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【2024/02/18】小説家になろう日間総合ランキング一位をとった作品の構築経緯と振り返り


●はじめに


 ありがたいことに『ある侯爵令嬢様が、ダンスパーティーで婚約を破棄された理由。』という作品で日間総合ランキング一位を獲得いたしました。やったね!

 せっかくなので、書くに至った経緯やランキング分析、物語構築をまとめておこうと思います。


 「こういう風にしたらランキング入れるぜ!」という創作論ではありません。

 単なるヤマモト個人の振り返りを備忘録にしておきたいだけなので、気になる方だけ話半分で読んでください。



●構築に至った経緯:なぜ「異世界恋愛」×「ミステリ」がアツいと考えたのか


 ヤマモトはもともとミステリが好きで、非Webの公募にはだいたいミステリで挑んでいます。なので、ヤマモト的には常にミステリがアツいです。


 加えて、前々から中世~近代風の異世界、特に貴族学園や宮廷を要する「女性向け異世界恋愛の世界」は、ミステリと相性が良いと考えていました。

 この世界はミステリを書く上で問題となる諸問題を解決できる舞台設定です。例えば警察=科学捜査をスッと排除できたりします。

 扱いが難しいのは、魔法や奇跡の有無くらいでしょうか。ないほうが無難ですが、アリなら特殊ミステリが書けます。それも面白そう。


 また、ミステリは読者の興味を引く要素(フック)も強いジャンルです。

 フックは読者に「続きが気になる」と思わせる役割を持ちますが、ミステリは「犯人はだれか」とか「どうやって犯行をおこなったのか」とか、物語の根幹となる謎そのものがフックとして成立します。

 ミステリとは、そもそも構造的に強くて面白いジャンルなわけです。


 しかしながら、ミステリは商業では売れ線なのに、小説家になろうでは少し評価が伸びにくいジャンルです。厳密に言えば推理ジャンル累計一位の作品はなろう、商業問わずめっちゃ伸びていますが、あまりの数字のデカさゆえに外れ値としか言いようがなく、データサンプルにはなりません。


 ともあれ、「理屈の上ではアツいはずなのに、なろうではアツくないらしい。おかしいな……」と常々思っていました。


 それもあって異世界恋愛ミステリの『ひづめひめ留学記』という作品を書いてみたりもしたのですが、ランキングとは無縁なまま終わりました。

 「面白く書けたけど、けっこうクセが強くて、ミステリ以外のパートが半端な作品になってしまったな……」という反省もあって、リベンジするならどういう構築にするか、ずっと考えていました。


 で、今年になってから『僕はねぇ! 「異世界恋愛」×「ミステリ」がねぇ! アツいと思うんですよ僕ァ! 聞いてますか! ねぇ!』みたいな話をする機会があったので、指の慣らしとか気分転換も兼ねて書いてみることにしたわけです。



●ランキング分析~実際の構築


 書くと決めたらさっそくランキングの分析から。

 今回は異世界恋愛の掌編を書くと決めていたので、異世界恋愛短編のランキングを上から十作品読み、タグと物語要素を抽出し、データ化して人気要素を洗い出しました。

 こう書くとめちゃくちゃデータキャラみたいですよね。実際はぜんぶエクセルに手打ちしてちまちま数えました。フフ……僕の計算によれば十割は100パーセント……。

 (実際にデータとる場合は三百位までぜんぶ集計して統計出したほうがいいと思います。)


 得られた要素は人気順に「女主人公」「ハッピーエンド」「西洋」「令嬢」「近世」「ヒストリカル」「ざまぁ」でした。厳密には「令嬢」以降の要素は同率ですが。

 また、平均文字数は6700文字でした。

 これはヤマモト個人が好む短編の長さともおおよそ合致しました。8000文字超えると「お、ちょっと長いか」と思ってしまうので。


 というわけで、これらの要素を使って物語を組み始めます。


 異世界恋愛短編もまた、ミステリ同様にフックが強いジャンル――というより、フックが重要なジャンルです。

 例を挙げれば「姉から婚約者を奪った妹が勝ち誇っているけれど、姉は妹に『ドンマイ!』と思っている。なぜ?」とかでしょうか。フック自体が物語の根幹を成す、という点ではミステリと同じです。


 このフックの強さを重複させて、上手にミステリ展開を異世界恋愛の中に入れ込み、ハッピーエンドに持っていかなければなりません。

 そこで思いついたのが「婚約破棄された理由がわからない」をフックとする物語です。


 婚約破棄された令嬢自身が謎を解くよりも、第三者がいたほうが物語が面白くなると考え、探偵役及び探偵役のお相手役=助手役となるキャラクターも必要だと判断しました。

 文字数的にこれ以上はキャラクターを増やせないため、この四名だけで回せるプロットをざっくり組みました。


 で、6700文字に納めようとしつつ書いてみたところ、ミステリに必要な情報を詰め込んだだけで6000文字を超えてしまい、詰みました。無理だよ。

 改めてプロットを見直すと、丁寧にやれば2.5万文字は必要なおはなしです。馬鹿か?

