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欲望の化身  作者: 鳥串砂肝
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第1話 勝乎とマンチン part3

鳥串砂肝です、今回はマンチンと勝乎の接触を書きます。

よろしくお願いいたします。


勝乎とマンチン part3



勝乎が目覚めたのは午後の7時を少し回ったところだった。


部屋はすっかり暗くなり、カーテンを開けると、小さな窓から夜の街が、キラキラと活気づいて見えた。


ベッドから降り、部屋を出る、眠気を覚ます為にシャワーを浴び、リビングに戻った・・が、誰もいない、啓子はともかく、透は自室に居る筈だ、透の部屋の前に立ちノックをする、が返事はない。


「なんだよ・・居ねぇのかよアイツ・・。」


仕方なくリビングに行き、ソファに腰掛けテレビを点けた、バラエティー番組を見ながら、眠る前にした透との会話を思い返していた、デスサイズの事、大和竜二の事、夜の集会や徘徊は当分禁止になった事、連絡は携帯を使う事・・・携帯・・勝乎は自室に、携帯を取りに戻り、再びソファに腰掛けた。


2つ折りの携帯を開き、画面を確認すると、メールが二件、1つは透からで


(少し街の様子を見てくる、今夜は家を出るな。)と。


「あの野郎、人には外出制限しといてそりゃねぇだろ・・。」


もう1つは街のゲームショップからのメールだった。


(○○ショップ○○支店の○○です。いつもご利用ありがとうございます。

お客様が御予約頂きました商品【○○大戦】を店舗にてお預かりしております。ご都合の合う日に御来店頂きますよう。宜しくお願いいたします。)


(あ~、すっかり忘れてたな、格ゲー予約してたんだった・・つーか面倒臭えな、透の野郎に予約させられたんだった、俺ゲームやんねえのに・・。)


「・・行くか、まぁ透の取り越し苦労だろうし問題ねぇよな・・。」


勝乎は透との約束を守らず、部屋に戻り脱ぎ捨ててあった制服から、財布を取り出しついでに、壁掛け用のフックに、制服をハンガーに掛け戻した、ベッド下の収納スペースから軽めのパーカーを取り出し羽織り、街に繰り出した。


ゲームショップ○○は、駅の隣接地に最近できた、ショッピングモール内にある。


故に、残業帰りのサラリーマンやら若者やらの影響で、営業終了一時間前だと言うのに、周辺は賑わいを見せている。


人混みをかわしながら、ゆっくりと進んで行く、歩道を渡り、正面入口までの道を暫く歩き、勝乎は思わず足を止める、正面広場の至る所に、複数の円形のベンチが設置されている、その円形で囲う様に、背の低いイチョウの木が植えられている。


その1箇所に、見覚えの有る生物を確認した。


下校途中に遭遇したマンチンなる生物だった。


ベンチに体育座りしながら。


ブブブブっ。


と震えている、勝乎は目を見開き、困惑した。


(あっ・・あいつだ!?マンチョビ・・だっけ!?、川岸に居た・・やっぱり幻覚なんかじゃなかったのか!?何故ここに!?。)


呆然としている勝乎に、マンチンが気付いたのか、体育座りの状態で腕を前に出し、先端を少し曲げ伸ばし。


こっちに来い、とジェスチャーしている。


勝乎は重い足を前に出し、ゆっくりと進んでいった、そしてマンチンの前に立つ。


先に口を開いたのはマンチンだった・・。


「うん・・寒いな・・お前が川に放り投げてくれたお陰で酷い目を見たぞ、うん。」


「おめえがいきなり頭突きくれるからじゃねぇか、何言ってやがんだ。」


「うん、そんな事より、一週間近く何も食べてないんだ。なんか食い物くれ、うん。」


「ふざけんなぁ!何なんだよてめえ!?俺はてめえの事なんか知らねぇよ!じゃあな!。」


その場を離れ、ショッピングモールの入り口に、再び歩きだした勝乎、7~8メートル進んだ所だった・・


ストン


っと、肩に軽い衝撃が走った、恐る恐る視界の端で肩の上の物を捉えた・・、マンチンだ、マンチンが肩の上に乗っかっていたのだ。


(げぇ~!?乗っかってんじゃねぇよコイツぅ!?。)


