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PHANTOM GARDEN  作者: shinohihou
6/17

~つかの間の幸せ~

ピピピピピピーーーーーガチャ

 朝7時のアラームがなる。

 

 ……あれ、PHANTOM GARDENって、夢?それとも現実だっけ?

 寝起き直後から昨日の夢?について考える。

「あ、そうか。メールを確認すればわかるか……」

 携帯を開き、慣れた手つきでメールフォルダを開く。

 すると現実であったことを証明するかのように神を見つけろ!メールがあった。

「はぁ~~~~~~~~~~」

と、長いため息をつく。

 同時に少しずつやる気も出ていた。

 なんてったって神をみつければ願いが叶えられるし。

 自分が絶望に打ちひしがれていたから、幸運にも神に選ばれた。

 これはすごいことなのか、そうでないのか、全くわからない。

 が、内心では面白いことが始まることに期待していた。

「あ、OFS……だっけ?コピーしておかないと」

 まずPCにメールを転送し、自分の持っているさまざまなアカウントに転送しておいた。

「とりあえず、一安心かな」

 そう安堵した瞬間におなかが減ってきた。

 まだ朝食をとっていないなぁ。

「ちゃんと自炊するか」


       * * *


 今日から通常授業である。

そのため、クラスにはいると、空気が重かった。

まあ、そうだよね。授業があって嬉しい人なんかいないよね……。

例え先生でも。

なのになんでこんなに授業頑張るんですか、先生(泣)。


       * * *


キーンコーンカーンコーン

「昼だー!」

クラスの男子が嬉しそうに叫んだ。

「昼はどうする?」

優がすぐにこっちにきて話しかけてきた。

弁当はないし、学食はこの前食べたしなぁ。

「購買行くか」

「だな」

学食の横に購買があるので、人が多い。

頑張って人混みを掻き分けお目当てのやきそばパンとメロンパンを買う。

「好きだな……そのパン」

「いやいや、メロンパンってすばらしいよ」

「まったくその通りだよな」

…………あれ?なんか聞き覚えのある声がする。

……振り向く。

そこには黒髪ロングストレート、黒の制服がとっても似合う綺麗でかわいい女生徒が立っていた。

どこかで見た。絶対にどこかで見たはずだ。

けど、思い出せない……

そこに立っている彼女は最初は純粋な笑顔だったがだんだん裏のある笑みに変わっていた。

やばい、やばいやばいやばい。

怒ってる!わかんない!

「えーっと、本当にわからない? 昨日図書館で」

「あー!あの時の!」

「そして一緒に一夜を過ごしたよね」

「待て待て、待つんだ!」

楽しそう表情の彼女。

不審な目で見る友人。

焦る自分。

一夜といえば思い出されるのがPHANTOM GARDENでの出来事。

そして黒髪ロングストレートといえば……

「水野さん?」

「もう! 遅いよ、気づくのが!」

 後は友人にどうフォローするのか、考えよう。

 ありのままを話すわけにはいかないし。

 そうだ!

「いや~、昨日いっしょにネットで麻雀やってさ。軽く徹夜したわけよ。それで一夜過ごしたって話。」

「……そうかそうか。うん。頑張れ!」

 解けたのかな、誤解。

 いや、絶対に解けてない気がする。

「じゃあ、ごゆっくり」

 そういいながら優は去っていった。

 やっぱり解けていなかったらしい。

 そして、なんてこと言ってくれとるんじゃ、おんどりゃー!

「う~ん、せっかく時間くれたんだし、お昼屋上で食べよっか? 聞きたいこともあるでしょ?」

「そう……だな」

「というか、気づくの遅すぎだよ! 私は昨日PGの中であったときすぐわかったのに! 結構ひどいことしたの自覚してね?」

「ホント、すいませんでした……」

「じゃあ、飲み物はそっちのおごりでいいね?」

「……え?」

「い い ね ?」

 冷たい笑みがそこにはあった。

 女って、コ ワ イ(泣)


