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欲望の化身  作者: 鳥串砂肝
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第2話マンチンという化身 part3

マンチンが勝乎の通う学校に行く話です。

サバイバルスキルの話も出ます。

ちなみに、2000年代前後位の時代背景をなんとなくイメージして書いております。

現実世界?似ている世界かな?。

今回もよろしくお願いします。

第2話マンチンという化身  part3


キーンコーンカーンコーン・・

キーンコーンカーンコーン・・


ガラッ・・。


教室の引戸が開き、担任の教師が教壇に歩いて行く。


「起立、礼。」


「「おはようございます。」」


「着席。」


勝乎とマンチンは学校に来ていた、勝乎の出席日数を維持する為に、本来、人目に付く学校は避けるのが無難ではあるが、勝乎の将来にも関わる重大な事態、他の化身や依存者の都合上、パートナーであるマンチンも共に登校していた。


正直マンチンは、学校にそれ程の意味があるとは、これっぽっちも思っておらず、退屈しかけていた、辺りを彷徨いたり、周りには聞こえないが、口笛を吹いたり、机の上を走り回ったり・・。


(・・おい、マンチン!机の上に登んな!周りの人間には見えねぇかもしんねぇけど物音や気配には気付かれちまうかもしんねぇからな、あんまり身動ぎすんなよ・・。)


契約した化身と依存者は、脳内会話(シンパシー)が可能で、これは勝乎とマンチンが融合しなくても行える、契約を結んでいれば・・。


他のパートナー同士にも言える事だが、各パートナー同士の契約状況にもよるが、ほぼ全てのパートナー同士が声を発せずに、念話の様なコミニュケーションが取れる。


これが出来ないのは、寄生型の化身と寄生された依存者の場合である。


(うん、大丈夫だ、俺の在明不可視(ノビシブル)は高レベルだ・・まず他の依存者には見つからない、お前の魔羅も抑えてるから心配すんな、うん。)


(それでもだよ、見えて無くても、気が気じゃねぇんだよ・・まぁ、今日は伊勢原休みみてえだし、構わねえんだけどな、あんまり物音は立てんなよ、それにしても・・なんだありゃあ?。)


窓の外、S湾を眺めると、沖合いに昨日まで無かった・・イヤ、見えていなかったものが見えていた。


光の柱だ、天まで届かんとする眩しい光の柱だ、なんなのだろう?あの光の柱は、周りの生徒は何も言わないし、騒ぎもしない、昨日までの自分同様、見えてないのだろう、つまりは、化身とあの柱は、何かしらの関係があるのだろう、あれこれ思案を巡らせていると・・。


「ゴホン・・。」


担任の咳払いに、慌てて教壇に向き直る勝乎、蟀谷を掻きながら。


「・・今日は伊勢原は休みの様だな・・他には休みは居ないな、しかし、伊勢原が休むとは珍しい、誰か連絡は受けていないか?。」


担任が教室内を見回した、が生徒は皆首を傾げた。


「よし、わかった、ホームルームを始める、先ずは先週配ったプリントだが・・。」


何時もの様に、朝のホームルームが始まった、担任が淡々と連絡事項を告げていく、それを生徒達は黙って聞いている、マンチンは担任と生徒達を交互に見ながら念話で勝乎に聞いた。


(うん、なぁ勝乎・・学校って何かつまんないな、本当に行かなきゃならないのか?うん。)


(当たり前だ、出席日数ヤバイんだから・・まぁ、俺だって出来れば面倒臭い学校何て行きたくねぇよ。)


(うん、出席日数だかが足りなくなると、もう1年いなくちゃいけないって話だったな、相変わらず人間って大変だな・・ルールが厳しくて・・なんかやだな、うん。)


(だなぁ、まぁ・・規制や規律が有るから人間は成り立ってる訳だし、まぁ、多少は仕方ねぇよな。)


(うん、お前が出席日数足んなくなんの分かる気がする、俺もこうやってジッとしてんの苦手だから、俺が人間でここの生徒だったら、間違いなく行かなくなって足んなくなるな、うん。)


(そうだな、お前落ち着き無いもんな、まぁ・・もしもの話だがな、退屈でどうしようもないだろうが適当に堪えてくれや。)