「俺を撒こうだなんて・・100年早いな、うん。」


勝乎は身動ぎをし、振り落とそうと躍起になった。


「マジで俺に構うなよ!!、迷惑だ!。消えろよ!。」


抵抗するマンチン。


「い、いやだ、何か食わせてくれるまで、お前に引っ付き続けてやる!。」


すると、周囲の通行人達がクスクス笑い始めた。


「あはは!!、ママぁ、あのお兄ちゃん1人で騒いでるよぉ!。」


「・・みちゃいけません。」


「おいっ見ろよあのガキ・・1人でギャアギャア騒いでるぜ。」


「おいっ、あんまりジロジロ見んなアイツ・・やべぇやつだぜきっと・・。」


周囲の眼が気になり、勝乎は仕方なく急いでファストフード店に入った。


「「いらっしゃいませ~!!。」」


「・・ギガボスバーガーを5個下さい、それとポテトL3個、持ち帰りで・・。」


袋をいっぱいにして 店を後にしたのだった・・、モールから少し離れた人気(ひとけ)の無い小さな公園に2人は落ち着いた。


「ほらよ、こんだけあれば足りるだろ?たくっ・・こんな買わせやがって、大体お前何者なんだよ?。」


マンチンは無我夢中でバーガー4個とポテト2個に食らい付いた。


余程空腹だったのか、ものの2分程で平らげてしまった。


「げふっ!・・ふぅ~、うん・・食ったぁ~。」


小さな腹をパンパンに膨らませ、満足そうに擦っている、マンチンは上目遣いで勝乎を見た。


「うん、腹いっぱいだ礼を言うよ、ありがとな、うん。」


「・・どう致しまして、で?、お前は一体何なんだよ?俺が見てる幻覚じゃねぇよな?、他の連中には見えてねぇようだが・・、マンチョビ?だっけか。」


「うん、誰がマンチョビだ、俺の名はマンチンだ、そういうお前の名前は・・確か妙源寺彪流だったな?」


「三浦勝乎だよ!、そんな強そうな名前じゃねぇ!。」


「うん。そうか・・三浦勝乎か、よし勝乎、他の化身を滅ぼす為に俺と本契約して(依存者)になってくれ、うん。」


「本契約だ?なんの話だよ・・ちゃんと説明しろや。」


「うん、そういえばさっきはろくに説明出来なかったな、おれは(化身)だよろしくな、うん。」


「だからその化身ってのは何なんだよ・・ユーマ(未確認生物)か何かか?。」


「うん、まぁそんなようなもんだ・・元々はこの世界の存在ではないが、訳あって多くの化身がこの世界に流れ着いた、俺の他にも沢山の化身が、この世界でパートナーである依存者を探している、うん。」


「依存者?・・アル中とか薬中じゃねぇんだぞ・・頭イカれてんのか?。」


「うん、俺は至って正常だ、寧ろ頭が鈍いのはお前のほうだ、うん。」


「あっ?今なんつったよ、おっ?」


「うん、俺という未知の存在を目の当たりにして尚、状況を受け入れられないときたか・・頭が鈍く順応力が低い証拠だ・・うん。」


勝乎は沸き上がる苛立ちを、今まで懸命に抑えてきた・・透からの行動制限、それを破った事による透への微かな後ろめたさ、先程、人前でかかされた赤っ恥、ゆとりの無い財産の不要支出、何よりズケズケと無遠慮な物言い、これら複数の要因が、勝乎に行動を実行させていた。


「おいっ・・嘗めてんのか?おぉ?。」


ガシッ! グイッ!


