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火魔法は発展のための燃料

作者: rrr

火魔法って冷静に考えると戦争であんまり役に立たないしハズレかなぁと思ってましたが、経済的なメリットが大きいことに気付いたので書いてみました。

火の魔法、使ってみたいですよね。手元で炎を操る様は絶対かっこいいと思います(小並感


さて、実際に魔法があり、炎を操る事が出来た場合それが文明/国家にとってどう役立つのか考えてみました。

あと、恐縮ですが土魔法は国家の礎というエッセイで実際に土魔法があったらどう使われるかなんて書いてます。恐縮ですが前提としてそちらのエッセイの内容を含みます。



まず検討するにあたって火魔法の前提を共有しましょう。

①手元もしくは自分の周囲に燃える炎を作ることができる

②調整次第で燃やすだけでなく爆発を起こすことができる

③自然の火(熱エネルギー)に対してある程度の操作が可能


こんなものでしょうか。作品によっては大爆発を起こしたり火炎放射のような魔法が作られていたりしますね。あとは火を矢や槍の形にして相手に投射するというのもあるあるでしょうか。まぁ作品によって程度の差はあれど最低限火(熱エネルギー)を生み出せるものとします。



さて、そんな火魔法は人の営みの中でどのように活用されるでしょうか。


なろう作品ではよくある活用方法に戦争での兵器利用がありますね。火は人の根源的な恐怖を煽りますし、実際火に巻かれると人は簡単に死にます。しかしそれは果たして他にも土や風、水の魔法がある世界でも有効なのでしょうか。…おそらくそれほど便利なものではないです。この辺りは[土魔法は国家の礎]をご参照ください。


ただ、燃料無しに火を扱えるというのは何でもありの戦争ではかなり恐ろしい話です。策源地に対するテロ的な攻撃は恐ろしいほど有効でしょうね。



向かい合っての戦場での兵器利用としてはそこまで役に立たなそうな火魔法は何に役立つのでしょうか。

まぁまず間違いなく燃料無しに火を扱えるという一点でものすごく便利なんですね。


戦争の話をしていたのでそのまま続けますが、煮炊きにつかう燃料(木材/炭)を節約出来るというのは兵站に素晴らしく寄与します。なんせ火が使えない環境では生で食べ物を食べるしかなく、それは時に兵士の体調を著しく損ないます。時期によっては暖房が必要な時もあります。つまり兵站が不安定な場所で燃料としての木材需要を軽減することができるわけですね。


まぁ…ぶっちゃけ戦場の兵站うんぬんというのは割とどうでもいいです。水魔法も土魔法もある世界なので兵站事情は史実よりもかなり良いはずですからね。何よりも重要なのは、火魔法が燃料としての木材需要を軽減することができる事です。これについて考えていきましょう。



とりあえず結論を述べると、火魔法は国家の発展には欠かせない存在なんですね。





まず最初に木材というのを皆さんどうお考えでしょうか。史実の中世以前の文明にとって木材というのは必要不可欠な物です。

どのくらい必要かというと人間で言うと食事と同じです。無ければ死にます。


経済は国家の血とか言ったりしませんか?その経済を回すのに必要な流通を支えている馬車だったり荷車だったり船は木材で出来ていました。


では経済を成す消費者たる国民にとってはどうでしょうか。住宅の建材には木材も利用します。身近な日用品もその殆どが木材製です。食事の煮炊きをするのに使う燃料ももちろん木材です。

 ※燃料としては泥炭もありますが地域によるので割愛します。


では生産者たる国民にとってはどうでしょうか。陶器や磁器、貴金属、鉄の精錬には燃料としての木材(炭)が、一次産業で使う道具にも多くの木材が使用されます。インフラ工事にも建材や建築機材の材料として木材が必要不可欠です。



つまりは燃料であり、建材であり、材料である木材が無くなったら文明は維持できないわけです。



古代の文明は森林がそこら中にある肥沃な土地に生まれ、発展していくうちに周囲の木材資源をどんどん消費します。ある程度文明が育ってくると都市周辺から森林が無くなりますので、今度は近隣諸国から輸入するようになります。しかし木材のコスト増はありとあらゆる物のコスト増に繋がる為に遅かれ早かれ生産活動は滞って経済が低迷し、社会の混乱を招きます。