(うん、頑張ってみる・・うん。)


ホームルームが終わり、一時限目の授業の仕度をしていると、担任の教師が昨日同様勝乎に近付いてきた・・。


「三浦、昨日の件だが、親御さんに書類を渡し、報告はしてくれたか?。」


担任が確認の為、聞いてきた。


「ええ、一応報告して書類も渡しました、やっぱまだ其方に連絡寄越してないですか?。」


「ああ、まだ親御さんから連絡は受けてない・・、まぁだが、旨が伝わってるなら構わない・・邪魔をしたな・・。」


「いえ・・大丈夫っす、今日家帰ったら改めて確認しますんで、すいません。」


教室を出る担任の背中を眺めつつ、勝乎は憂鬱になってきた。


(・・・帰ったら啓子さんにもう一回頼まねぇとな、はぁ・・億劫だ。)


(うん、なぁ勝乎、あのメガネ掛けたオッサンが学校の先生って奴か?うん。)


(ん、ああ・・そうだよ、それがどうした?。)


(うん、何かつまんなそうな男だな・・お前の隣の席の人間は居ないのか?うん。)


(隣?、ああ、伊勢原か・・、そういえばアイツが学校休むなんて本当に珍しいな、つーか始めてかも・・休むの。)


(うん、イセハラ?・・どんな奴だ?。)


(女、つかみ所が無くてよく分からねぇ奴だよ、・・まぁ乳でけぇけどな・・。)


(うーん、女か・・そのイセハラだかはお前の目から見てかわいいのか?、うん。)


(伊勢原かぁ・・結構かわいいぜ・・男子に密かに人気があるんだ・・スタイルも中々に良いし。)


(うん、そうか・・会えなくて残念だ・・うん。)


(それよりよ・・、あの光の柱はなんだよ?学校に着いてから、窓見たらいきなり現れてたからビックリしたぜ・・、なんか知らねーか?。)


(うん?あー・・、あの柱は俺達化身の・・。)


キーンコーンカーンコーン・・

キーンコーンカーンコーン・・


予鈴がなった・・。


(うん?、時折鳴るこの音はなんだ?勝乎、うん?。)


(予鈴だよ、一分前の・・まぁ、簡単に言うと、そろそろ授業が始まりますよって合図だ。)


一時限目の授業が始まった、柱の話は終わってしまった、ものの数分、退屈な授業を耐え抜くにはマンチンは我慢が足りなすぎた、案の定、教室内を再び彷徨きだした。


(おい、あんまりうろちょろすんなっつったろ・・!?ちょっ、まっ!?。)


ボトッ・・バサバサ・・がっしゃん!!。


マンチンは、他生徒の机の上を走り回り、跳びはね、教科書やノート、筆記用具を床に落とし、散乱させていった・・。


「なんだ?、僕の教科書が独りでに落ちた・・!?。」


「きゃあぁぁー、何なのー!?、風!?。」


「おいおい、勘弁してくれよ・・窓際の奴ら窓閉めてくれよ!。」


「こらぁ!、騒ぐんじゃない!何をやってるんだぁ!?授業中だぞ!?。」


教室内が騒然としている、勝乎は肝を冷やした、校内に化身も依存者も居ないとはいえ、わざわざ騒ぎを大きくするなど・・、この時代は携帯電話やパソコン等から、情報が拡散する可能性のある世の中だ、いつ何時、都合の悪い情報が流出してもおかしくないのだ。


今が正にそれである、普通の人間には視認出来ないとはいえ、今のこの教室内を動画撮影されでもしたら・・、拡散し、その動画が契約した依存者や化身の目に触れれば、自身等の個人情報が知れてしまう可能性が高い、そうなれば無関係な学校の教職員や生徒、さらには、自宅まで探られれば、啓子や透にも危害が及ぶ可能性すら有る、勝乎は強い口調でシンパシーを送った・・。


(おいマンチン!、マジで止めろ!!てめぇ!!大人しく座ってろぉ!!。)


(うん、いひゅひゅひゅ~、楽しいなぁ~それぇ~、うん。)


バサバサ、がしゃん!


