な部分を突き抜けて

建物の壁を焦がした。


311-111:「所詮はただの機械、聞く機能を持っていないようだな」


311-111はふっと消えた。

十本足のマシンの胴体が真上に吹っ飛んだ。

そのまま天井を突き破り、空の彼方へ飛んでいった。


元八本足のマシンの足の一本が持ち上がり、その足先を中心として

回転しはじめた。

回転は急激に速度を増し、広い室内で大旋風が起きた。

旋風の中からボロボロのマシンがすっ飛んできた。

マシンは五本足のマシンに衝突し、2機とも大破した。


九本足マシンの全ての足の付け根から、急に火花が噴出した。

胴体から全ての足が切り離され

支えを失った胴体は床に落ちて動かなくなった。


そして七本足のマシンは、胴体から火花を噴出していた。

硬い装甲は切り傷でボロボロになり、やがて火花は黒煙に変わった。

機能停止した七本足は、その場にくずおれた。


311-111が最後の1体に攻撃を加えようとしたとき

部屋の入り口から奇妙な形をした真っ黒な立体が入ってきた。


それは上下方向から見ると円、正面や背後から見ると正方形、

真横から見ると二等辺三角形に見える。


円柱を三角形状に切り落としたような立体だ。


全部で5つある面の中央には

それぞれ小さいレンズのようなものが着いている。


1機残った6本足のマシンは前方の足を折りたたんで

奇妙な立体にお辞儀のようなポーズをとった。


奇妙な立体:「タカガ1匹ノ侵入者ニ全員デ挑ンデコノザマカ。

       使エナイ手下ドモダ」


311-111はその立体を知っていた。


311-111:「見つけたぞ、残り2体のうちの1体」


奇妙な立体:「我ガメカ軍団ノ根城へワザワザ出向イテクルトハ、ゴ苦労ナコッタ」


       円柱ト円錐ハオ前ニ倒サレテシマッタガ

       俺ハソウ簡単ニハイカンゾ。俺ノ体ヲヨク見テミロ」


この奇妙な形以外におかしな点があるのだろうか。

だがそこで、311-111は驚くべき事実に気づいてしまった。


311-111:「核が、ない」


奇妙な立体:「ソウダ。俺ハ『機械』ノチカラヲ持ツ神。

       神業ノ改造技術ヲ持ッテ、全テノ立体ノ弱点デアル

       核ヲ自己ノ体カラ取リ除イタノダ」


核がない上に神の性能を持つ立体。

どんな攻撃も決定打を与えられないではないか。


奇妙な立体:「オ前ノ絶望ニ、更ニ恐怖ヲ上乗セシテヤロウ」


奇妙な立体は、6本足のマシンの頭上に移動した。

奇妙な立体の縁から3本の細い配線が這い出て

6本足のマシンの胴体部に潜り込み、奇妙な立体とマシンを接続した。


神と一体化したマシンの、6つの目が光った。

マシンは先ほどとは比較にならないほど高速で311-111に接近し

足を叩きつけてきた。

311-111は危ういところで攻撃を避けた。

マシンの足が叩きつけられた床は大きく歪み

島全体が衝撃で震えた。


マシンの性能が、311-111に匹敵する程度にまで上昇したようだ。


奇妙な立体:「チ、逃シタカ。次ハ外サンゾ」


マシンはビームを乱射した。

311-111は天井の穴から外に退避せざるをえなかった。


下の建物から爆発音がした。

建物の側面に大穴が開いている。


奇妙な立体:「後ロダ」


マシンの重い一撃を受け、311-111は叩き落された。

今の攻撃で体に1ヶ所ヒビが入ったようだ。


ディスクの地面に衝突する前になんとか停止して

衝突を免れた。


飛ばされてきた方角を見ると、目前までマシンが迫っていた。

今攻撃を決めなければ、こちらが壊される。


311-111は縁から無数の針を出し、マシンに突撃した。

マシンとちっぽけな円型がすれ違った。


311-111が伸ばした針は全て折れ、空中に散らばった。


一方、マシンは奇妙な立体と分離していた。

マシンを繋いでいた3本の配線が全て斬られたのだ。

マシンは地面に激突してぐちゃぐちゃに潰れた。


奇妙な立体:「ナカナカヤルナ。ダガソノ体デハモウ持ツマイ」

      「今度コソ終ワリニシテヤル」


奇妙な立体は2つの角から2本の針を伸ばした。


311-111:「どうかな?」

     「こちらはお前の弱点を見切った」


奇妙な立体:「ハッタリダ。俺ニ弱点ナドナイ」


311-111は力を振り絞って再び奇妙な立体に突撃した。


奇妙な立体:「無駄ダ」


奇妙な立体の持つ2本の針をかいくぐって

311-111はレンズ状の点めがけて思い切り針を突き出した。


針はレンズをぶち抜き、奇妙な立体の中心部まで深く突き刺さった。


奇妙な立体:「ナゼ、分カッタ」


311-111:「お前が他の神々と違い、黒い装甲を持つのは」


奇妙な立体を覆っていた装甲がゆっくりと剥がれ落ちた。

透明な体と、その中央に銀色の核が埋まっているのが

はっきりと確認できた。


311-111:「体内に核があることを悟られないようにするためではないかとね」


311-111は針を引っ込め、奇妙な立体から離れる。


奇妙な立体:「破滅ノ混沌ニ抗ウナド無駄ナコト、カ」


311-111:「何のことだ?」


問いに答えることなく、奇妙な立体はまばゆい光と共に

粉々に砕け散った。


後残すは1体。

神殿は空だった。空中の島も奇妙な立体の領地だったので

別の神が潜んでいるとは考えにくい。

次はどこを探すべきか。


???:「その必要はない」


上のほうから声がした。

見上げると、最後の神、球がゆっくりと降りてくる様が核に映った。



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