勝乎は、マンチンの頭の触覚を掴み、自分の顔の前まで引っ張り上げた。


「なぁチビ助、人間嘗めんのも大概にしろよ、頭悪いじゃねぇんだよ、てめえは初対面の人に対しての礼節をちゃんと学んでんのか?チビ野郎が・・。」


つい怒りをぶちまけてしまった勝乎、心の中で少し後悔していた・・人間ではないが、自分より小さな存在に辛く当たり散らす・・絵面としてはみっともない事この上ない。


だが、次の瞬間別の意味で後悔した。


びくっ。


勝乎は恐怖した、マンチンの円らな瞳が、無機質な深い闇色の瞳に変わっていた・・。


ぱしっ!。


マンチンは軽く、勝乎の掴んだ腕を叩いた。


端から見ても、軽く叩いた様にしか見えなかっただろう、だが。


「っ!?てぇー!?腕がビリビリして・・!?震えが止まんねぇ・・なっ、なにしやがったてめえ!?。」


マンチンに対して恐怖を覚えた勝乎、だが、怒りで自我を保っていた。


「うん、腕で普通にお前の手首の当たりを叩いただけだ・・うん、・・魔羅(マラ)を少し込めてな・・うん。」


「マラだと?今の・・体内に衝撃が流れて、それがジワジワ広がるような・・一体何だってんだよ!?。」


「うん、そうだ魔羅だ・・俺達化身が使う欲望のエネルギーで、簡単に言うと生物の能力を向上させてくれる・・うん。」


「・・能力を向上させるだと?筋肉が付いたり頭が良くなるって感じか?。」


「うん・・筋肉が付くは少し違うがな、頭も多少は変わるのかもな、まぁ抽象的にしか言えないかな、うん。」


「?わかんねぇな、能力が上がるってのはそういう事じゃねぇのか?。」


「うん、勿論本人の欲望が肉体の強化や進化に有るなら、強靭な肉体や異形の存在になれるかもしれないな、うん。」


「つまり・・なんだ?、人それぞれ別々の形で能力の向上が成されると?、そう言いてぇのか?。」


「うん、そういう事だ、ただ・・欲望のエネルギー、魔羅は本来、俺達化身にしか使えない、それを他の生物が使用するのには、幾つか条件がある、うん。」


「条件?。」


「うん、俺達化身の使う魔羅は本来、自分達の存在維持の過程で産みだされるエネルギーだ、栄養?、おから?と言い変えてもいい、いずれにせよ、本来自分達の為に使うモノを、生物に使わせると言う事は、代わりの見返りをその生物から頂戴する必要がある、それは何か・・、生物1体1体が持つ欲望だ、うん。」


「欲望だと?欲望をどうするってんだ?。」


「うん、簡単に言うと食うって事だ、お前達人間や、ある程度知性が有る生物の中で、その欲望を食らい生きる、否、共存ができるんだ、うん。」


「現実離れしちまってるが要は・・依存者ってのは、お前ら化身に取りつかれて、魔羅だかを使えるようになった超人、みたいなもんか?。」


「うん、取り付く・・か悪い言い方だが間違っちゃいないな、実際、大半の化身は無理やり依存者に巣くって、体を支配してる奴がほとんどだ・・、超人ってのも間違っちゃいないしな、生物の体が魔羅を纏うと肉体が強化されるんだ、うん。」


マンチンは勝乎の腕を掴んだ・・瞬間、魔羅を勝乎の拳に少しだけ送りこんだ。


「!!うぉぉー・・!?すげえ力が漲ってくる、信じらんねぇ・・。」


勝乎は拳を握り、ベンチの背もたれを軽く叩いた。


バキッ!!。


軽く叩いただけだが、木製のベンチの板が一枚、へし折れてしまった、器物損壊である。


「まじかよ・・、軽く叩いただけだぜ・・、魔羅だっけか?本当だったのかよ・・。」


「うん、漸く本当の意味で信じる様になったか・・、言っておくが今のは、俺の魔羅を僅かな微量、お前に流してやっただけだ、うん。」


「・・わかったよ・・、化身と依存者が存在するって話は信じるよ、ただよ、お前以外の化身やら依存者ってのは本当に存在すんのか?、俺は見た事ねぇ。」


「うん沢山いるぞ、まぁ見えなくて当然だ・・本来、化身ってのは同じ化身や依存者にしか見えないし、触れる事もできないんだ・・うん。」


「あ?、俺はお前が見えてるじゃねぇか?、俺は化身なんかじゃねぇし、依存者って奴でもねぇんだろ?、なんで見えてんだよ?。」


「うん、俺とお前の相性が凄く良いからだろうな、相性の良い化身と生物は、契約前から視認したり、会話や意志疎通ができるもんなんだよ、うん。」


「視認や会話ができるって・・、化身は皆お前のように、二足歩行で歩き廻ったり跳びはねたりすんのか?。」


(こんなのが沢山見えたらやだな・・。)


