表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PHANTOM GARDEN  作者: shinohihou
7/17

いきなり・・・・・・(泣)

サブタイトルに~~をつけるのをやめました(笑)


 目を覚ます。

 左腰が重い。

 あ、刀を腰にさしているからか。

 前を見ると昨日の夜見た町の光景が広がっていた。

「おーい、少年」

「あ、こんばんは。水野さん」

 すぐ横に水野さんがいたのでとりあえず、夜恒例のあいさつをした。

「うん、こんばんは」

 周りを見ると人が数人いた。

 1、2、3、4、5。

 僕らを合わせて7人いた。

「意外にいないものなんだな~」

「PGは広いからいろいろなところに人がいるよ。昨日、君が来たところはほとんどの初心者が最初につくところだから、人が少ないってことは最近初心者が少ないってことなのかな……。まあ、私たちにそんなに関係あることじゃないけどね」

「そうだな」

 気のせいかな、なにか今違和感を感じたような。

 ま、いっか。

「じゃあ、毎日7時間しかないわけだしキリキリいくよ」

「はい!」

 元気よく返事する。

「一応予定では神岡君の予想通り1週間。つまり7日×7時間で基礎修行終わりが目標」

 そういいつつ、水野さんは歩き出した。

 あわてて僕もついていく。

「これからどこに?」

「ちょっとね」

 そういいつつ、昨日入ってきた場所とは違う場所から町をでていく。

 最初は見通しのよい草原だった。

しばらく歩くと、その草原もなくなってきて石がごろごろころがっている平野になった。

むしろ荒地といえる。

「なんか、向こうにひといる気が……」

「あ~あれね。あれが今回の目的。なにかわかる?」

「服装は中国の昔の服、かな」

「そのとおり。そして、妖怪といえば?」

「まさか、キョン……シー?」

「せいかーい! あれ一匹倒してきて?」

「え?」

「た・お・し・て・き・て?」

「はい! 行ってきます!」

 怖かったのですぐに出発。

 人でなくキョンシーとわかっているのなら手加減はいらない。

 今はこちらに背を向けている。

 チャンスだ! 背中から斬ってやる!

 走りながら日本刀を抜く。

 片手で持とうとしたら重くてもてなかった。

 よって両手で持って振りかぶる。

 ズサァ

 全力で振り下ろす。

 脳天から思いっきり斬ろうとした。

 

 しかし、その瞬間キョンシーは体を少し左に動かし、刀を左肩で受けた。

 軽く食い込んでいる。

 すぐに反撃してくると考え、距離を開けようとした。

「刀が、抜けない」

 その一瞬でキョンシーは後ろまわし蹴りを食らわせてきた。

「ぐはっ」

 わき腹にくらい、そのまま数メートル吹き飛ばされ地面をすべった。

 あれ、キョンシーってこんな動き俊敏だったっけ?

 というかまわし蹴りできるの?

 受身をとることもできなかったので痛みがひどく、呼吸もしずらい。

 どうする?

 そう思い刀をみると肩にささったままだった。

 やばいな、あの刀を取らないかぎり反撃はできないし、素手で戦えるほど技術もパワーもない。

 キョンシーは走ることなく普通に歩いてこっち来る。

 とりあえず立ち、距離を保ちながらゆっくり横に移動する。

 キョンシーもそれにあわせて体の向きを変える……と、思いきやさっきいた場所にまだ向かっている。

 

 あれ?こっちにこない。

 なぜだ?

考えろ。

なぜさっき斬ろうとしたとき横に動いた?

今横に動いたときの違いは何だ?

考えろ、考えるんだ!

こっちに体の向きを変えないということは目が見えていないのか?

それと刀をかわしたことを考えるんだ。

……あの瞬間、僕はズサァと音を立てていた。

横に移動したときは音を立てていなかった。

つまりキョンシーは目が見えていなくて音で判断しているんじゃないか?

ただ、根拠がない状態で突っ込んで失敗したら洒落にならないなぁ。

そう思い、足元にあった石をひろう。

 そして自分のいるところの反対側、キョンシーの奥にある大きめの岩にめがけて投げた。

 もし予想通りなら岩にあたった音で逆向きに行くはずだ。

「コンッ」

 すこし高めの音が鳴る。

 すると、キョンシーは体の向きを変え、岩の方に歩き出す。

 よし!

