第2話 ルドと氷像
「さあ今度話すは、ローズマリーの兄ルドの誕生パーティーでのこと」。
あれから約1週間、今日は兄さんの誕生日だ!初めてちゃんと兄さんと会う日、それから兄さんの家庭教師の仕事の最終日でもある。
パーティーは今日の夜、シアンバード本家で行われる。
「ローズ、昼までに準備しておけよ」
「わかってますよ、父様!」
本家までは馬車で約4時間ぐらいらしい、早めに向かう理由は向こうでの着替えやらなんやらの準備や本家への挨拶などやることがあるかららしい。
「今日はパーティーがあるから、先に走りに行くか?」
「はい!」
あれ以来、父様と走るのが日課になっている、初日はすぐにバテて次の日筋肉痛がひどかったけど、1週間も続ければ流石に慣れた
いつもは昼に走っているが昼には出発するため今日は朝に町の中を走りに行った
「ローズちゃん今日も元気だねぇ」
「はい!おばちゃんも!」
走っているとお店の人や畑仕事をしている人たちに挨拶されるようになった、あまり大きくない町だからかこの町の人達は交流が盛んだ
「そろそろ切り上げるか」
「はーい」
1時間ほど走ったあたりでランニングは終わり、家に帰り準備を終わらせ昼食を取る。
「ローズ、そろそろ行くぞ」
「はーい!」
そう言い、ローズはプレゼントボックスを持って1階に降りる
「それがプレゼント?」
「はい!」
「何にしたかやっぱり教えてくれないの?」
「はい、秘密です!」
「じゃあ行くか」
ペテロがドアを開けると馬車が家の前に止まっていた
「向かいますかな?」
「ええ、よろしくおねがいします」
御者に母がそう答え馬車に乗り、出発した
「そういえば、3人はプレゼント何にしたんですか?」
揺れる馬車の中でふと気になった
「ん、そういや言ってなかったな、俺は杖にした、ルドはまだ持ってなかったからな」
ペテロはそう言い立てかけてある長い布に包まれたものを指した
「私は本ですね、ルド様も本がお好きでしたので」
ナクールさんはそう言い手に持っていた箱を見せた
「母様は?」
「私はローブね、手作りなのよ!」
ミテラは自慢気に言った
そんな話をしているうちにシアンバード家についた
「着きましたぞ」
御者にそう言われ馬車から降りとそこには大きな城と言っていいほどの屋敷があった
「デッカ!?」
「立派な屋敷でしょう?」
屋敷の大きさに驚いていると門の向こうから声がした
「姉様、お久しぶりです」
どうやら母様の姉、私の伯母らしい
「あなたがローズマリーね?」
「はい!」
「私はメアリーよ、よろしくね」
「はい!」
後で知ったが兄様教えていたが本家の子供というのはメアリー伯母様の子らしい
そして私達は客室に案内された、そして客室には私の祖父母であろう男女がいた、老夫婦と言うには若々しくお祖父様の方は父様よりもガタイがよくまだまだ現役といった様子、お祖母様の方は気品がありつつどこか母様に似ている
「おう、よく来たな!」
「久しぶりね、ミテラ」
「ん、お前がローズマリーか!ははは!かわいいやつだな!」
こりゃまた豪快に笑う人だな
「はい!ローズマリーです、よろしくお願いします」
「そんなに固くならなくていいのよ?この人に礼儀とかないから」
お祖母様はそう笑いながら言う
「相変わらず元気ね、お父さん」
「おう!俺は元気なのが取り柄だからな!ペテロも元気そうで何よりだ!」
「そりゃもう元気ですよ!ははは!」
そういい二人が笑っている、お祖父様は父様と意気投合したため母様との結婚をそれはもうあっさりと決めたらしい
「ローズよ、今日は楽しんでいってくれ!」
「はい!」
それから挨拶を済ませドレスに着替えパーティー会場に向かった
「似合ってるわよドレス」
「ありがとうございます!母様も似合ってますよ!」
「ふふ、ありがと」
「ふたりとも準備できたな、そんじゃ行くか」
そう言い大広間に入った
「おおー広い!」
お祖父様はパーティー好きなためよく開くらしい、そのためこの屋敷の大広間は特注なんだとか
入ってすぐ正面のステージにはお祖父様が立っていた
「これで全員揃ったな?そんじゃ今回の主役に開始の音頭を取ってもらう、ルド!」
「どうも、この度は私の誕生パーティーにお集m」
「そういうのはいい!」
「はっはい、そっそれじゃあ乾杯!」
なんか締まらないスタートだな、まあいっか
「じゃあルドのもとに行きましょ」
そういいステージから降りている兄様のもとに母様が向かう、私たちもそれに続く
「あっ母様!」
兄様が私達に気づき手をふる
「誕生日おめでとう!ルドはいっこれプレゼント!」
「これってローブ?」
「ええ、私が縫ったのよ!」