・・聞く耳持たないマンチン、さらに行動はエスカレートしていく。


教壇に跳び移り、そのまま世界史の男性教師の頭の上に跳び乗った・・が。


ズルッ・・、


マンチンは着地に失敗した、男性教師の尊厳、フワッフワのズラが教壇の卓上に


ポトッ、


と、静かに落下した・・。


教室内が凍りついた、誰独り声を挙げられずにいた。


ズデンっ!


「いてぇ!。」


マンチンは勢い良く落下した、その音を聞き、教師が恐る恐る音がした辺りに手を伸ばした・・、それを見たマンチンが、急いで教室の入口まで跳んだ、そしてそのまま。


ガラッ・・。


教壇側の引戸が、独りでに開いた、マンチンは、リードが外れた犬の如く、教室を出ていったのだった。


(げぇぇ~~!!?ちょまっ、おぉい!・・聞こえてるか!マンチン!?大人しく戻ってこい!おい!?。)


(でひょひょひょ!!うん、長い廊下だなぁ~!うんうん!。)


聞いちゃいない・・、マンチンにまさかこんな一面があるとは、勝乎はマンチンの暴走を止める為、少し声のトーンを落とし、シンパシーを送った。


(おい、マンチンお前、あんまりおいたが過ぎると、もう一緒に戦ってやんねぇぞ、お前言ってたよな?・・相互協力が不可欠だって、こんな悪戯ばかりしている奴と、協力なんて出来ねぇよな?普通に考えたら、なあ?。)


ピタッ・・。


脱走犬の進行が止まった、マンチンはその場で暫く静止した、そして、踵を返し、口笛を吹きながら勝乎の元に戻っていった。


開きっぱなしの引戸の隙間から、トコトコ歩いて教室内に戻ったマンチン、教室内はまだ沈黙の状態だった。


戻ってきたマンチンに、目を三角にし、怒り顔の勝乎、マンチンは勝乎を怒らせてしまった、少ししょぼくれながら、伊勢原の机に登った。


(・・うん、ゴメン勝乎、ついはしゃいじまった、二度と学校ではこんな真似しないよ、うん。)


(・・俺も少し言い過ぎたよ、ただ、念には念をだよ、相手に存在を悟らせない為にノビシブル?だっけ、使ってんだろ?目立たないのが得策だからな、せっかくバレない状況作ったのに自分でそれを崩してどうする?。)


(うん、そうだな、俺、勝乎が通ってる学校って考えたら、いてもたってもいられなくなって、悪かった、うん。)


2人は仲直りした、勝乎の作戦勝ちである、2人が仲直りしたのと平行して、教室内も時間が進んでいった、今回の騒動の一番の犠牲者である男性教師は、何事もなかったかのようにズラを拾い、被り直し、生徒達に優しい眼差しで諭した。


「世の中は不思議な事だらけだな・・君達はこれからの人生で色々な事を学び体験し、成長していくだろう・・、今日起きた事もまた成長する為の体験だ・・今日という日を忘れないように・・さぁ!授業を再開しよう!。」


流石は教師、出来る大人の鏡である、止まった時間は動き出したのだった。


朝の怪事件が嘘の様に、その日の学校は平和そのものであった、時偶、マンチンがうずきだし、教室内を彷徨き回るが、勝乎に注意されていたので、机の上を飛び回る等の危険行動はせず、他の生徒や教師にバレる様な事はなかった。


なんとか1日を終え、下校する事が出来た、帰りの電車内でも、マンチンは暴走犬全快だった。


(おいマンチン、ノビシブルだか?ちゃんとやってんだな?本当に大丈夫なんだな?)


(うん、大丈夫だ、魔羅は完璧に消してるよ、彷徨ってる化身にも依存者にも俺は感知されてないから問題はない、ただ狭いな、人がいっぱいいるな、飛び跳ねて遊びたくなるな、うん。)


(絶対に止めろ、それとウロウロもすんなよ、他の乗客にバレちまうかもしんねぇだろ。)


(うん?・・なぁ勝乎、さっき教室でも思ったがこの女共、尻丸見えだぞ、うん。)


学生の帰宅時間は重なるもので、他校の生徒も沢山乗車していた、JKも。


(テメぇ!!何羨ましい事してんだよ!ぶっ殺すぞホントに!。)