森林を失うというのは連鎖的に人が営むのに必要な物を失うことに繋がるわけです。


史実にも木材が確保できなくなったため亡びたり別の土地に移り住んだ文明があります。ある文明は征服により森林を得て延命したものの、最後は燃料としての木材が不足して経済の低迷を起こし、社会の混乱により崩壊していきました。




前置きが長くなりましたが、火魔法があればこの一連の流れを相当に抑制することができます。具体的には人が生きるために必要となる燃料としての木材消費と経済活動(貴金属、鉄)に必要となる燃料としての木材消費のなるべく多くを火魔法で代替することで木材消費を抑えることができます。(鉄の精錬には炭素がいるので多少炭が必要になるかもしれません。それは作品ごとの設定次第になりますが。)

人が増えても燃料としての木材消費が大きく増えないということであれば、あとは水資源をどうにかできれば異世界では史実よりもはるかに人口を蓄えた都市を形成できる可能性があります。水資源についても魔法がありますからね、土魔法で用水路などのインフラ工事をして、それでも足りない分は水魔法でどうにかするなんてこともできるかもしれません。そのためメソポタミアや古代ローマのように文明が途絶えてしまうという事も起き辛いと思われます。


そしてこれが火魔法が存在する事の最大の影響になりますが、金属の精錬に燃料の制約が無くなるという事が国の発展に多大な影響を与えます。


鉄や貴金属の精錬に木材(炭)を燃料として使っていた史実の時代では一か所での生産量にある種の制限がかかっていました。鉱山でも木材が無尽蔵に手に入るわけではありません。もとは緑豊かな山であっても、精錬のために周辺の木は軒並み斬り倒されて利用されます。周辺から木が無くなればそれだけ燃料にかかるコストは上がっていきます。


史実の鉱山では炭を作るなり、輸送してくるなりした際の燃料代を考慮して精錬前の鉄鉱石そのものを売ることもしていました。市場に鉄鉱石が流れるため鉱山を持たない都市や国でも木材や食料を売った金で鉄鉱石を購入して自分達で鉄を精錬するという事ができました。


では火魔法を燃料に使えるとどうなるかというと、史実における燃料コストに起因した問題が大きく解消されるため、鉱山の価値というのは青天井に上がります。鉄を安く大量に手に入れることが出来るというのは魔法がある世界においても間違いなく国を豊かにします。武器防具に加工すれば軍事的に、民生品でも鉄製品の製造業で経済は潤い、加工技術の進化はさらなる発展を可能にします。精鉄が活発になることで冶金技術の発展も期待でき、発展した冶金技術は鉄製品の生産性や質の向上につながります。鉄製道具の普及は農業をはじめとしたありとあらゆる生産効率を大幅に押し上げるでしょう。また、精鉄や生活の木材需要が減ったのなら、より安価に木材を利用できます。


ついでに言うと土魔法があるので鉱山は未熟な道具や技術しかない時代でも大量採掘が可能になるでしょう。史実よりも効率的に大量の鉱石を算出し、それを低コストで精錬出来るならその利益がどこまで増えるのか計り知れません。


自国の鉱山の麓でまとめて鉄インゴットや鉄製品を生産できるため、それらがどこに流れていくかを国が管理する労力も大幅に減ります。どこに流通させるかを管理することも出来るのです。



一方で鉱山を持たない国家ではどうなるかというと鉄鉱石を輸入して国内で鉄製品が作れないなら、鉄製品を他国から買うしかありません。購入出来ても値段は売り手次第ですし流通量を握られる立場になります。そもそも鉄製品を売ってもらえないかもしれません。史実では重要な交易品であった木材は交易品としては弱く、富の流出を抑えるのは史実よりもはるかに難しくなります。鉄製品の普及の遅れはそのまま生産力で劣ることに繋がり、交易品の生産力が劣れば市場競争で苦境に追いやられます。


結果として鉱山を所有している国家とそうでない国家の経済格差はずるずると広がっていくことになります。


差が付くのは経済だけではありません。鉱山資源が豊かな国は軍事力で他国に優位に立ちます。軍事的に優位になるという事はつまりそう、侵略が始まりますね。仮に侵略をしなくても史実よりも莫大な利益を産む鉱山を求めて他国から戦争を吹っ掛けられるなんてこともあり得ます。


