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貰ったラブレター

いきなり貰ったラブレター。たったそれだけのコトだが生まれて初めての経験に「僕」は戸惑いを隠しきれない・・・それでも「僕」は受験生だから夏休みも・・・。

2:貰ったラブレター


 しかし今と違って携帯電話もそんなに普及しなかった頃で、ポケベルが主流だったし、高校生でポケベルを持てる人間も、そんなにはいなかった。例えば合コンなどは皆、自宅の電話番号を教えていた時代だ。どうやって自宅の電話番号を聞き出すか、そのテクニックを磨く為に色々と考えを廻らせていたような時代だから、例えば誰かに恋心を伝えるとしても、ラブレター位しか無いしあとは友達を頼って二人きりになるようセッティングをして、そこで告白する、何て事が普通だった。しかしまぁ、いきなり全く知らない女の子からラブレターを渡されるなどとは夢にも思ってもいなかった。別にスター選手、例えば甲子園の優勝投手とか、インハイ出場経験があるとか、そんな突出したような事は何一つやっちゃあいないし、共学でもないから、よく青春ドラマとかでもありがちな、校内での恋愛事なんてある訳でもない。

 まぁ、一度電車の中で見た事はある。どこどこの高校だったかなぁ、制服の可愛い事で有名な女子高の人が、無骨な事で有名な男子校の人にいきなり告白をされて何だかどうしょうもなくしていたのを。可愛らしい顔立ちをしていたから確かにもてたのだろうが、その女の子は何だか迷惑そうな、でもまぁ、満更悪くも無いような顔をしていた。結局その場で断ったような雰囲気だった。その男の子にしてみたら、随分思い切った選択をしたのではないかな、僕にはそんな度胸は無かったから一言、偉いよ、と思っていた。

 

 よく考えると携帯電話の出現で、世の中の男は女の子を口説く時に、苦労しなくなったんじゃないか、だから逆に付合いベタな男が増えて、女の子が強くなるような時代になったんじゃないか、と今は思う。人付き合いも直接の会話からメールに変わり、感情を表さなくても用件さえ伝えれば事足りる訳だから、便利といえば便利だが、人付き合いの仕方は覚えない。バーチャルな世界がリアルに取って変わって久しい現代社会だから、平気で子供は人を傷付ける。その子供が親となり、子供の育て方も分からないから暴力で言う事を聞かせようとする。理解出来ないモノは理解しようと努力するのではなく、排除してしまうような世の中だ。

 理解出来ないモノは排除する、これは日本人の昔からの特色の一つだと僕は確信を持っている。それが最近は顕著に出過ぎなだけだ。要は、変わり者は受け容れない、また、受け容れないだけでは無く、異質の物は排除する、集団が全て正しい、という多数決のような倫理観が日本人には根強い、と確信を持つような出来事が身近に有り過ぎた。流行次第で平気で、自分の見た目を変えたり、まぁ、見た目だけならお洒落の範疇だからいいし、お洒落したい、という欲求は人間の楽しみの一つだからそれを否定する事は全くの筋違いの話になる。そうではなく人生そのものも変えてしまうような危うさがある。そんな根無し草のような人間性が日本人には必ずDNAに組み込まれており、それが顕著に出るか、出ないか、ただそれだけの違いだと僕は15、6で確信した。今もその確信の根本は変わってはいない。ただ、大人になった僕は、その確信に対し、色々な社会経験を積んで、実証結果を自分で掘り当てて結局ウンザリしてしまって、もう半ばどうでもいいや、所詮それが人間だろう、と思っているだけで、やっぱり変に老成してしまったんじゃないかな、と思っている。それはいい事なのか、悪い事なのか、まだその答えは僕の中では整理が付かない。いつ整理を付ければいいのか、その判断さえ分からないのだからもうどうしょうもない。ただ、そう思った、そう感じた、そう体験、経験をした、その事実と痕跡が僕の中には蓄積されるだけ。そしてその痕跡とどう向き合えばいいのか、何て良くは分からないけれども、自分でその痕跡やら蓄積が、人の役に立ちそうな時には遠慮無くだしている。それで人の役に立てるのならば、それはそれでいいんじゃないかな?。

 

 さてさて、18の僕の日常はたった紙切れ一枚で大きく変わった。ドキドキし始めた。そりゃそうさ、今だったらともかく、その頃僕は女の子に30回近く振られっぱなしで、もう一生、彼女なんて出来ないだろう、所詮人間は一人ぼっちなんだ、なんて半分いじけていたのだから。しかしそれと同時にちょっと考える事もあった。それはその時僕は、他に惚れそうになっていた女の子が同じ電車の中でいたのだから。

 毎日同じ電車に乗って同じ顔を毎日見ている訳だから、何となくだけどそこで惚れたハレタなんてあっても不思議じゃないでしょう。その女の子は、今も顔だけははっきりと覚えているのだが、どうも目と目があってしまうとお互い顔が真っ赤になってしまって妙な緊張感があった。いつかは告白して、振られれば踏ん切りが付くだろう、その程度に考えていた。そのいつか、とは僕が大学に合格して、何の気兼ねも無く人と遊ぶ事が出来るようになってから、その時迄は我慢して勉強しよう、そう勝手に思っていたのだ。その子は妙に痩せていて、いつも気だるそうな顔をしていた。顔立ちは可愛い方で、目は奥二重だがはっきりしていて、キリッとした表情が何ともまぁ、魅力的だった。このラブレターの主がその子だったらなぁ、と僕は贅沢にも思っていた。

 

 しかし夏休みの前の日で、暫くは同じ電車に乗る事なんてないから、二学期が始る迄は特に進展など有る訳もないでしょう。それ迄の間、僕は頑張って勉強でもしていましょう、そう思って夏休みを迎えた。


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