(うん?、羨ましいのか?・・おかしな奴だな、俺達だって融合すると女になるってのに、うん。)


(それとこれとはまた違うんだよ!いいからこっちにこい!ウロチョロすんなよ。)


勝乎に怒られ従うマンチン、彼は賑やかな人混みが好きなのか、先程より楽しそうである。


(うん、なぁ勝乎、俺もっと走り回ったり飛び回ったりしたい、お前ともっと遊びたいんだ、うん。)


(駄目に決まってんだろ、さっきも言ったが万が一って事もありえる、監視カメラは車内だから大丈夫だろうけど、何処で何が作動してるか分かんねぇしなぁ、油断しないに越した事はねぇ、つーかお前らしくねえぞ・・。)


(監視カメラ?うん?、なんだそれ?、うん?。)


(ああ、やっぱり知らなかったか、監視カメラってのはな・・。)


勝乎はマンチンに、監視カメラや携帯電話の撮影機能、ビデオカメラ等、現代の情報漏洩が如何に容易いかを話した。


(うん!?、そうだったのか!?、この文明には事象を記録保存するだけの技術が存在していたのは知ってたんだ、まさか監視されてるなんて、うん。)


(記録保存だけじゃねぇよ、その記録を他の第三者に流す事だってできるんだよ、今朝テレビ見たろ?家のリビングに有るヤツ、あれもそうだぜ。)


(うん、テレビにはビックリしたよ、街中におっきな絵みたいな物が、動いたり変わったりするのを見た事あるぞ、やけにリアルな絵だと思った、うん。)


(多分広告塔だな、何れにせよ人物像であれ、商売の売り込みであれ、情報が簡単に発信されやすい世の中になりつつあるからな、俺も持ってるが、携帯電話もそうだぜ、メールや電話で近況を知らせる、これも情報だよな?メールに撮った写真なんかを、添付する事もできるんだぜ、昔は携帯電話は金持ちしか持てなかったらしいからな、それが数年前から一般人にもかなり普及してきてよ、俺もバイト代で買った次第だぜ。)


(うん?、つまり、ほぼ皆持ってるって事は、俺が教室内でやった事は・・?うん?。)


(そういう事、撮影された情報が流れて、その情報が他の依存者や化身の目に止まったら・・、ノビシブルだかを使ってても、生活圏がバレる危険も出てくるよな?。)


ぞくっ・・。


マンチンは背筋が凍り付いた、この世界に来て一週間、化身や依存者には細心の注意を払ってきたが、文明の利器には無関心だった。


かつての世界では、何かを記録する能力者は、居るには居たが、少数だった、しかし、この世界は場所によっては、そして人によっては、事象を記録する事が容易なのだと、今知ったのだ。


(おい、どうした?黙りこんで・・まさか寝ちまったか?。)


(うん勝乎、俺はどうやら本当の間抜けだった様だな、この世界に来てから、この世界での当たり前の常識すら理解出来ていなかった、こんなに細かく発展しているなんて、油断、情報不足だ、本当に恥ずかしい、迷惑かけた、うん。)


(らしくねぇよ、大人振りやがって・・さっきはあんだけ奇声あげながら走り回ってたじゃねぇか、まあ、映像がどうの言ったが情報技術が発展し始めたのだって最近じゃねぇかな・・俺の携帯、動画機能付いてない機種だし、最新のヤツなら付いてるかもって感じだからよ、教室での事はそこまで悲観する必要はねぇと思うがな。)


(うん、イヤ、それでもこの時代に流れてきた以上、この時代の事をよく知るべきだった、俺は知識不足だったよ、勝乎、これからお互い解らない所も出てくると思うから、お互い知恵を出し合おう、うん。)


(当たり前だろ、相互協力なんだろ?今さら何言ってやがんだ、んな事よりもよ、マンション戻って用事済ませたら、昨日逃がした依存者共を見つけて始末しちまおうぜ・・。)


(うん、そうだな、都合よく見つかるかは分からないが、先ず当面の目標は昨日逃がした依存者共を倒すことだな・・うん。)


2人は出会って1日しか経っていない、先日の同時刻頃、川岸で出会ってから、まだ1日である、まだまだお互いの事、お互いが足りていないもの、お互いに余りあるものを知ってもいない、これからなのだ。


