差のある決戦
目が覚める。視界がはっきりしてきた。
……PG内についたのか。
天気は晴れ。
目の前には男一人、女一人、奥の建物の中に水野さん。
敵は臨戦態勢に入っていて、逃げるつもりはないらしい。
こちらとしてはありがたいかぎりだ。
「まさか、タイムリミットが重なるとはな。で、改めて聞こう。お前たちはなんだ?」
「私は水野時葉。かつてあなたたちに殺されそうになったんだけど、憶えてないわよね」
「憶えているわけないでしょ。殺してきたやつの顔と名前なんかすぐ忘れるわよ」
「だまれ! 僕の名前は神岡翔。僕たちと戦え!」
「それは復讐ってやつか」
「そうよ、文句ある?」
水野さん怖い……。
「いや、大歓迎だぜ」
「それはありがたい」
「じゃあ近くの森にいきましょうか。町じゃあ戦えないですし」
4人はお互いに距離をあけて歩く。
いやー、殺気がすごい。
肌がピリピリするよ、電気風呂みたい。
5分くらいしたところで全員が歩みをとめた。
「それにしても久しぶりだぜ、復讐者なんて」
「大丈夫、痛くないように、きれいに殺してあげるから」
殺気が増す。
けれど、おびえている場合じゃない。
隣で水野さんが力強く言う。
「やれるものならやってみなさいよ。昨日みたいにはいかないわよ」
「じゃあ水野さん、頑張りましょう」
一瞬の間があり、先手を取るために、こちらが先に動いた。
僕は宮間梨香にむかい、
水野さんは坂西誠にむかう。
先手はなんとか狙いどおり宮間梨香にあたる。
刀でラッシュし、どんどん押していく。むこうはこちらの意図がわかったはずなのに、あえて反撃せず、水野さんたちと距離をとらせてくれた。
「そんなに一対一がいいの?」
水野さんたちが見えなくなったところでラッシュをやめると、質問をしてきた。
「4人の中で1番弱い、その自信はある。だから4人で戦ったら、そっちがこちらの一人を集中的に攻撃し、ひとりダウンするでしょ。そしたら確実にこっちの負け。勝てる確率がすこしでも高いのはこっちの方法だった、それだけさ」
「賢い選択だね。そんな君の勇気を称えて勝負してあげるよ」
お互いにっこりと笑う。
宮間梨香は腕に籠手をつける。
あれで受け止めて反撃するのかな。
試しに1発いってみるか。
「はぁぁぁ!」
地面をけり、間合いを詰め、刀を振り下ろす。
キン!
甲高い音がした。籠手と刀があたる音。
やはり、籠手は岩と違い、斬れなかった。
今回は両手で防がれたが、片手で防がれていたら腹に一撃もらっていた。
「いい力だね、楽しいよ」
「あんた、戦闘マニア?」
「う~ん、そうでもないけど。まあ、楽しまないとやってられないんだよ、こんなこと」
じゃあ戦うなよ!
思わず心の中でつっこみをした。
再度、こちらから攻める。
一番力の乗る45度から振り下ろす。
梨香は上に飛び、そのまま右ストレートを打ってくる。体を刀の反動で右に体を動かし、左肩にかするくらいのぎりぎりで避けた。さらに反動で回転して刀を水平に振る。しかし、しゃがむことによって回避され、僕は隙だらけになった。その隙を梨香は見逃さず、左ストレートを腹に打ってきた。
「うっ」
そのまま数メートル飛ばされ、地面を背中からすべる。さらに梨香はたたみかけてくる。その前に刀を握って構え直したので、梨香は警戒し、攻撃してこなかった。
わずか数秒の出来事。
そのなかで僕は感じた。
実戦の差、に。
間合いの大きいこっちの方が有利なのは明らかである。それでも、難なく対処してくる梨香に僕は恐怖をおぼえた。
「なかなかやるね」
「そりゃ、どうも」
やはり、出すとしたら初撃。そこで、思力を使うしかない。
集中する。いきなり全力の長さは出してはいけない。
そしていく。
振るスピードをさっきよりあげる。
よって籠手で防ぐのが間に合わず、刀の先ぎりぎりで避けようとする。
予想通りだ、いける。
プシャアアアアァァァァァァ。
すぐに距離をあけ、確認すると、肩からわき腹にかけて血がふきでる。
けど、浅い。
梨香はわずかに痛そうにしただけで、何が起こったのかわからない顔をしている。
わかっていないのなら今畳み掛けるしかない。
地面を蹴る。
さっきより長く、速く!
キィン
しかし、今回はそれを見通していたかのように籠手で防がれた。
やばい、くる。
そう思い、体を回してギリギリこぶしをかわす。同時に刀をひき、おもいっきり上に跳ぶ。刀の先を下にしておもいっきり突き刺す。これなら籠手でも防げない。さらに思力で長くする。
それでもわずかにかすっただけでよけられてしまった。
ここで、梨香が自分から距離をとった。
「その刀、のびてるよね」
僕は無視する。
「そうそう、大切だよ、戦い中に敵に技を知られる訳にはいかないからね。けど、さっきの上から突き刺すやつで確信に変わった。それが君の思力なんだね」
「……そうです、そのとおりです」
「じゃあお姉さん機嫌いいから、こっちの思力もみせてあげるよ」
そういって一気に間合いを詰めてくる。
そして、刀を振るように、右手を振り下ろしてきた。
刀で防げば勝手に相手の腕は斬れる!
しかし、そうはならなかった。
刀の鋭利な刃と、梨香の小指がぶつかっていた。そう、ぶつかっていて、傷がついていなかったのだ。
「硬化するのか……」
それも、刀と同じ硬さ。あれでこぶしをくらったら正直立っていられる自信が無い。
弱点が無いか、それを探るため、思力を長くしてこぶしをくらわない距離で刀をふった。
1回目、籠手に防がれる。2回目、指に防がれる。3回目は突きを胴体にむけて放った。その攻撃は、かわされた。
「そんな長い距離でこそこそ攻撃するなんて、お姉さんあんまりすきじゃないな~」
「それは失礼」
今の3回から考えられること、それは、手首から先しか硬化できないのではないか、ということである。腕全体を硬化できるのなら、籠手をする必要はないし、まして体全体を硬化できるなら、3回目の攻撃をよける必要が無い。
このように仮説を立てても根拠はない。だけど、必ず戦いの中で役に立つだろう。
集中して再度思力を使う。
一瞬の間があり、今度は梨香から攻撃してくる。
今までよりはやい……。
そのスピードにより刀の始動がおくれた。あたるのは刀の刃と籠手。
懐に入られた!
間合いを取ろうと下がるが、梨香は左ストレートを打ってくる。
先ほど同様、体をまわしてかわそうとするが、できなかった。
そして、ついに重い一撃を腹にもらった。
「ゴフッ!」
視界が暗くなる。
だめだ、気を失ったらやられる。
守らなくちゃ、いけないんだ。まも、らなくちゃ……。
* * *




