その12
円型以外のいかなる立体も立ち入ることが許されない、世界の端。
その一角を、多種多様な立体たちが目指し、向かっていた。
新たに円型の身体を得た311-111は
その立体たちの間を飛び回り、パトロールしていた。
彼らを神々に倒される訳にはいかない。
世界の端に住む円型達とこの立体たちを融合させて
円型達の行動制限を取り払い
神々に対抗できる勢力を増やすためだ。
立体の一団が世界の端に到着した。
地面が唐突に終わり、崖となって下方向に伸びている。
この崖を飛び降りれば、円型の領域に進入したことになる。
慎重を期して、まず311-111が崖を飛び降りる。
景色が90°傾き、崖の側面が地面に変わる。
それ以外は、何も変化がない。
この一帯は相変わらす静まり返り、領域を進入された円型が
警告しに出現する様子もない。
崖の上に取り残された立体のうち1体が声を掛けてきた。
四角錐:「どうです?円型たちとお話はまとまったのでしょうか?」
311-111:「それが、誰もいないんだ。1体も見当たらない」
四角錐:「それでは我々はどうすれば」
311-111:「少しの間待機していてくれ。何か分かるかもしれない」
この姿が原因かと思い、少しの間だけ三角形に変化してみたが
やはり誰も来ない。
辺りを注意深く観察していると、遥か頭上に何か光るものが見えた。
目を凝らすと、多数の円型が浮遊しているのを確認できた。
なぜあんな高所にいるのだろう?
円型が群れている100メートル程の上空まで一瞬で上昇する。
斜方切頂二十・十二面体の形態時でさえ
地上から5.4メートルの上昇が限度だったので
随分と便利な体になったものだ。
円型の1体に話かける。
311-111:「皆、なぜこんな所に?」
円型A:「神々の長、球が我々円の生息区域を
既存の位置から100メートル上の位置に変更したのだ」
円型B:「我ら自体が法則の一種であるため、法則を超える行為は出来ぬ」
神々は先手を打っていたわけだ。
他の立体たちがこの高さまで昇る術はない。
これで、立体たちを円型に取り込む計画は水の泡となった。
凶報を伝えに、立体たちの所に戻る。
そこにいる立体の誰もが落胆した。
側錐五角柱:「私達は抵抗も出来ず
ただなぶり殺されるままだと言うのか」
ミラーの立体:「ディスクは終わりだぁ」
311-111:「はるばるここまで出向いてもらったが
皆、済まない」
そのとき、通信機を所持していた薄っぺらな立体が
話しかけてきた。
正五角台塔:「大変です!たった今、ディスク第五区長が
何者かに破壊されたとの連絡がありました!」
壁形態の区長を容易に撃破できる者は、神々しか考えられない。
ディスク第五区は、旧テトラ・グリーン、すなわち第二区の
ちょうど裏側に位置だ。
311-111:「これから第五区に向かう。
皆は急いでディスクの建造物群、あるいは地下まで退避してくれ」
そう言い残し、ディスク第五区の庁舎まで瞬時に移動する。
庁舎は巨大な刃物で切られたかのように
縦に真っ二つにされていた。
区長の部屋には、壁形態を補強する機械部分の破片と
区長自身のものと思われる破片が散らばっていた。
???:「よくぞいらっしゃった。私の思惑通りに」
声の方角には、311-111と同程度の大きさを持つ
透明な円錐が浮かんでいた。
円錐の底面に核があり、その面をこちらに向けている。
311-111:「第五区長を殺したのはお前か」
円錐:「いかにも。私達がその気になれば
混沌と化した者達を全滅させるのに、1秒かからない」
「なぜそうしないか、お分かりか?」
「貴方をおびき出すエサにするためだ。
下級神の身でありながら神々を裏切った貴方をね」
311-111:「そんなくだらないことのために第五区長を。断じて許せん!」
円錐:「許せないのはこちらも同じこと。さあ、表に出なさい。
ここは戦いの舞台として、あまりにお粗末だ」
大破した庁舎を出て、広い通りに移動する。