「うん、二足歩行は俺と同種族だけだろうな・・、大半の化身は、怨念や幽霊みたいに、半肉体みたいな形で、この世界を彷徨いながら生活している、契約した生物の体を使い、始めて本格的に、活動出来る肉体を手にするのが大半だ、うん。」


「怨念や幽霊見たいに彷徨ってるか・・、あんまりイメージできねぇが、まぁいいや・・、それよりも・・、てめえらの目的は一体なんだ?、俺達人間を侵略でもしに来たのか?。」


「うん、その質問には・・、ハッキリした回答はできないな・・、ただ言えるのは、大半の化身達は、自分達の快楽的な欲求を満たす為に、お前達人間に寄生してるが、俺や知恵のある一部の化身達は、各々の目標を目指して活動している、うん。」


「目標・・、何だそりゃ?やっぱり・・、人類侵略か?。」


「うん、そういう奴もいるかもな、因みに俺にも目標がある・・、それはこの世界で暴走している、全ての化身を始末し、俺の存在価値を示す事だ・・うん。」


「暴走した化身を始末?どういう事だ?。」


「うん、今し方言ったな・・、大半の化身は自身の欲求を満たす為に、お前達人間に寄生すると・・、そうした大半の化身は(寄生型)と呼ばれ、種族に関係無く、知恵が無いから寄生した生物を、ボロボロに壊してしまうんだ、うん。」


「ボロボロに・・、何か嫌な感じだな・・、どうなっちまうんだ?。」


「うん、簡単に言うと廃人にしちまうんだ・・、欲求は言わば生きる為の活力だ・・、寄生した生物の活力を空になるまで吸い続ける、そうすると・・うん?。」


「ちっ・・そういう事か、で?お前はそれを止めてぇと?理由は?。」


「うん、存在意義を示す、としか答えられない、至って私欲的な理由だがな・・、兎に角、他の化身達の暴走を食い止めて、化身としての格を証明したい・・、その変は詳しく詮索はしないで欲しい、うん。」


「お前めちゃくちゃ勝手だな、・・わかったよ、とりあえず保留な、そのかわり次の質問だ、なんで化身は生物に力を貸すんだ?、契約だかしねぇと、そのうち生きていけなくなるからか?。」


「うん、さっきも言ったが魔羅は、本来化身が生存する為のエネルギーだ、これは存在する限り永久に生成され続ける、ただ生きる為ならその辺を彷徨ってればいいわけだ・・、生物に力を貸す理由はシンプルだ、欲望の味が旨いからだ、自分と相性の良い依存者と契約する事が、ほぼ全ての化身にとっての贅沢なんだ、うん。」


「贅沢か・・、人間で言う所の酒や煙草みてぇなイメージか?、別にやらなくても死にはしないけど、寿命を縮めた息抜き・・、みたいな?。」


「うん、そういう事になるかな?、実際比喩としては正しいかもな、依存者と契約した化身は欲望の質を高める為に・・、自分の目標を達成する為に、自分と契約した依存者を、命懸けで他の依存者と競わせるからな、これは寄生型の化身も上位の化身も同じ考えだ、うん。」


「依存者同士に競わせる事に大きな意味があんのか?、上位の化身同士、目標の為に他を排除するんなら理由としては頷ける、けど寄生型?だっけ、そいつに取り付かれると、廃人になるまで活力を吸われんだろ?、他と争わせる理由なんてなくねぇか?、そいつらは知恵が無いわけだから・・、寄生した人間の支配に・・、欲望の味を啜るのに専念してりゃ良いわけだろ?、他所の化身に構う必要なんて無くねぇか?。」


「うん、それが・・必要な理由は幾つか有るんだ、一番の理由は、寄生した依存者に意図的に更なる付加をかける為だ、うん。」


「付加?、廃人の状態でさらに付加をかけるって事だよな?、そんな事して、いったいどうする気なんだよ?。」


マンチンは言い渋りながらも、多くの化身達全員に当てはまる、行動理念を勝乎に説明し始めた。


「・・うん、例えが悪いかもしれないが、トマトやバナナってあるだろ?うん。」


「ああん?、なんだよいきなり・・野菜と果物だろ?、それがどうしたよ?。」


「うん・・、トマトやバナナの糖度を高める為に、標高の高い場所で育てたり、色々調整して、厳しい環境で栽培するってのを聞くだろ?、うん、言い方悪いけど正にそれだ、うん。」