戦争は恐ろしいものですが、幸いなことに土魔法があればインフラ工事はお手の物ですから国境線は城壁と砦だらけになります。経済のために土魔法で国内の交通インフラを整えたなら国境はガチガチに固めるしかないのでほぼ間違いなくそうなります。最前線に近い都市では農耕地までも城壁で囲うこともできるかもしれません。灌漑などのインフラを整えられるので人口も良く増えるでしょうし、それはもう血を血で洗う凄惨な戦いになりそうですね。


ただしそれを迅速に出来るのは国力が豊かな国に限った話になります。鉱山を持たず、国力が周りに劣る国家の国境整備は何手も遅れるでしょうし、周りの国家はわざわざ整備が終わるのを待ってはくれないでしょう。


鉱山が無いならと懸命に国内を調査して見つけたとして、どうなるでしょうか。自分達よりも発展が遅れている国で鉱山が見つかったのならば、既に鉱山を所有して発展した国家がどういった対応をするかはわかりきっていますね。





さて、つらつらと書き連ねてきましたがこんな感じの鉱山の有無での国力の差が産まれて戦乱の時代になるのはナーロッパと呼ばれるなろう作品あるある中世よりもだいぶ前の時代になります。そういう意味ではなろう作品の舞台になるナーロッパの時代は上述の鉱山の有無による弱肉強食の戦乱の時代が落ち着いて文化的な発展が十分に進んだ頃になると思います。


ということでナーロッパの世界には一つの大陸に国が多くても5個しかない理由が判明しました。古い時代に露天掘りできるような手軽な鉱山を早々に見つけていた国家が鉱山を見つけられなかった国家を吸収していくため、一つの大陸にその程度の数しか国家が残らないんですね。そういったお手軽な鉱山がその大陸に少なかった場合は、あっさりと大陸が統一されたり、なぜか真ん中で二分することになるわけです。


そしてある程度各地で国家の統合が進むと今度は国土を求めて他国の強固な国境線を抜く必要のある戦争をするよりも増やした国土の中で新たな鉱山の開発、農耕地の開拓、交通インフラや治水工事等の戦争中はなかなかリソースを避けなかった事業を積極的に行いたいと考えるようになるわけです。


つまり戦乱の時代が終わり、平和が訪れるわけです。そうなると今度は文化的な発展が始まります。土魔法を用いた土木工事で国内の交通インフラが整えば国家の中心部となる首都と地方都市の間で活発に人が行き交い、それが農村にも広がることで史実の世界とは比較にならない速度で農村でも経済と文化が成長します。



さて、史実中世の時代は農村の人々は生きるために必要なカロリーがなかなか取れず基本的に痩せていました。砂糖が薬として取り扱われる程にカロリー不足の人がいたんですね。なので農村で生活する女性はガリガリで体格も胸も小さく、脂質やタンパク質の接種も頻繁には出来ないでしょうから肌はカサカサ髪もパサパサの人ばかりです。一方貴族の女性はカロリー的に問題なく脂質やタンパク質も豊富に取れるので農村の女性と比較したらそれはもう天と地ほどの容姿の差があり、それもまた貴族の権威というのを高める一因になっていました。


しかし火魔法によって広く普及した鉄製品と発展した経済によりナーロッパの時代では農村の村人であってもしっかりとカロリーを摂取することができるようになりました。そうした生活の余裕は人々の素養を育み、文化的な人柄を育むわけですね。


結果としてナーロッパの時代では農村であっても素性の知れない人間に対して即排除するでもなく対話から交流が始まり、時には保護までしてくれる程に文化的な対応をしてもらえるわけです。さらに農村でありながら飽食に慣れた現代人からみても魅力的な女性というのが存在できるんですね。


ナーロッパというある意味で理想的な中世の世界の成り立ちに火魔法が大きくかかわっていることは疑いようが無いわけです。火魔法万歳!!!!!

結局史実でも異世界でも資源のある土地に出来た国家が勝つんですよ

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― 新着の感想 ―
[一言] 自分も考えたことがあります。火魔法の使い手、戦争なんかより人間炉として使って、製鉄するな、と。何人もの火魔法の使い手集めて、火力上げて、道具作って、「邪魔」な木々・人間を切り倒し、土魔法・水…
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