第1話
よろしくお願いします。
フランク・ハットンが、冒険者は覚悟がいる職業だと気づいたのは、仕事を始めてからだった。
彼は、しがない小作人の父親のもとに生まれた。
真面目な父親は、一日休みなく働き続けたのに、生きていくだけで精一杯の小作料しか得られず、生活していた。
地主はそんな父親をかわいがったが、フランクには、地主とって父親と家畜は同じ、としか思えなかった。
そして父親を軽蔑しきっていた。
ある日ふとした口論から彼は実家を飛び出し、流れ流れてナッシュの町にやって来た。
この町には冒険者ギルドがある。
冒険者は、彼の憧れの職業だった。
自分は、小作人の父親とは違う。
そして、父親と違う自分には、冒険者の素質がある…
彼はそう信じて疑わなかった。
ギルドで冒険者に登録をしたは良いが、それだけでは仕事はやってこない。
冒険者は、どこかのパーティに所属しなければ、依頼を受けることができないのだ。
右も左も全くわからない彼は、とにかく求人が出ているパーティに応募した。
「オマエら稼ぎたいんだろ? 付いてこいよ!」
その言葉についていくと、ロクに何も教えてもらえずに、囮ばかりに使われた。
下っ端冒険者の命など使い捨て、と考えているような連中だった。
生き残っても、
「オマエら、今日のギャラはいらねーだろ。ロクに働いてないし」
などといわれて、報酬は僅かばかり。
これなら小作人をやっている方が、死なないだけまだマシだ。
憧れの冒険者になれて輝いていたフランクの目は、次第に濁り、
「ダルいわー」
「金貸してくださいよー」
が口グセになっていった。
雇われ下っ端冒険者同士の仲間も出来てきた。
仕事が終わると、彼らと酒を飲み、愚痴をこぼした。
あのパーティは扱いがヒドいとか、このパーティは金払いが良いとか、と情報も教え合った。
そんな中で教えてもらった、金払いが良いというパーティに参加した時だった。
リーダーの男が、休憩中にフランクに話しかけてきた。
「オマエら、もうちょっと真剣に冒険者をやった方がいいぞ」
男はカーターといった。
父親も冒険者で、そのパーティを引き継いだのだ。
温室育ちと揶揄する者もいたが、誠実な男だった。
「オレら、真剣にやってますけどー」
「真剣じゃないだろ」
「……」
「さっき声出せっていったけど、出さなかったよな。何でだ?」
「すいませんでしたー」
「だからよ! そうじゃなくて!」
「?」
「あの場面、声出して連携していないと、人数いる意味がないんだよ!」
「はあ…」
「あの時は何処に誰がいて、ちゃんと確認できてるか、わかってないとダメだろ?」
「……」
「こっちは一つ一つにちゃんと意味があって指示してるんだから、いわれたことはやれよ」
「はあ…」
「別にいいけどさ。それを考えて仕事しないと、上へ行けねえぞ。ずっと下っ端で人生終わるつもりか? もっと上を目指せよ」
フランクは仕事が終わってからも、そのことを考えていた。
彼は今まで、真面目にやることを拒否してきた。
カッコいい冒険者である自分が、チマチマした小作人の父親がやるような方法で仕事をするもんか、と思っていたからだ。
しかし、小作人も冒険者も同じだった。
やらなければならないことはあり、それをやらないものは上達しないのだ。
それから彼は、冒険者として真剣に取り組むようになった。
挨拶もしっかりして、指示されたことは必ず対応するようにし、率先して動き、ウソも虚勢もやめた。
すると、パーティから参加依頼が来るようになった。
重要な仕事を任されるようになり、報酬も上がった。