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【14話】悪夢の果て 2


 矢のようなすばやさで襲いかかるベルニエ。


 それをけて、先生が◇を(えが)きます。


炎撃(えんげき)(じん)・ヒショウ」


 ベルニエが、炎を回避しようとジャンプします。


 すかさず、わたしもジャンプ。


 そして空中にいるベルニエのわきばらを()りました。


「いまです、先生」


 床に落ちたベルニエめがけて、先生が飛びかかります。


ふうじん――」


「させるかよ」


 ベルニエが先生のちいさなからだをつかんで、黒板に投げつけました。


「先生!」


 黒板にたたきつけられた先生が、声もあげずに床に落ちます。


「つぎはおまえだ」


 わたしの手首をつかむと、ベルニエはそのまま窓にダイブ。


 窓ガラスとネットを突き破って、わたしたちは運動場に墜落ついらくしました。


「アリナ、もう一度いうぞ。おれの家族になれ」


 ベルニエが馬乗りになって、わたしの首に手をのばします。


「家族になれ。そうすれば命だけは助けてやる」


「だれが、おまえの家族なんかに……」


「命が惜しくないみたいだな」


 白くて針金みたいにほそい指。


 でも、その力はダンプカー以上です。


 ベルニエの指が、わたしの首に食いこみます。もし、わたしが人間なら、すでにのどはつぶされ、首の骨も折られているはずです。


「考えてみれば、家族なんて、いくらでもつくれるんだよな。悪魔って理由だけで、おまえにこだわる必要なんかねえんだよ」


 ベルニエがあざけるような笑いをあげて、指の力を強めました。



 ★  ★  ★  ★



 息ができない。


 くるしくて全身に力が入らない。


 くやしくて、くやしくて、くやしくて。


 あふれたなみだが地面に垂れ落ちます。


 でも、どうすることもできない。


 立つことも、戦うこともできない。


 のどをしめられ、助けを求めることさえできません。


 ――助けて、先生。


 出せない声に代わって、救いを求める想いが心にあふれます。


「いまさら泣いてもムダだぜ。おまえの代わりなんて、いくらでもいるんだからな」


 耳元で叫ぶベルニエの声が、意味をなさない音として耳のなかで反響します。




 意識がなくなる。


 想いが消える。


 そして命が砕け散る。


 まさに、その瞬間でした。




(こう)(しゃ)(じん)・ヤジリ」


 ←の陣形(かたち)をした光の矢。


 それがベルニエの肩を射抜いぬいたのです。


 かんだかい悲鳴をあげて飛び退くベルニエ。


 からだの自由をとりもどしたわたしは、思いきり空気を吸いました。


 意識も、想いも、そして命も。


 とまった時間のなかで、ふたたび強く動きはじめます。


「アリナくんの代わりなんていない」


 声のしたほうを見ましたが、そこにウサギのぬいぐるみはいません。


 その代わり、背が高く、スタイルばつぐんで、女の子みたいにうつくしい顔をした少年が、手に合わない、ちいさな()(どう)(ひつ)をかまえていました。


「ウソ……」


 ついさっきまでとまりかけていた心臓が、今度は大きく()ねあがります。 

 

 もう二度と会えないと思っていた人が目のまえにいる。


 その奇跡に、わたしの目から、うれしなみだがボロボロこぼれ落ちました。




 運動場にいたのは、なんと人間のすがたをした先生だったのです。




(つづく)



更新は毎日おこなう予定です。

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