2人は一応、警戒しつつ、自宅マンションまで無事に戻った。


ガチャガチャ・・ギィ・・


鍵を開け玄関の扉を開けた。


「ただいま。」


勝乎は靴を脱ぎ玄関を抜け、自室に入り、デスクの上にバッグを置いた、肩に乗っていたマンチンがベッドに降りた。


「うん、ふぅ~お前の部屋は何か落ちつくな、外もいいがこの部屋が一番だな、うん。」


「まぁ、俺の部屋、何もねぇからな・・悪いけど、少し待っててくれ、啓子さんがいたら話しつけちまうからよ。」


勝乎は自室を出た、廊下を歩きリビングへ、扉を開け部屋に入ると、啓子がソファに座り、テレビでニュースを見ている。


内容は、勝乎が住むY市にある、とある埠頭に有る倉庫郡で、大規模火災が起こったらしく、その速報である、かなりの規模で見ていて痛々しかった。


「ただいま啓子さん・・具合はどう?良く寝れた?。」


「お帰り、お陰様でかなり良くなったわよ、今朝はありがとうね。」


啓子の顔色は今朝より格段に良くなっていた、本調子とはいかないが話し位はできそうである・・。


「良かった、ずっと心配してたんすよ・・、顔色本当に悪かったから、食欲とかあります?なんか作りますか?。」


「ありがとう、けど大丈夫よ、さっき食べたわ。」


体調も機嫌も良さそうである、勝乎は唐突ではあるが、啓子に学校に連絡をしたかを確認する事にした・・。


「あの・・啓子さん、ちょっと言いづらいんですけど。」


「あんたの担任の先生には、さっき電話したわ、明日あんたも含めて放課後に面談ですってよ、感謝なさいな。」


「!!電話してくれたんすね!、ありがとうございます!。」


「はぁ~、あんたの次は透の担任とよ、本当に面倒だわ、連日続けて、てか、あの子はまたどっか行ってんの?・・昨日から帰ってきてないじゃない、勝乎、あんたアイツからなんか聞いてない?。」


勝乎は自分の携帯に送られたメールの事は伏せた、その上で。


「いや、聞いてないっすね、アイツの事だから全然心配ないと思いますよ。」


「心配なんかしてないわ・・アイツは恐ろしく頑丈だからね、問題なのは主席日数の方よ、アイツ何考えてんのかしら、解かんない奴・・。」


「後で電話して聞いときますよ、アイツが電話に出ればですけど・・。」


「そ、・・じゃあお願いね・・。」

(てゆーか本当に凄い事になってるわね・・火事の原因なにかしら。)


「了解です、話は変わりますが、ちょっと俺、外出して来るんで、何時に帰ってくるか分かんないんで。」


ギロッ・・。


啓子は勝乎を睨みつけた。


「明日もちゃんと登校すんのよ・・。」


「はは・・勿論すよ、じゃ、行ってきまぁす。」


逃げる様にその場を離れ、自室に戻った勝乎、自室に戻るとマンチンがまた小窓から外を眺めていた。


「悪い待たせた、今着替えて準備すっからもう少し待っててくれ。」


勝乎は制服から私服に着替え、その上からスカジャンを羽織った、ファスナーを中程まで上げ、財布と携帯をスカジャンの内ポケットに仕舞った。


「お待たせ・・で、何処まで行くんだ?やっぱ例のモール付近か?。」


マンチンは小窓から離れ、ベッドの上に飛び乗った。


「うん、そうだな・・あの建物には今は近づけないって話しだもんな、今朝のニュース?だかでやってたからな、最寄りの駅だっけか?うん、そこの付近で人の流れを観察しよう、うん。」


「成程な・・駅付近で観察すんだな、それなら確率は高いだろうな、よし、そうと決まればやるか・・合体・・。」


勝乎はマンチンをチラっと見やった・・。


マンチンは頷き勝乎に近づいた、少し照れ臭そうだ・・。


なんなのだろう、この空気は・・。


「キョドってんじゃねぇ、早く頭突いてこい・・。」


「うん。」


ゴツン・・。


再び2人は、1人の命に交わり生まれ変わった・・。


「・・2回目ともなるとそんなに驚かねぇな、よし、行くか。」


(うん、言ったろ?慣れるって。)


