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PHANTOM GARDEN  作者: shinohihou
3/17

~出会い~

僕たちのいる教室は1年6組で一年生棟3階にある。1階は下駄箱と1~3組があるだけなので用はない。

 まず2階に降りる。するとそこには職員室。職員室を左にみてあるくとメディアアベニューというとてもひろい廊下にでる。

 この廊下が唯一特別棟、一年生棟、二年生棟、三年生棟をつないでいる。

「ここを使ってみんな移動するんだな」

 そのためだろうか、人が多い。

 広い廊下にたち、左右を数回見る。

「よし、右に行くか。何があるかなーっと」

少し歩くとそこには図書館と自由に使えるPCルームがあった。

「お、翔くんは図書館に興味をもったと?」

「そういうわけじゃないけど、なんとなく目についただけだよ」

 校舎が新しくなったから図書館も新しくなったのだろう。白を基調に目立ちすぎず、しかししっかりとした存在感があった。

「入ってみるか」

 中に入ってみると本棚がたくさんあった。

 ……手をあげてもまったく届かない。

 奥までいき、曲がった瞬間ひとにぶつかった。

「きゃ!」

「あ、すいません。大丈夫ですか?」

 やば、本ばっかりみてて気がつかなかった。

「こちらこそ、すいません。本に夢中だったもので」

「あなたもですか? 僕もなんです。すっげーたくさんあるなーと上ばっかり見てて……」

 お互い顔を見合わせると、自然とわらいがこみ上げてきた。

 そのとき初めてその人の顔をみた。

「……かわいい」

「え?」

 言ってからマジで後悔した。


 状況を整理しよう。

 曲がり角で見知らぬ女生徒とぶつかる。

 お互い本に夢中だったと会話する。

 ……かわいい、と言う。


 ヤバイヤバイ、これはヤバイ。ただの変人じゃないか。初対面の人にかわいいって……。絶対心の中で“この人、危ない人だ"って思ってる。


なんとか、なんとか言い訳探さないと!

はい、ここまでコンマ3秒。

「か、か、かみ。そう、髪、綺麗ですね!」

 ごまかすためにかわいいから綺麗に変更。

 実際、綺麗かつかわいい人なんだけど。

「あ、紙ですか。ホント綺麗ですよね。手入れしっかりしてるからなんですよ」

お、のってくれた!ここまできたらいけるとこまでいってやる!

「やっぱりですか?手入れはご自分で?」

「いえ、私は図書委員ではないので。というか一年生なのでまだ何にも部活やっていないので」

あれ、あれれ〜。なんか話しが噛み合ってない気がする。

「あ、僕も一年生ですよ。……えーっと、ところで何の話してます?」

「紙じゃないんですか?ペーパーの」

そうか。そうきたか。確かに“かみ”としか言っていない。

 このまま誤魔化すか、とっさにいったとはいえ髪の毛の話は……恥ずかしい。

「ですよねー。ホント紙綺麗ですよね」

は、はやく去りたい。

「じゃあ、僕もう行きます。また会えるといいですね」

「そうですね、また」

 そうやってニッコリ笑って手を振ってくれた。



 図書館の中で優を探し、廊下にでた。

「ねぇ翔くん。さっきのかわいい子、だれ⁇」

 ……そうだ。あの子、すごいかわいかった。

 言い訳で忘れてたー‼

 冷静に思い出して見る。

 夜空を思わせるような、しかしどこか優しさのある黒髪。

 さわったら絶対にサラサラであるだろう、いやサラサラに決まっている。そんなロングヘア。かつストレート。

 そして男心をくすぐる黒のニーソックス。

 制服とあわさって彼女は真っ黒だった。

 しかしあの笑顔はとても眩しくて、ずっと見ていたかった。

 綺麗、かわいいという言葉は彼女のために存在すると断言できる。

 それでいて性格は謙虚で優しい。

 まさに非の打ち所がないと言っても過言ではない。

 あんな人と付き合えたら高校生活バラ色だろうなぁ。

 ここで僕はひとつとんでもないことをしたと気がついた。

「しまった…… 名前聞いとけばよかった!マジでショックだーーーーーーーーー!」

 絶叫したら周りの人に注目されたので、すいませんと謝り、優のほうを向いた。

「もったいないことしたな。あんなにかわいい子、いないよ⁇」

「はい、ごめんなさい」

 なぜか、謝っていた。そして、目からは一筋の涙がおちていた。

いや、汗だ。目から汗が出てきたぜ、がんばれ僕。


テンションが下がってきたので探検はやめ、2人で学食に行き、一連の流れを話した。

「本当に残念なことしたな。可哀想に。頭なでてやろうか?」

「いえ、いいです結構です、全力で遠慮しておきます。逆に悲しくなります……」

本当にかわいかったなぁ。まあ、また会えるだろう。同じ学校だし、同じ学年だし。

「とりあえずこの話はここまでにしておいてっと。なあ翔くん。夢とかってある?」

「またなんでよ、唐突だな」

「高校生だし、将来そろそろ考えないといけないじゃない? 高校生活なんかあっという間だよ」

「将来、ね。特にないかな」

「う~ん、じゃあいまやりたいこととかは?」

「と。いわれましてもなぁ。……彼女ほしい」

「同感だ。つまり、特に今やりたいこともないし、夢もないわけだな」

「あ、料理上手くなりたい!」

「もういいや」

将来なんてまだまだ先だよ、なんて思いながら学食で30分ほど時間をつぶした。

その後、学校探検を続けるか続けないかで軽く話し合い、後者にした。


学校を出たところで腕時計をみた。

時刻は1時半。帰っても1時40分。

帰ってからどこかにいこうかなぁ。


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