第4話
ある日ギルドに行くと、どこかで見たような女がいた。
治癒士らしい。
よくよく見ると、以前入ったことのある風俗嬢だった。
「おまえは… たしかアイラ!」
「その名前で呼ばないで!」
フランクをギルドの隅に連れていくと女はいった。
「アタシの本名はロザリー。お店で稼いで魔法学校で勉強して治癒師になったの」
「へえ…」
「フランクさん、Sランク冒険者なんでしょ。いいパーティ紹介してくれない?」
フランクはギクリとしたが、本当のことはいえない。
「そうだな… 考えとくよ…」
「そんなこといって、放っておくつもりでしょ! ねえ、フランクさ~ん」
「いやいや…」
「Sランク冒険者でしょ~」
そばで聞いていたオリバーが反応する。
「なにいってるんだ? フランクはCランクだぞ」
「ちょっ! おまえッ!」
ロザリーがいった。
「うわー! サイテー! いるわー、風俗でウソつく人ー!」
「だいたい、みんなそうだろ}
「みんなに、いってやろー」
「やめろよ、おまえ」
「アタシさ、学校出たてだからか、誰もメンバーに入れてくれないのよ」
「そりゃそうだ。経験のない治癒士なんて、役に立たないからな」
「でも良かった。フランクさんはパーティに入れてくれるんだよね?」
「は?」
「いいのかなあ、入れなくて? お店にバラされてもいいんだ? アタシって口軽いからなー」
「クソ! 風俗嬢にロクなヤツいねえ!」
しぶしぶフランクは、ロザリーを仲間に入れた。
いつ辞めてもいいと思っていたフランクは、初めは報酬も少額だったが、だんだんとロザリーは冒険者パーティの治癒士として力を付け、新しい魔法も熱心に勉強したので、報酬も人並みになっていった。
自分のパーティに治癒士がいれば、戦いでも多少のムリができる。
受ける依頼も、上位になっていく。
ここで再びフランクの前に立ちはだかったのが、貴族の壁である。
実力も上がって来たのに、ランクはB止まりだった。
フランクはロザリーに、貴族でソロ冒険者のデビッドを仲間に引き入れるように指示した。
「でもどうやって?」
質問してくるロザリーに、フランクはいった。
「得意の色仕掛けで、何とかしろ!」
その色仕掛けも、必要ではなかった。
ソロ冒険者として伸び悩んでいたデビッドは、あっさりパーティに加わったのだ。
デビッドをリーダーとして、新しいパーティの一員となったフランクは、念願のAランクに昇格した。
そして、デビッドは、剣士としては優れていたが、冒険者としては二流だった。
フランクは、彼に冒険者としての知識を与えた。
デビッドは素直な性格だったので、すぐに冒険者としての力を付けた。
「最近、暴れてるそうじゃないか」
昔の下っ端冒険者仲間に、そういわれるようになってきた。
周りの人々は、パーティの実質のリーダーはフランクと思っていたし、彼自身もそのように考えていた。
「どんな依頼でも、この4人なら攻略できる!」
フランクは、そう思うようになっていた。
ある日、ロザリーが、神妙な顔をしていった。
「フランクさん… あなたには感謝してるわ。あなたのおかげで、アタシは一人前の治癒士になれたから… 本当にありがとう」
照れたフランクはこう返した。
「これからも鍛えてやるよ」
「はいはい…」
彼女も笑って受け流した。
フランクは思っていた。
「もうSランクも夢じゃない」
だが、その次の日である。
フランクは、ギルドで、自分とオリバーがパーティを除名されたことを知った。