勝乎達は、昨夜自室に戻った時の様な流麗な動きで、マンションを後にした、流れるように、悟られぬように、忍者のように、啓子にバレないように。


日中故に人目を忍び、建物から建物を翔んで移動できないので、今回は歩いての移動である・・、途中、道の端に停めてある、高級車のサイドミラーで身だしなみを確認した、昨夜女性から借りた手鏡での確認は、暗所故に陰がかかっていた、明所での確認は初である。


「本当に・・女なんだな、不自然な位、顔が整ってる。」


(うん、お前は元々体幹バランスが中々に良かったし、顔立ちも男性的よりは女性的だったからな、それが要因でこういった結果になったんだな、うん。)


「・・少し複雑だぜ、男の時より今の女の方が強いなんてよ、容姿も端正で外写り良いしな。」


(うん、まぁ、側はな・・うん。)


「ん・・どうした?。」


(うん、まぁ・・機会が有れば説明する、それよりシンパシーは使わないのか?、うん。)


(ああ、そういえばそうだったな、忘れてたぜ・・。)


勝乎は車から離れながら、シンパシーでの念話に切り替えた、途中、スレ違う男性から何度も振り返られながら、駅ロータリーを目指していった。


(・・何か視線が気になんな、アッチコッチからやらしい視線を感じるぜ、まぁ、俺が他の男だったら見とれちまうだろうがな、自分で言うのもなんだが本当に美人だからな・・。)


(うん、人間って正直だな、さっきのオッサンなんか本当にエロい目してたぞ、うん。)


(・・服装は全く露出してないんだけどなぁ、長袖のTシャツにスカジャン・・下はスウェット、特に問題ねぇはずだ。)


(うん、道行く奴らは皆、お前の胸と顔交互に見てたぞ、うん。)


(・・やっぱそうか、Tシャツが胸元苦しくてパツンパツンだ、そりゃあ・・見られちまうよな、80以上はあるなこりゃ。)


(うん、まぁ気にしたら負けだな、うん。)


(だな・・次からはちゃんと女モノの服装も用意しねぇとな、それよりも。)


改まって勝乎はマンチンに投げかけた。


(ノビシブルだっけ?、魔羅を極限まで押さえて探知されなくするとかいう・・、絶対に探知や察知はされないのか?。)


マンチンは少し間を置いてから答えた。


(・・うん、そいつの種族系統次第だな、ノビシブル(在明不可視)を見破れるのは非在探知(テルセント)の一点集中型、非在見知(ミルセント)だけだ・・それが得意なのは承越種(ドメニティー)の化身依存者達だ、うん。)


(・・学校で暇潰しに、お前が教えてくれたやつか、化身の種族だとか型だとか、ノビシブル?だとか・・。)


(うん、もう1回説目するぞ、4種族の種類と特徴は・・。)


リブドーラ(性愛種)、交わり溶け合い産まれる・・依存者と融合する事で、全く新しい生命体に産まれ変わったり、依存者以外にも、何かに融け交わる事で新たな能力を生み出す事ができる。


命が産まれ変わる、それに伴い、生命の本能、生きる為に、成長する為に産み出されるエネルギーの爆発力は、4種の中でも断トツのブッチギリ・・。


融合し、体内や生み出したモノの中で、魔羅や生命力が内側に循環する為、エネルギーが外に漏れずらい・・身体操作に特価した、肉弾戦型が非常に多い。


セフブクル(安避種)安寧を旨とし、防衛に特化しやすい種族、依存者自身や、身内を守る事を重点とした能力を解放しやすい・・故に、実戦能力は総合すると低い傾向にある・・が、防御や回避に関しては、場合によっては空間や時間を超越したり、理解し難い超常現象を、引き起こす可能性が極めて高い、THE超能力者タイプ。


アピバル(食生種)その名の通り、食し、生きるのに特化した種族、他の化身や依存者の肉体や魔羅、生物を喰らい、自身の糧とし戦う、4種族の中で一番生命力に溢れていて長寿である、喰らった存在を使い、体内で能力を構築したり、自身のエネルギーに変換し放出し戦うタフガイタイプ。