 心の中でガッツポーズを決める。

 だが、戦いが終わっていないことを思い出し、すぐに気を引き締める。

 さあ、どうする?

 刀を引き抜いた後、今の僕に胴体を切り抜く力はない。

 ということは頭を刺すか首を切断するかしかない。

 どちらが確実かを考えると、頭を刺すだけでは死なない可能性がある。

 よって首を切るしかないか。

 まあまず刀を抜くこと優先だな。

 今、キョンシーは岩のところで立ち止まっている。

 距離は15メートルくらいだろうか。

 ゆっくり、音を立てないように、けれど確実に一歩ずつ踏み出していく。

 あと5メートル。

 4、3、2、1メートル。

 刀を掴む、と同時に右足の裏をキョンシーの背中にあてて勢いよく抜く。

 一瞬で抜くことができた。

「あっ」

 が、そうそう上手くいくこともなく、抜いた勢いでバランスを崩し、こけておもいっきりしりもちをついてしまった。

 もちろん、音をたてて。

キョンシーがこちらを向き、こちらにむかって、こぶしを振り上げる。

あ、終わったなー。

 その瞬間、目の前を高速で、いや光のような速さ、光速でひとがあらわれ、右ストレート一撃でキョンシーの首を木っ端微塵にしているのが見えた。

 誰かと思ったら、水野さんだった。

 ……すげー

 本当に一瞬のことだったため、それだけしかわからなかった。

 そこで緊張の糸が切れただろう。

視界が真っ暗になり、あっという間に意識を失った。


       * * *


「お~い」

 声が聞こえる。

「お~いってば」

 女性の声。最近よく聞くなぁ。

「起きろって」

 ガツン

 と効果音がなりそうな、アニメでよくあるように頭を殴られ、僕は起きた。

「あれ? ここどこ?」

「PHANTOM GARDEN」

 む、無駄に発音がいい。

「あ、キョンシー!」

「思い出した? 最後あのまま助けなかったら確実に死んでたよ」

「ありがとうございます」

「いやいや、死んでもらったら、今日の修行時間なくなっちゃうから。そんだけだよ」

 優しいのか、そうじゃないのか……。

 いや、照れてるだけだ!

 そう考えよう!

「で、どれくらい僕は寝てた?」

「1時間くらいかな。あと5時間半くらい」

 うわ~、結構休んでたな。

「とりあえず、さっきの戦いは最初にしてはすっごい上出来だった。あれは修行じゃなくて腕をみるだけだったんだけどビックリした。キョンシーと戦わせた目的はまず戦いのセンスをみるためだったんだ。才能あると思うよ」

 そんな、照れてしまいますよ。

「観察眼だけ、ね。まさかはじめてで、キョンシーの性質をみやぶるとはおもってなかった」

 それだけ、か……。それも偶然だしな~。

 なんか残念。そう上手くいかないか。

「まあ偶然が重なっただけです」

「偶然もないとPGでは生きていけないからあるなら、あったほうがいいよ」

「そういうもの、か」

「うん。けれど問題点は予想通り体力とか純粋に腕力だね。そう思ったでしょ?」

「そうだね。全力だったのにキョンシーの肩を落とすことできなかったし」

「それに、まだ刀の性質がわかっていないんだろうね」

「性質?」

「多分現実で調べればすぐわかると思うよ」

「じゃあ、調べておきます」

「うん。……さっそく、修行大丈夫?」

「はい、もちろん!」

 修行とはいったいどんなことをするんだろう?

 いきなり水野さんと組み手やるとか……

 ムリだな。絶対死ぬ。

 さっきの強さだって半端なかった……

 そうやって一人修行について考えていたら、水野さんが歩き出したのでついていく。

 まわりは岩場。

 そのなかでも高く、太い(そこまで厚くはない)岩の前に立ち止まった。

 岩というより、ひとつの塔のようだった。

「さっき歩いてたときにみつけてね」

「は、はぁ……」

「これ、斬ってみようか?」

ん?

 イマ、ナントオッシャイマシタ?

