第5話
フランクはロザリーに、パーティへの加入の仕方もあって、冷たく当たっていた。
それを知らないデビッドは彼女を気遣い、2人は仲良くなる。
フランクとオリバーは、それが気に入らない。
そして、自分たちより仕事が出来ないデビッドに、面倒事を押し付けていた。
結果が、これだった。
ロザリーの家に、急いで2人は行った。
もちろん抗議をするためである。
「誰のおかげで、Aランクパーティになれたと思ってるんだ!」
いきり立つ彼らに、彼女は冷たくいった。
「恩着せがましくいわないで! 能なし扱いばかりしてたクセに! 力が付いたら、アンタらみたいな二流冒険者と組んでる意味ないでしょ!」
「ギルドに訴えてやるぞ!」
「平民のアンタらが? 貴族のデビッドを訴えるの? 正気?」
「ぐッ…」
「もう話すことなんてないわ! 帰って!」
それでもじっとしている彼らに、彼女はいった。
「帰れッ!!」
これ以上何ができるというのか。
彼らは、またCランクに逆戻りだった。
下っ端冒険者として、有力パーティに雇われる毎日。
今回のことは、さすがに堪えた。
転職も考えた.
だが、オリバーに反対された。
彼には借りがある。
それに、フランク自身にも今さら別の職業をするだけの踏ん切りはつかなかった。
救いだったのは、下っ端冒険者時代の仲間が、割のいい仕事を回してくれたことだ。
上位クラスパーティの一員になった彼らは、フランクたちを下請けに加えてくれた。
懐が温かくなることで、何とか気持ちを奮い立たせることができた。
「結局は、地道に頑張るしかないんだ…」
初心に戻って、必死で依頼をこなした。
そんなある日。
クエストに向かった森から、女が出てきた。
よく見ると、ロザリーである。
ボロボロの格好だ。
魔物に襲われたらしい。
フランクは無視しようとした。
それでもロザリーは声を上げた。
「助けて… お願い…」
「え?」
「おまえ… オレたちにしたこと、覚えてるよね? どういうメンタルなの?」
「他に人がいたら、頼むわ… でも今はアンタたちしかいないでしょ…」
「……」
「お願い…」
顔を見合わせていたフランクとオリバーだったが、諦めたようにため息をついていった。
「どこ?」
彼女は信じられなかったのか、なにもいえなかった。
「早くいえよ! どこだよ!」
ロザリーは指をさしていった。
「森の奥よ! 急いで!」
フランクたちは、走り出した。
ロザリーがデビッドの所に戻ると、魔物はすでにフランクたちに倒されていた。
ケガを負ってはいるが、元気そうなデビッドを見て、彼女はホッとして、ひざからくずれ落ちた。
「ありがとう… 本当にありがとう…」
フランクは努めて冷静を装ってこういった。
「あとで報酬をいただきますから…」
立ち去ろうとする彼に、ロザリーは意を決していった。
「アンタたちが! アタシたちへの態度を改めるなら、もう一度パーティに入れてあげてもいいわよ!」
フランクは、ニヤリとしていった。
「おまえがヤラしてくれるなら、考えてもいいけど…」
ロザリーが、蔑んだ目で彼を見た。
「アハハッ! 命の恩人にッ! その顔ッ!!」
フランクは彼女を指さして笑うと、
「…じゃあな」
と去っていった。
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