ドメニティー(承越種)4種の中で、最もトータルバランスに優れ、攻防のバランスは勿論、洞察力、状況判断力、支配力が特に優れており、依存能力もそれらに付随する能力を開眼しやすい。


(うん、4種の系統と特徴は大体そんな感じだ、俺はリブドーラ種で依存者との融合で未知の力を解放し、圧縮したエネルギーで敵を粉砕するのに長けてる、うん。)


(・・性愛ってのが気になるが、まぁ良いだろ、エネルギーは確かに内側で落ち着いて流れてる感じだな、肉弾戦ってのも頷ける、つーか以外と少ないな、4種類しか居ないんだな、種族は少ないのは解ったが・・型?だっけか?、型はどんなのが居んだ?。)


(うん、型か・・これも少ないぞ・・大別するとこれも4種類だ、うん。)


寄生型・・先述で公表した通り、生物と契約せず肉体に巣くい、肉体を支配し、自由意思を奪い、欲望のエネルギーだけを吸い続ける・・、故に依存能力は解放せず、寄生型の流す微量な魔羅を、少々肉体に纏うだけの弱い依存者を作る最悪の型、化身の9割がこれに該当する。


移住型・・依存者と同意の元、依存者の体内、有るいは体表等に棲み着き、魔羅を依存者に供給しながら、依存者の欲望を享受し、本当の意味での相互共存をするタイプ、知恵の有る化身に一番多いタイプ。


自立型・・各々、自立できる肉体を持ち、契約した依存者抜きでも現世で活動できる希少なタイプ、本来化身には、自由に活動する為の肉体が無い、(生身の肉体を介さないと触れたりが出来ない)故に目的を達成する為に依存者という繋がりが必要になる、が、自立型は契約の有無に関係無く活動が可能、メリットは単独である程度自由に動ける事、デメリットは肉体を持つ事で他の依存者に狙われ易い事、肉体維持に色々と、かなり消費しやすい事。


隷属型・・先述した3つの化身が、何かの拍子に主導権を奪われ依存者に支配されたパターン、この型は、化身の強さに関係無く、依存者に隷属されている為、化身の魔羅を100%出しきる事ができる・・故に、制御が効かない事が多く、依存者としては短命が多い、強弱の判断が難しく、4種の型の中では不明瞭な点が多い、依存者の歴史上、滅多に存在しない型。


(うん、この4種類だ大別するとな、俺は自立型だからお前が居なくてもある程度活動できるぞ、うん。)


正直、勝乎は感心した、化身の種族や型、それらの知識を概要的にしっかりと、説明したマンチンに、彼は、どれだけの修羅場を潜ってきたのか、こと依存者に関する知識量は、やはり歴戦に裏付けられて優れているのだろう、自分の様な予備知識の無い、成り立ての依存者にそれを伝える言葉が、淀みなく凄く流暢であった。


(うん、種族と型はこんな感じだな・・型は正直、強い奴の大半は移住型だと考えていいと思う・・、隷属型は滅多にいないから勘定に入れなくていいぞ、うん。)


(自立型は?お前みたいなタイプだよな?多いのか?。)


(うん、イヤ、殆どいないだろうな・・俺は存在してから同じリブドーラ種以外で、自立型を見た事がない、逆に、リブドーラ種は全部自立型だったな、うん。)


(・・融合すんのに実態が必要だもんな?、まぁ、詳しく解んねぇが種族と型はそんな感じなんだな、それと・・なんだっけ?セノビールだっけ?、牛乳に入ってそうな、魔羅を抑えるやつ、あれも依存能力とは別の技術なんだよな?。)


(うん、魔羅を操作し、生存する為の基本の技術だな、全ての化身や依存者が使えるようになる、俗に言うサバイバルスキルだな、まぁ、種族によって習得出来る率は異なるがな、これも大別すると4種類・・まぁ、とりあえず基本4種だけでいいな、うん。)


テルセント(非在探知)・・周囲の魔羅を探知、察知する能力、熟練度にもよるが、空間を認識し、大体の魔羅の発生源や魔羅の攻撃の気配を先読みし、探知、察知する、当然ながら使用中は魔羅を抑える事が出来ない(一部例外有り)リブドーラ種が尤も得意とする能力。


