第一章 始まり
みなさんこんにちは、こぎ。です。
この物語は、ファンタジー小説として、連載予定です。最初は何を言ってるかわからないかもしれませんが、最後までお付き合いしてくれると幸いです。
東京都郊外に住む三上家は、ごくごく普通の家庭だ。一般企業に勤める健太郎、専業主婦である妻、裕子。そして四人の子供たち。長女、優衣、次男、宏輝、そして末っ子、侑芽。この物語は、侑芽がまだほんの赤ん坊だった時から始まる……
「ねえあなた!今日、侑芽がね、ママって喋ったのよ!」
こう嬉々として夫に娘の話を始める裕子の隣で、宿題ができないと騒ぐ優衣、お姉ちゃんと遊びたくて駄々をこねる宏輝、知らん顔してすやすやと眠る侑芽。これが三上家の日常である。
しかしこの日はいつもとは少し違った。
夜八時半、裕子が優衣と宏輝を寝かしつけ、母乳をあげようと侑芽を抱き上げたその瞬間、侑芽が、突然輝き出したのだった。裕子は幻覚だと思い目を擦った。しかし、どれだけ目を擦っても、侑芽の輝きは止まらない。表面が光っているというよりかは、まるで、内側から光り輝いているようだった。
裕子が呆然としていると、どこからともなく一通の手紙が現れ、魔法のように手紙が緊張した様子で喋り出した。
「オモルフォス、いいですか。よくお聞きなさい。この子は…この子は、どうやらニンフェーラのようです。しかし…、いいですか?決して、時が来るまでこの子に話してはなりません。こんな風に突然ニンフェーラになることなんてそうありませんから…そうなると、この子の身に何が起こるか…。」
裕子の顔が一気に青白くなり、やっとのことで口を開いた。
「げ、ゲニウス教授…?な、なぜ、私の子供が急にニンフェーラになったのでしょう?私、私は…」
ゲニウスと呼ばれた声の主は、さっきまでの緊迫した声の調子から一気に代わり、嬉しそうな声でまた喋り出した。
「心配御無用よ、オモルフォス。それより、今から、この子の名はアイリーンとなるの。いいわね?あなたの子供だもの、ニンフェーラであって当然よ。例のことはあなたに直接関係しているわけではないわ…。だからあなたは気にしなくて良いのよ。隠す必要なんてないわ。それから、あなたは裕子なんかじゃなくってオモルフォスよ。」
そう緊張がとけ嬉しそうに早口で喋る手紙とは正反対に、やはり青白い顔をしている「オモルフォス」が重たそうに口を開いた。
「でも、どうして侑芽が…?優衣も、宏輝も普通の人間よ。」
優しい声でまた手紙が喋った。
「きっとね、侑芽ちゃん、おっと、そうじゃない、アイリーンちゃんにはね、何かすごい力が芽生えたのよ。精霊様のことよ、ふさわしい人間にしか力を与えないはずよ。」
「そうですね…しかし先生、私はどうすれば…?」
「さっきも言ったでしょう?あなたがニンフェーラであると隠しているように、アイリーンちゃんにニンフェーラのことを言わなければいいの。簡単でしょう?それじゃあ、私は忙しいから、一旦おしまいね。約束を忘れちゃだめよ!」
そう言い残し、手紙が跡形もなく消えた。裕子は途方に暮れていた。これからどうしよう、と。その時、侑芽がにっこりと笑った。
「私がこの子を守らないと。」
そう呟き、裕子は夫に今の五分の出来事を話そうと夫の部屋に向かった。
続く