       * * *


 校舎が広いだけあって屋上も広い。そのため、屋上にいる人数は多いが全然そんなふうに感じない。

 また、……カップルも多い。

 まったく、嫌になってくる。そんなにイチャイチャするなよ……。

 ……待てよ。

 自分たちの周りにも誰もいない。

 ということはカップルに見えてるんじゃないの? もしかして。

 ………………無いな。

 だってこんなきれいな人と僕みたいな平凡な人がつりあうはず無いからな。

 そんなことをボーっと考えていると、

「早くすわりなよ」

 知らない間に水野さんはベンチに座っていて、その隣をぽんぽんと叩いていた。

「し、失礼します」

「そんなにかしこまらなくても大丈夫だよ」

 そういわれても、緊張してしまいますよ。

 PGでは違う緊張があったから話せたけど。

「さて、何か質問ある?」

「単刀直入に聞いてくるな。まあ、ありすぎるのでその時々で質問するけど。……今日PGに行ったらどこからスタートすることになる?」

「もちろん、おわった場所からだよ」

「じゃあ、戦い途中だったら?」

「敵も自分も前回復するよ」

……それって、なんかいいような、悪いような……

「PG内での死ってどうしたら死になるの?」

「あ~、それね。現実と同じだよ。心臓刺されたり、首切られたり、大量出血でも死ぬ。ただ病気はないんだよね~」

 うん、痛そう。

要するに人生で何回も死を体験できるんだなぁ。ラッキーなのか、これは……

「町の外で怪我したとき、死ぬ前に町に戻ってきて、DROPコールすれば無傷で次の日、町に出現することになるの?」

「まあそうだよ。ただし、大怪我したときは町のなかにある病院でしか治せない。時間もかかるし、お金もかかるけど腕一本なくなろうが足なくなろうが治してもらえるんだよ。一回やってもらったけど、そりゃもう痛かったよ、治してもらうほうが!」

「気をつけます。ははは……」

 僕、苦笑い。

 痛いのは誰だって辛いじゃない?

「質問はこれくらいかな、ざっと思いついたのは」

「そう。まあこれから1週間くらい修行するから頑張ってね」

「え……、みっちり7時間×7日とか?」

「もちろん。早く終わるかもしれないし、長くかかるかもしれないけど私も頑張ったからね。といっても基礎しか私は教えることができないし、そのうちいい師にめぐりあえるといいんだけど」

 基礎でさえ大変そうなのに、それ以上って。

 それだけ、大変なんだな、神を見つけるってことは。

 それなのに、こんなに親切に教えてくれて……。

 感謝の気持ちしかないなぁ。

「あの、ありがとうございます」

「ん? いきなり、どうしたの?」

「いや、いろいろ親切にしてくれて。すごく丁寧だし」

「まあペアだし、ね。それに強くて悪いことはないし。私にも叶えたい願いがあるから」

 願いって、なんですか?

 そう聞きたかったがやめておいた。

 もし、僕と同じ絶望からうまれた願いなら、一瞬とはいえ、それを思い出すことになるのだから。

 暗くなった空気をなんとなく感じたので、どうしたものかと考えて、まだ昼食を食べていないことに気がついた。

「あ、食べましょう!」

 元気付けるように言ってみる。

「そうだね」

 そういってやさしく笑ってくれた。

 一瞬見惚れてしまった。

 同時にこの笑顔を守りたい、なんてたいそうなことを考え、すぐに無理だな、と訂正した。今の僕は何も知らないし、弱い。ただの荷物。だから頑張ろう、強くなるために。

「「いただきます!」」

「水野さんはお弁当? まさか手作りとか?」

「うん。買うのはもったいないし、親も忙しいからね」

 弁当の中身をみると、色とりどりのおかずが入っていて、(野菜が多いのでよりきれいに見える)家庭的であると思われた。

 家庭的な女の子、すばらしい。

 もう一度心の中で言います。

 家庭的な女の子、すばらしい。

「神岡君はこれからも購買なの?」

「まあ弁当作ってくれる人はいないし、そのうち作れるようになればいいんだけどね。たまには学食もいいだろうし。気分しだいかな?」

「神岡君も親忙しいの?」

「ちがう、ちがう。僕一人暮らししているから」

「なるほど、大変だね」

「そりゃ、もう。毎日家事が大変で」

 

 そうやって2人で楽しく会話をしていた。


キーンコーンカーンコーン


 昼休みの終了を告げるチャイムが鳴った。

「じゃあまたPGで会いましょう」

 にっこり笑って水野さんは駆け出していった。

 その時僕の横を知らない男子3、4人が通っていった。

 なぜだろう、舌打ちが聞こえた気がした。


       * * *


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