ノビシブル(在明不可視)自身の魔羅を抑え込み体内に隠す能力、テルセントを掻い潜れる唯一の手段・・寄生、移住、自立、隷属、問わず、他の化身から認識されなくなる能力、使用中は魔羅を使用したアクションができなくる、(一部例外有り)セフブクル種が尤も得意とする能力。


ミルセント(非在直知)魔羅を目に集束させ、観察する能力、遠くから1ヶ所を観察するのに適した能力、ノビシブルを見破る唯一の手段である、周囲感知は至らなくなるが、より1ヶ所を、隈無く観察できて、熟練度によっては、相手の特徴を読み取り、有利に戦いを進める事ができる。


当然ながら魔羅を抑える事は出来ない(一部例外有り)ドメニティー種が尤も得意とする。


タベシブル( 多在不可視)自身の魔羅を敢えて放出、周囲に拡散させ、空間内の魔羅の濃淡を調整し使い分け、自身の正確な位置を誤認させ、自身を溶け混ませる・・。


高エネルギーのアピバルの得意能力、熟練度により、使用後は空間内の魔羅を喰らい、魔羅を回収できる能力者もいる(上級サバイバルスキル)。


(テルセントか、昨晩モールで使ったやつだな、脳内にマップ、に近いモノが写しだされた感じだったな。)


(うん、そうだ、テルセントは俺達リブドーラの十八番、体外から受信した魔羅の気配情報を、皮膚や体内に流れる信号で感覚的に察知、脳内に情報を投影する超神経能力だ、うん。)


(スゲー能力だな・・で、お前が学校から自宅、今に至るまでやってくれてんのが・・。)


(うん、在明不可視(ノビシブル)だ、魔羅を使う手段(魔羅を纏っての攻防、依存能力、他のサバイバルスキル)がほぼ使えなくなるが、非在直知(ミルセント)で一瞥されない限り俺達が依存者だとは、気付かれる事は無いだろう、うん。)


(・・ミルセントだかで監視されてる可能性は?、敵が安全圏からミルセントだかで遠目で探ってたら?。)


尤もな意見だが、マンチン曰、サバイバルスキルは基本、使い所がそれぞれ違うという、テルセント、ミルセントは基本戦闘で、ノビシブルは日常で敵と遭遇したくない時に使う、タベシブルは基本アピバル以外は使わないらしい。


(うん、普通ならな、だが、遠目からのミルセントは目元に魔羅を膨大に集束させる為、周囲に自分の存在を知らしめているのと同義だ、まず目的もなくやらないだろう、これらサバイバルスキルは多様するものではない、適したタイミングで使うのがベストなんだ、うん。)


(昨日のテルセント見たいな感じか?。)


(うん、そうだ、各スキルそれぞれ使い所は違う、直面したら教えよう、うん。)


(そうだな・・一度には覚えられねえな、それよりこれらどうするよ?、駅付近なら、もしかしたら昨日の2人組みの手掛かりを、探れるかも知れないけどよ、駅のどの辺で探索すんだ?。)


(うん、そうだな、可能性は低いだろうが・・、人の流れを監視しよう、2人組みが現れる可能性は低いだろうが、他の依存者を発見できるかもしれない、人の流れを観察できる場所、どっかないか?うん。)


(駅付近の喫茶店でどうだ?、そこなら駅前の広場も、駅の改札口前も多少は見える筈だ、まぁ駅の南側だし、片方側しか見えねぇから確率はもっと低いだろうが・・どうだ?。)


(うん、そうしよう、喫茶店なら都合が良さそうだ、お前にも分かりやすくスキルのレクチャーができそうだ、行こう、うん。)


こうして、2人は微かな可能性にかけ、昨晩のモール襲撃事件に関わった依存者を探るため、人が密集する駅の付近を探る事にしたのだ、この日、勝乎は初の依存者としての死闘を経験するのだった。








サバイバルスキルの話、なんとなくではありますが、伝わったでしょうか?

次回は、ショッピングモールを襲撃した下手人を追跡、及び討伐を書いていきます。

飽きていなければ、引き続きよろしくお願い致します。

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