円錐の姿を見た立体たちが、慌てて逃げ出す。
以前倒した円柱の振る舞いが、ディスク全土に伝わっているからだ。
円錐:「今ここに、愚かな裏切り者に神罰を下そう」
円錐は急発進して311-111に近づき、頂点にある1本の針で切りつけてきた。
危ないところで針を回避する。
獲物を逃した針は、代わりに311-111の背後にある建物をひと撫でした。
大きな建物が斜めに切断され、轟音を立てて倒壊した。
311-111:「!!」
円錐:「私は『針』の力を持つ神。私の針は全てを貫き、全てを切り裂く」
311-111は自身の円周上から、針を1本突き出した。
円錐:「私に針で勝てるとお思いか?」
「でも選択肢はそれしかないでしょうな」
「円型でビームを放てば、その力に耐え切れず
体が木っ端微塵に吹き飛ぶのだから」
そう。円型は神々の中で、唯一ビームを使いこなせないのだ。
最弱のポイント型のビームでさえ
針から吸収するだけでも命取りとなる。
311-111:「ビームについてはその通りだ。
だが針の方は試してみなきゃ分かるまい」
円錐:「笑止」
針で円錐を切りつけるが、円錐の針で簡単に受け止められた。
311-111の針は切断され、地に落ちた。
311-111:「まだまだ!」
針をもう一度出して切りつける。
円型は、その円周上なら針を無数に出せるのだ。
311-111の攻撃は激しさを増し、自身の針が次々と折れ、落下していく。
針が落下を開始する前に次の針を出して攻撃するため
円錐と311-111の間に折れた針がどんどん溜まり始めた。
円錐:(むむ、視界が)
鋭い針の一撃が、円錐の核を襲った。
円錐は辛うじてかわし、針は核の脇の面にぶち当たった。
円錐は空中に散らばる針をなぎ払い、視界を確保した後に言った。
円錐:「どうやら私は貴方の力を見くびっていたようだ」
「今までは半分の力しか出していなかったが
次は全力でお相手いたそう」
円錐の体が変化し始めた。
円錐の底面からもう一つ、逆さまの円錐が現れ
底面にあった核は上の円錐の側面に移動していた。
円錐:「双円錐。私の第二にして最強の姿だ」
双円錐となった円錐は、上と下の頂点から針を1本ずつ出し
二本の針で攻撃してきた。
311-111はこれまでの戦法で攻撃を仕掛けたが
通用しなかった。
自身の針が防がれて折られ、また針を出そうとする間に
双円錐の反対側の針が襲ってくるのだ。
円錐の攻撃速度が、単純に二倍になったに等しい。
一旦反撃をやめ、攻撃回避に専念する。
第五区の建物群の間を縦横無尽に飛びながら、反撃の機会を窺う。
建物が次から次へと斬り捨てられ、そのたびに大地が震える。
311-111:(そうか、これだ)
311-111はひときわ大きな建物の裏に回りこんだ。
双円錐が建物を一刀両断した時には、311-111の姿は無かった。
双円錐:「見失ってしまったか」
「さあどこからでもいらっしゃい。どの方角から襲ってこようと
私の二針流の餌食にして差し上げよう」
その時だった。
双円錐は奇妙な力に引っ張られ、地面に叩きつけられた。
下の円錐が地面に深々と刺さり、一瞬身動きできなくなった。
その一瞬の隙を突き、311-111が遥か遠方から一瞬で飛んできた。
双円錐:「しまった!」
地面から体を引き抜いて防御姿勢を取ろうとするも時すでに遅し
双円錐の核には1本の浅い引っ掻き傷がついていた。
双円錐:「そうか・・・私は引っ張られたのではなく」
311-111:「地面の方がお前にぶつかったのさ。
下級神の力を持つ俺が、diskを丸ごとぶん投げてな」
双円錐:「不覚っ」
双円錐の色が銀色に濁り、体は針のように細くって
地面に転がった。
決着がついた今、円錐の言葉が気にかかる。
”混沌と化した者達を全滅させるのに、1秒かからない”
下級神も含めた神々は、未だ力の底が見えない。
悠長に構えていては、その分犠牲者を増やすだけだ。
決意を固め、311-111は神々の住む神殿向かって飛び立った。