 だって高いよ? 太いよ? そして硬そうな、いや硬い岩だよ?

 無理でしょ、普通。

「お~い、顔が怖いよ?」

「だって、普通無理でしょ! キョンシーでさえ斬れなかったのに!」

「うん、だから修行なんだよ」

「うっ」

 確かに。これは修行なんだ。

 無理無理言っててもしょうがないか。

 僕はもう考えるのをやめていた。

「じゃあ私はそこらへんいるから。アドバイスとかはするつもりないし、私、放任主義だから自分で考えてね」

「はい!」

「今日はとりあえず5時間ちょっとかな。がんばって真っ二つにしてね」

 ウインクをして歩いていってしまった。

 なんか目の周りに星が見えた気が……。

 美しくあり、可愛くあり、そしてさっきのようにかっこよくもある。

 僕もあんなふうになれるように努力しないとな。

 あ、もちろん美しくなったり可愛くなったりはしませんよ?

 なったらただの変態だし。


       * * *


「ふぅ~~~」

 水野さんの姿が見えなくなったところで僕は長いため息をついた。

 そして岩に向き直る。

 刀を抜く。

 軽く振って横から岩にあてると、

キィン

 と、甲高い音が鳴った。

 やはり、予想していたように硬いな。

 次は全力で振ってみる。

 キィィン

「いって~~」

 刀が岩におもいっきりぶつかるだけなのでその衝撃はもちろん僕の体に来る。

 そしてそれは力をいれて振った分だけもどってくる。

 しかし、痛いから斬らなかったらいつまでも斬れないわけだし。

「よし」

 自分の頬を叩いて気合を入れる。

 少し腰をおろし、振りかぶって斜めに全力で振り下ろす。

 キィィン

 もう一度。

 キィィン

 もう一回!

 キィィン

 痛い。すこし休憩。

「う~ん、助走でもつけてみるか」

 少し離れる。

「はぁぁぁーーー!」

 キィィィン!

「もう、限界……。ちょっと休憩」

 4、5回きったら休憩いれないと体が持たない……。

 2、3分休んでもう一度刀をにぎる。

 キィン

 キィン

 カン

 

 その後もずっと続けた。


 3時間が経過してもまったくといっていいほど傷がついていない。

 4時間が経過してついに腕が上がらなくなった。

 刀って重いんだよね。

 全身汗だくになり、そのまま地面に転がった。

「こっちの空もちゃんと青いんだな~」

 どうでもいいことを考え、空に手を伸ばそうとする。

「うぉう」

 腕があがらないのに、無理にあげようとして、変な声がでてしまった。

 腕をあげるのをやめ、もう一度空をみる。

 昨日最初に思ったことは太陽が3つあることだった。

 やっぱり、眩しいな。

 

 自分で思うのもなんだけど、よくこんなに努力できるな。1日目だけど。

 それだけ願いが強いんだろうか?

 やつらを同じ目にあわせる。

 本当にそれが願いなんだろうか。

 そもそも、神はこの世界、PHANTOM GARDENをつくり、願いを叶えて何をしたいんだろうか。

 疑問が生まれるだけで答えは生まれない。

 まあ、いつか神にあったときに聞いてみるか。

 だいたい20分くらい空を見上げてもう一度刀を手にした。

 今日のタイムリミットはあと30分くらいかな。

 何かつかめるといいかな。

 そう思い、また無心に刀をふりはじめた。


 タイムリミット間際になり、水野さんが帰ってきた。

「おつかれ~、斬れた?」

「無理です」

「ま、予想通りだし大丈夫だよ。けど何かつかめたりはしたんじゃない?」

「いや~、お恥ずかしながらまったく」

 そう、まったくつかめなかった。

「そう。じゃあ、私が最初に言ったこと思い出してね。現実でも考えることはできるから」

「はい」

「じゃあ、お昼また屋上でね。わたし先帰ってるから」

 やった! 昼一緒に食べれるぞ! あんな美人の人と!

 サイコー!!!!!

「おつかれさまでした」

 水野さんは去っていった。

 約20分後、タイムリミットになり、強制的にDROP OUTした。

 去り行く意識の中で、まじで疲れた、けど明日も楽しみだ! と多少ポジティブに考えていた。


       * * *



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