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【7話】真実の糸 1


「アリナさんのしあわせを願って」


 女性スタッフが、結婚式場のとびらをいきおいよく()けます。


 その瞬間、ステンドグラスの七色の輝きと教会のように神秘的な白い内装が、わたしの目に飛びこんできました。


「アリナちゃん、おめでとー」


「おしあわせにー」


 たくさんの列席者のお祝いの言葉をあびながら、わたしは父親役の大門(だいもん)マスターと、うでを組んで()()()先生が待つ聖壇(せいだん)に歩きはじめました。


 ……純白のウェディングドレスに身をつつんで。


 そう。そうなのです。


 なにを隠そう今日は――。


 わたしと先生の結婚式の日なのです!


 ああ、この日がくることをどれだけ願い、そして待ったことでしょう。


 わたしと先生は、夫婦という名のもとに、ついに本当の意味で家族になることができたのです。


 わたしとマスターは歩幅を合わせながら、バージンロードとよばれる青いじゅうたんがしかれた道を、ゆっくりと歩きました。


 父親にまもられて育ってきた新婦が、これからは新郎とともにあたらしい人生を歩んでいく。


 新婦と父親が一緒にバージンロードを歩いて新郎のもとへ向かうのには、そんな意味がこめられているのです。


「アリナちゃん、おめでとー」


「ウェディングドレス、すごく似合ってるよー」


 式場に流れる『結婚行進曲』に負けじと、たくさんの列席者が大声で、お祝いの言葉をかけてくれます。


「あーりん、おめでとー」


「ソウマさんと、いつまでもおしあわせにー」


 ハルカさん、ユリさん、ありがとうございます。 


 わたし、絶対にしあわせになりますからね。


「アリナちゃん、おめでとう!」


 あ、常連客の(よね)()さん。ありがとうございます。


「今度、お祝いがてら、家族みんなで『め~め~めふぃすと』に行くからね」


 はい。みなさんがくるのを、よろこんでお待ちしています。


「うう……ううう……」


 お祝いの言葉にかんきわまったマスターが、泣きはじめてしまいました。


 もう、マスター。うれしいのはわかりますけど、お祝いの席なんですから、泣かないでくださいよ。


 それに……あなたに泣かれたら、こっちまで泣きそうになっちゃうじゃないですか。




 お店の常連さん、クラスメイト、そして50体以上もいるウサギのぬいぐるみ。


 みんなのやさしい想いと言葉をシャワーのように浴びながら、わたしたちは真っ白なタキシードを着た先生のもとにたどりつきました。


 いよいよです。


 いよいよ、わたしと先生の愛を神さまに誓うときがきたのです。


「きれいだよ、アリナくん」


 そういって、先生はわたしのとなりに並びました。


 ――わたし、本当に先生と家族になるんだ。


 ――とうとう夢がかなうんだ。


 そのうれしさで体がふるえます。


「だいじょうぶ、ぼくがそばにいるよ」


 先生が、わたしの手を握ります。


 ウェディンググローブ越しに絡むふたりの指。


 その指をとおして、どんなことがあってもわたしのそばをはなれないという、先生のつよいやさしさが流れこんできます。


 そのやさしさのおかげで、キュンキュンとしたときめきが胸に芽生えてしまい、ふるえはおさまるどころか、さらに大きくなってしまいました。



 ★  ★  ★  ★



 愛の誓いは、まず新郎から。


 しずまりかえった式場にぼくさんの声がひびきます。


岩根(いわがね)タクミ、あなたは日向(ひなた)アリナを妻とし、夫としてしょうがい、愛と忠実をつくすことをちかいますか?」


 ん? (いわ)(がね)タクミ?


「ちょっと、ぼくさん!」


 わたしはあわてて、口をはさみました。


「こんなときにふざけるのはよしてください。わたしが結婚するのはタクミくんじゃなくて先生です」


「いや、おまえと結婚するのは、おれだよ」


 耳元で聞こえるタクミくんの声。


 それが気になり、となりを見ると……。


「え……ええええええ!?」


  なんと、わたしのとなりにいるのはタキシードを着たタクミくん。


 いつのまにか、先生がタクミくんと入れ替わっていたのです。


「ウソウソウソ。なんでタクミくんが――」


ぼくさん。おれ、アリナをしあわせにする。神さまにちかうぜ」


「勝手にちかわないでください! わたしが結婚するのは、あなたじゃなくて先生です」


 そのとき、式場のうしろから、


「その愛のちかい、待った」


 とびらをバーンと開けたのは、背が高くて、女の子のようにうつくしい顔をした美少年。


 それはまさしく、わたしの愛する月読(つくよみ)ソウマ先生でした。


 列席者みんながざわめくなか、先生はバージンロードを歩いて、わたしのもとにやってきました。


「先生、誤解です。わたしが愛しているのは――」


岩根(いわがね)タクミ。ぼくと勝負だ」


 先生はわたしの言葉も聞かず、タクミくんにいいました。


「アリナくんにふさわしい男はどちらか。それを勝負で決めようじゃないか」


「ちょっと先生、なにをいって――」


「いいぜ。その勝負うけてやるよ」


「勝手にうけないでください! ってか、わたし、タクミくんと結婚する気はありませんからね」


 でも、イケメンたちはわたしを無視して話を進めます。


「で、なんの勝負をするんだ?」


 目をつぶり、深呼吸する先生。


 みんなの視線が先生にあつまります。


「勝負の内容は……」


 極限まで高まった緊張のなか、先生が重々しく口を開きました。



(つづく)


更新は毎日おこなう予定です。


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