 なので文字数は倍の13000文字までは誤差ってことにして、シーンやギミックをごそっと削って対応しました。フフ……僕の計算によれば十割はだいたい200パーセント……。


 結果、読者を上手に欺く情報がないまま展開してしまい、ミステリとしての強度はやや低めになった感があります。

 ただ、探偵と助手の遣り取り(ロマンス要素)を優先して削らなかったのは、異世界恋愛ものとしては正解だったと思います。



●投稿~反応


 正直また24ポイントくらいで終わるかな、と思っていたのですが、非常に伸びが良く、あれよあれよという間に日間総合、百位、五十位……と伸びていきました。


 心配だったミステリ強度が低い感ですが、実際に序盤情報でメタ読み出来た方も多数いらっしゃったようです。まあそうだよね……。

 想定内でしたが、もうちょっと上手に書けたらよかった。文字数がなぁ……。


 また、想定外のこととして、「小生」という一人称を使う慇懃無礼な女子生徒キャラに引っかかりをおぼえる方が一定数いらっしゃいました。

 「男性が同格~目下の相手に対してへりくだって使う一人称」だそうです。そうなんだ……書生さんのイメージしかなかった……。


 キャラごとに一人称を変えると会話劇が読みやすくなるため、ヤマモト的にはボクっ娘の亜種くらいの気持ちで設定しました。

 が、言動が奇抜なキャラに対する許容値が、普段ヤマモトが棲んでいる男性向け界隈とは、少し違うのかも……と思いました。勉強になりました。

 小生っ娘はかわいいと思うので、こっそり一文追加して、違和感が少なくなるように調整してみました。効果があったかどうかはわかんないです。


 文字数については、20000文字くらいでも良かったかもしれません。異世界恋愛短編の適切な文章量に対する考察が浅かったように思います。


 最終的に、2月18日夜~翌19日昼のランキング更新まで、日間総合ランキング一位を獲得できました。

 連載作品でランク戦に挑むと連続投稿のプレッシャーで心を病むのですが、短編はそのプレッシャーがなく、心が穏やかでした。

 温かい感想やレビューもいただいて、感謝感激です。

 ありがとうございました!



●投降後の振り返り:本当に「異世界恋愛」×「ミステリ」はアツいのか


 アツいと思います。ていうかアツいです。一位取れたし。

 でも構築に時間がかかる上に(他の仕事もしながらですが、プロット立てて一万文字の短編を書くだけで四日もかかりました)、文字数も伸びがちなので、安定して供給するのは難しいな……と思います。

 安定供給が求められるWeb小説投稿サイトで連載するには、構造時点で厳しさがあるわけですね。


 読者側の需要はあるけれど、作者側の体力が追い付かない――そんなジャンルだと思います。無限の体力がある方なら、覇権を取れるんじゃないかな。

 今後も書きたいとは思っていますが、ヤマモトはデータキャラの多聞に漏れずフィジカルが貧弱なため、連載は厳しいです。どういう形式で創作するかは悩みどころです。

 短編でシリーズ化して、たまーに書くくらいがいいかな……。


 もちろん、いちばんありがたいのは書き下ろしで書籍化させてもらえることなのですが。出版社さん見てますか。待ってますよ。出版社さん。ねえ。



●さいごに


 ここまでお読みいただきありがとうございました。

 ご興味ある方は、ぜひミステリに挑戦してみてください。ヤマモトが喜びます。

 それではまた。



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― 新着の感想 ―
[一言] 異世界恋愛とミステリーの相性がいいな、とは自分も感じておりました。 と言いますか、異世界恋愛の読者さんが単純にベタベタしたり、ざまぁしたりされたりというのに飽きてきている気がします。 あるい…
[一言]  異世界だと科学捜査の排除、連絡モバイルがないのでクローズドサークルが作りやすい、往年の首なし死体で人物入れ替わりトリックなども書きやすいんですよね。  人間関係を細かく書ける長編なら、貴族…
[良い点] 異世界恋愛×ミステリは私の中では常にアツいので、「同好の士が現れた!!」と興奮しました ご参考までに、琥珀先生のエッセイ「誰にでも書ける殺人。あるいは異世界恋愛とミステリって案外相性よいの…
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