世界の位置する場所
目が覚めると、そこには死んだはずの父と母がいた。
「あれ、翔君どうしたの? なんでここにいるの?」
いやいや、こっちが知りたいし訳わからないし。
父と母が死んだのはずっと前のはなし。だからいまここで会えたことがうれしかった。たとえ、それが夢でも。
というか、まさか
「僕、死んじゃった?」
「いや、違うよ」
父さんが言った。
「たぶん『幻想の庭』にいたんじゃない? あそこは死んだ世界と現世のあいだのようなところだから、寝るか、気絶するとたまにこっちにくることがあるんだよね」
へ~、と感心していた。
いろいろなことが話したかった。
話そうとすると、
「ねえ翔君。翔君はさっきまでなにしてたの」
険しい顔で質問してきた。
「えーっと、戦ってた」
「何のために?」
なんのためだっけ。
少し考えると、だんだん、記憶がはっきりしてきた。
「水野さんを、守るため」
「その人は大切な人なんだよね。じゃあこんなところでゆっくりしている場合じゃないんじゃないの?」
「そうだけど、そうだけど……会う機会なんて滅多にないんだからもう少し話したいよ!」
「だめだよ、甘えちゃ」
今度は母さんが。
「私たちはいつでも見守っている。翔君がいつも頑張って生きていたことを知っている。つらいこと、苦しいこと、嫌なことたくさんあったのを見てきたし、私たちの死が原因だったことも知ってる。ごめんなさい」
「けれど、他の人は同じように死んだ人と会話することはできない。できるひとのほうが不平等なんだよ。それに甘えちゃいけない。そうでしょ」
「…………そうだね。わかった。行ってくるよ、そして助けてくる。そう、誓ったんだから」
「それでこそ俺たちの子供だ」
「頑張りなさい。あなたの力は守るための力なんだから」
母さんが頭をなでてくれた。
「……ありがとう、父さん。じゃあ、行ってきます!」
そう言って目を閉じた。
* * *