第3話
小さな依頼をこなす毎日。
フランクは、風俗に入れ込んでいく。
「仕事にやりがいを見い出せないのなら、せめて己の欲望を満足させるんだ!」
そう思って、彼は風俗店の常連となった。
「こんなに通って、お金は大丈夫なの?」
「大丈夫。オレ、Sランクなんで」
彼は風俗嬢にウソをつき、性欲を満たそうとした。
「Sランクなの? じゃあどんな大事件を解決したの?」
「大事件になる前に解決するのが、本物のSランク冒険者さ!」
何度もウソを重ねるうちに、巧妙になっていく。
風俗店にいる間は、自身でもSランク冒険者ではないかと思うほどだった。
しかし、それも虚しい。
しょせん爪を切ったり清潔にしたところで、風俗嬢に嫌われはしないとしても、ホレられることはないのだ。
やめなければと思いつつも、気が付けば風俗街に足が向かう。
ギルドでは、昔の下っ端冒険者だった仲間たちは、上位ランクパーティのメンバーになっていく。
生涯下位パーティの刻印を受けたフランクは、このまま冒険者を続けるべきかと迷うようになった。
「あんなに嫌いだった農民でも良いんじゃないか? このままよりは…」
冒険者としてダメなら、やめればいいのだ。
残酷だが事実である。
冒険者をやめて農家に転職した仲間がいた。
結婚を機に、転職したという。
オリバーと一緒に家に押しかけて、酒を飲ませてもらった。
可愛らしい嫁が、夫に酒を注ぐ。
この嫁のためになら、農民もやっていけるのかもしれない…
そんなことをぼんやりと考えたが、フランクには彼女もいないのだ。
そんなことを思いながら仕事をやっていたせいか、ある日フランクは依頼で大ケガをしてしまった。
なんとか町まで生きて帰ったが、応急処置で金が尽き、治癒士の回復治療を受けようにも金がない。
粗末な家で一日中横になり、自然に治るのを待つ毎日。
同居のオリバーは、一人で依頼を受けたり、上位パーティの下請けに参加して、フランクを支えた。
フランクは、オリバーにそれほどの仲間意識を持っていなかったので意外だった。
今まで乱暴な扱いをしてきたことを後悔した。
オリバーは参加したパーティの話をフランクに聞かせた。
いま参加しているパーティのリーダーがいかに優れているか。
とてもすばらしい人格者で、どんなに紳士な貴族かと。
「オマエが治ったら、パーティに参加させてもらえるように頼んでやるよ」
フランクは、そんな貴族がいるのか、と思って驚いた。
彼の知る上位クラスの大御所パーティのリーダー貴族は、下っ端冒険者をゴミとしか思っていない人間ばかりだったからだ。
しかし他の下っ端冒険者仲間に聞いてみると、それは全部ウソだった。
フランクが冒険者をやめないように、何か将来の希望が見える話をしようとしていただけだったのだ。
オリバーはコツコツと金をため、フランクに治癒士の回復治療を受けさせ、冒険者に復帰させた。
迷いの残るフランクだったが、依頼を受けて金を貯め、オリバーに金を返すことはした。
金銭の貸し借りはなくなった。
しかし、人情の貸し借りでは、フランクはオリバーに大きな借りができたのだった。