「んっ?、意味わかんねぇって、一体・・。」


そう言いかけた瞬間、勝乎はマンチンが言いたい事を理解した、分かりきっているが、我々人間が食事をするのは生きる為に必要なエネルギーを獲る為であり、本来食事に美味い不味いと言う発想は必要ない筈なのだ、だが、人間は本当に欲が深い、味気ない食事に満足出来ず、 調理法方や食事作法、果ては、食材の畜産や栽培の方法にまで力を注ぐ。


マンチンが言いたかったのはそういう事だろう。


食材とは元々は生命である・・、その命に意図的に付加をかけ、生命本来が持つ「生存本能」を引き出す事により、甘味が増したり、酸味が増したりと、旨味を引き出す栽培方法が存在するとされる、それは化身が付いた依存者にも言える・・、人間は欲望に忠実な生物だ、忠実故に争い、奪い、食らい、交わり、愛し、妬み、憎み、守り、逃げ、在り続けている。


争う事で付加を与え、それら、或いは、それら以外の欲望を肥大化させ、旨味をしゃぶり尽くすのだ。


表現方法はどうであれ、各々、心象内に然程の差異は無いだろう。


勝乎は、少しマンチンに関心を抱いていたが失望感に苛まれ、一気に気分を害した、目の前にいる矮小な生物に、何とも例え様のない感情を覚えた、怒りにも似た、恐怖にも似た言い表せない感情を・・。


「・・てめえ等化身達にとって、俺達人間は食材みてえなもんだと、そう言いてえのか?。」


再びマンチンの触覚を掴んだ勝乎、更に続ける。


「トマトとバナナだと?ふざけてんのか?、人間を食い物みてぇに言いやがって、胸糞わりぃ野郎だ・・。」


マンチンは思った・・、彼等人間は、この星の生態系の頂上に立つ生物だ、自分達が補食する立場だからこそ、普段は理性的に物事を見て感じる事が出来ていたのだ。


それが突然、化身というイレギュラーな存在に蝕まれ、自分達人間の平和が、脅かされているかもしれない状況だと考えれば、気分を悪くするのも当然だと。


彼は、人間の尊厳を踏みにじる行いをしている、化身達が許せなかったのだろうと。


マンチンは、自分の考えを素直に聞いてもらう為、身体から力を抜き、真っ直ぐ勝乎を見つめた、その目を見た勝乎は手を離した。


「うん、悪く思うな・・、俺達化身にとって依存者の心身の付加は、依存者の欲望を肥大化させる上で絶対に必要なプロセスなんだ、残酷な話、服従関係にある化身と依存者も、共存関係にある化身と依存者も、考え方や目的は違えど、やる事は同じなんだ・・、付加をかけて欲望を強くする、共存関係なら依存者をより強く育み、服従関係なら心身共に隷属する為・・、美味な蜜にする為に・・、うん。」


勝乎の蟀谷がピクピクし始めた、その目には明らかな敵意を秘めている、勝乎の害意に充ちた表情を見て、マンチンは慌てて勝乎に何かを言いかけた。


「うん、落ちつけ、さっきも言ったが・・。」


「ふざけやがって、僕は害の無い友好的な化身ですっ・・てか?、ざけんなよバカが。」


勝乎は凄く不快な気分だった、人間に対して家畜の如き扱いをする化身の事、その化身に取り付かれた人間を無駄無く有効活用しボロ雑巾の様に使い棄てる・・。


事の真否は定かではないが、聞かされて気持ちのいい話ではなかった・・。


何より時間を取らされた挙げ句、金を不要に浪費してしまった事、勝乎はまだマンチンに聞かねばならない重要な事があったが、その場で立ち上がり冷淡な台詞を浴びせた。


「てめえと話す事なんか何もねぇよチビ助、二度と俺に構うんじゃねぇ、じゃあな・・。」


彼は足早に去って行ったのだった。



次回は、能力の覚醒を描きたいと思います。

どうもありがとうございました。


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