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平民冒険者はツラいよ  作者: きだおさむ
4/5

第4話

ある日ギルドに行くと、どこかで見たような女がいた。

治癒士らしい。

よくよく見ると、以前入ったことのある風俗嬢だった。

「おまえは… たしかアイラ!」

「その名前で呼ばないで!」

フランクをギルドの隅に連れていくと女はいった。

「アタシの本名はロザリー。お店で稼いで魔法学校で勉強して治癒師になったの」

「へえ…」

「フランクさん、Sランク冒険者なんでしょ。いいパーティ紹介してくれない?」

フランクはギクリとしたが、本当のことはいえない。

「そうだな… 考えとくよ…」

「そんなこといって、放っておくつもりでしょ! ねえ、フランクさ~ん」

「いやいや…」

「Sランク冒険者でしょ~」

そばで聞いていたオリバーが反応する。

「なにいってるんだ? フランクはCランクだぞ」

「ちょっ! おまえッ!」

ロザリーがいった。

「うわー! サイテー! いるわー、風俗でウソつく人ー!」

「だいたい、みんなそうだろ}

「みんなに、いってやろー」

「やめろよ、おまえ」

「アタシさ、学校出たてだからか、誰もメンバーに入れてくれないのよ」

「そりゃそうだ。経験のない治癒士なんて、役に立たないからな」

「でも良かった。フランクさんはパーティに入れてくれるんだよね?」

「は?」

「いいのかなあ、入れなくて? お店にバラされてもいいんだ? アタシって口軽いからなー」

「クソ! 風俗嬢にロクなヤツいねえ!」


しぶしぶフランクは、ロザリーを仲間に入れた。

いつ辞めてもいいと思っていたフランクは、初めは報酬も少額だったが、だんだんとロザリーは冒険者パーティの治癒士として力を付け、新しい魔法も熱心に勉強したので、報酬も人並みになっていった。


自分のパーティに治癒士がいれば、戦いでも多少のムリができる。

受ける依頼も、上位になっていく。

ここで再びフランクの前に立ちはだかったのが、貴族の壁である。

実力も上がって来たのに、ランクはB止まりだった。


フランクはロザリーに、貴族でソロ冒険者のデビッドを仲間に引き入れるように指示した。


「でもどうやって?」

質問してくるロザリーに、フランクはいった。

「得意の色仕掛けで、何とかしろ!」


その色仕掛けも、必要ではなかった。

ソロ冒険者として伸び悩んでいたデビッドは、あっさりパーティに加わったのだ。

デビッドをリーダーとして、新しいパーティの一員となったフランクは、念願のAランクに昇格した。


そして、デビッドは、剣士としては優れていたが、冒険者としては二流だった。

フランクは、彼に冒険者としての知識を与えた。

デビッドは素直な性格だったので、すぐに冒険者としての力を付けた。


「最近、暴れてるそうじゃないか」


昔の下っ端冒険者仲間に、そういわれるようになってきた。

周りの人々は、パーティの実質のリーダーはフランクと思っていたし、彼自身もそのように考えていた。


「どんな依頼でも、この4人なら攻略できる!」


フランクは、そう思うようになっていた。


ある日、ロザリーが、神妙な顔をしていった。

「フランクさん… あなたには感謝してるわ。あなたのおかげで、アタシは一人前の治癒士になれたから… 本当にありがとう」

照れたフランクはこう返した。

「これからも鍛えてやるよ」

「はいはい…」

彼女も笑って受け流した。

フランクは思っていた。

「もうSランクも夢じゃない」


だが、その次の日である。

フランクは、ギルドで、自分とオリバーがパーティを除名されたことを知った。

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