「ありがとうございます、母様!」
「渡すの早いって、ルドおめでとう!」
少し遅れて私たち到着した
「父様ありがとうございます!それと、もしかして...ローズ!?」
「はい!兄様、お誕生日おめでとうございます!」
「おお、大きくなったな!あんなに小さかったのに」
「いつの話ですかそれ?」
「それより、ほれプレゼント」
そう言い父様が兄様に杖を渡した
「杖ですか!?」
「おう!お前専用の特注品だ!いいだろ!」
「ありがとうございます!大切にします」
「私からは魔導書です、本屋の店主によれば、水帝王級ものっているらしいですよ」
「本当ですか!?ありがとうございます!」
ルドはどうやら魔術が伸び悩んでいたらしい
「私からはこれです!」
そう言い箱を渡した
「ん?これは?」
ルドが箱から出したのは魔法陣の書かれた円盤だった
「なにこれ魔法陣?」
ミテラも不思議そうに覗いていた
「ちょっと貸してみてください!」
そう言い円盤を借り机においた
「注目ですよ!」
そう言いつつ手に魔力を込める、すると魔法陣の中心から氷が生まれ少しずつ形になる
「これは...」
そしてバラの氷像となった
「すごいよ!ローズ!」
「どうやったの!?」
母様と兄様は驚いている、父様は...目を見開いて固まってる
「はいっプレゼントです!」
そう言い改めて兄様に渡した
「でも氷だと溶けちゃうんじゃ?」
「だと思って!魔法陣に魔力を込めれば1年は溶けませんよ!」
先程の円盤に書かれていた魔法陣は冷却の魔術のもので一度込めれば1年間続く魔術である
「でも、暑いところだと、1年持たないかもなので、余裕を持ってチャージしてくださいね」
「すごい、大切にするよ!」
「感動の再会は済ませたのか?」
兄様と話していると後ろから声がした
「あっ!ラクレス!」
「よっ!てかなんでお前の父さん固まってんだ?」
ん?あっまだ固まってたんだ父様...そろそろ動いていいよ〜ってね
「それはともかく誕生日おめでとう、ルド」
「ありがとう」
「それと、はじめまして嬢ちゃん?」
「はじめまして!」
「ローズ、こいつはラクレス・キングスロード、一応セブロス王国第2王子だ」
「一応ってなんだ!れっきとした王族だぞ!」
「王族にしては礼儀がないわね、ラクレス?」
「げっエキドナ!」
「げって失礼ね」
「はじめましてローズちゃん!私はエキドナ・シアンバードよ!よろしくね?」
「はじめまして!」
「シアンバード...ってことはもしかして、エキドナ様って?」
「ええ、ルドの生徒よ」
やっぱり、この人が兄様が教えていた人だったんだ
「そういやエキドナ?聖火使えるようになったのか?」
「ふふふ、少ししたらわかるわよ」
「兄様、ホントに使えるのかな?」
コソッと聞こえないくらいの声で聞いてみた
「それが僕もわからないんだ、契約の最後の方では自主練がいいって聞かなかったんだ」
ルドの心配とは裏腹にエキドナは自信げにステージに向かった
「それでは皆様!ご注目ください!パーティーも終わりが近づいてまいりました、そこで私から皆様へこちらを送らせてもらいます」
「ルド先生と皆様の未来に幸福が訪れますように」
そう言いエキドナは両手を前に差し出した
「聖火」
するとエキドナの手から青い炎が生まれ炎は鳥の形となりルドの頭上を通り大広間を飛び回った
「おお、これが聖火...」
「使えるようになったんだ、エキドナ...」
「なんだ、使えるのかよ」
みんなが見とれているうちにエキドナが戻ってきた
「どうです?先生?」
「ああ、見事な聖火だよ!」
「泣いてるんですか?兄様?」
「ああ自慢の弟子の成長に感動しているんだよ..」
「ローズ!いつの間にそんなに魔術を!」
えっ!?私!?
ペテロが今更動いた
「父様...その話ならもうだいぶ前に終わりましたけど...」
「そうなのか?いや使えるのは知っていたが、初級ぐらいだと思っていたのでな」
「えっ知ってたの!?」
どうやら、練習を見られてたみたいだ
「おう、でもまさか氷まで...」
「それより、今はエキドナ様の聖火のお披露目でしたのに、ほら」
そう言って炎の鳥を指さした、およっ
指を指してペテロの方を見ていたローズの指に炎の鳥が止まった
「ローズちゃん、熱くない?」
「はい、このようなこともできるのですね!」
「ええ、氷と同じような原理だから、ローズちゃんも聖火を覚えたらできるわよ」
「なるほど!」
「ここまで成長するとはルドはさすがだな!がはは!」
「父様今は僕じゃなくてエキドナの話でしょ?」
「そうだったな!」
そんなこんなあってパーティーは終わりを告げた
「いつの時代も祭りってのはいいものだねぇ」