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欲望の化身  作者: 鳥串砂肝
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第1話 勝乎とマンチン part1

プロローグが終わり本編スタートです、よろしくお願いいたします。

第1話 勝乎とマンチン part 1


「じゃあ、俺がお前の家族になってやるよ。」


全身汗まみれ、顔面に青短、唇を切り、軽く流血している。


愛想の無い仏頂面だが、顔立ちは彫りが深く中々に男前の少年、年の頃は12歳前後であろう。


汗を腕で拭い、頭をぽりぽり掻きながら、歯が浮くような台詞を真顔で吐いている。


その傍らには、何があったのか学ラン姿でガラの悪そうな連中が4~5人、白目を剥いて口を開けて倒れている。


少年の、男らしい眼差しの先には、線の細い10歳前後の少年が膝を崩して女々しく泣きじゃくっている・・ああ・・今でも記憶に焼き付いている。


あの糞みてぇな真夏日の情景が・・。


泣きじゃくっているヒョロガキ・・・昔の俺だ・・。


キーンコーンカーンコーン・・

キーンコーンカーンコーン・・


「おー・・浦君・・ろぉ・・三浦くーん起きてるかなぁ?。起きないと担任来ちゃうぞぉ?。」


ユサユサっ・・。


机に突っ伏して眠る男子生徒に、会社の上司の様な口振りで懸命に揺すり起こす女子生徒。


「んあ・・?おぉ、伊勢原かぁ・・なんだ?もう昼飯かぁ、早ぇなあ。」


気だるそうに起き上がり、ボンヤリした目付きで女子生徒を見やる。


「三浦君、君には20分が4時間に感じるのかな?君はつい20分前に「おはよう伊勢原」といいながら眠りに付いたじゃあないか。」


女子生徒、伊勢原房子(いせはらふさこ)が呆れたように言う。


「あぁ・・そういえばそうだったなぁ、起こしてくれてありがとよ、伊勢原。」


「まあ、君がグータラでたまにしか登校しないのはいつもの事だからね、夜な夜な遊んでるようだから仕方ないかなぁ?」


「ひでぇな、俺だって普段はグータラじゃねえよ、昨夜はたまたま・・。」


「その瞼の上の絆創膏やアザは何かなぁ?また喧嘩でもしたんじゃあないかぁ?。」


「いやぁそれはぁ・・。」


その時。


ガラッ・・。


担任の男性教師が教室に入ってきた。


「起立、・・礼。」


「「「おはようございます。」」」


「着席。」


朝の朝礼が始まった。


いつも通りの学校生活、と言ってもこの男子生徒、三浦勝乎(みうらしょうや)はたまにしか学校に登校しない、俗に言う不良と呼ばれる男だ。


房子の予想通り、昨日(正確には今日未明)も夜遅く、ひと気の無い廃ビルで、勝乎が所属している不良グループと敵対してる不良グループの抗争が勃発し、勝乎も無論、参加していた。


だが抗争の途中、突然、無数のパトカーが、けたたましいサイレンを鳴らし、廃ビルの入口を包囲した。


両グループ暗黙の了解で休戦、そして裏口から逃亡、勝乎も警察の目を掻い潜り、何とか事なきを得たのだった。


その足で自宅に戻り仮眠をとった。


学校に行くか迷ったが、出席日数がヤバイ事を思いだし、体に鞭打ち登校したのだ。


勝乎は前方の教壇の方に目を向け、担任の男性教師の顔を見やった、すると男性教師と目が合った。


心なしか、険しい表情に見えた、そして、朝礼が終わり1時限目の移動教室の準備をしてる時、担任が眼鏡を指であげながら、勝乎に近付いてきた。


「三浦、話がある、昼食が終わってからがいい、職員室まで来なさい。」


と言い残し教室を後にした。


周りの生徒の反応は大体がこそこそ話をする者と我関せずの2種類。


すると伊勢原がニヤニヤしながら言った。


「おやぁ?先生からデートのお誘いかなぁ?君もすみにおけないねぇ勝乎君?。」


茶化すようにからかう房子だが、勝乎は正直、房子に言い返す気も失せていた・・手で顔を覆い。


(やっちまったぁ!!極力授業にはでるようにしてたつもりが、最近サボり勝ちだったからなぁ~、アウトかなぁ~、せめて最後警告であってくれぇ~、もし留年なんつったら、啓子さんになんて言やあいいんだあ~。)


房子は覗きこむように言った。


「あんまり考え込まない方がいいよ?、たかがもう1年、1年生やるだけじゃあないか、逆に友達いっぱい出来ていいんじゃあないかなぁ、前向きに考えなきゃねぇ。」


「・・はぁ。」


(・・慰めてんのか?おちょくってんのかどっちなんだよ・・?、まぁ、言う通り考えても仕方ないな・・。)


勝乎は房子を無視し、気を取り直し移動教室の準備を再開し始めると、すぐに教室の後ろの方の引き戸が静かに開いた。


教室内が不穏な空気と静寂に包まれた・・入ってきたのは見るからに柄の悪そうな生徒である。


身長は180センチ前後、やや細身の身体付きで、制服のブレザーから見えるYシャツは、胸元を開けている。


シャープな顎に鋭い目付き、黒髪に整髪料をつけて後ろに流し、襟足も伸びている。


その男子生徒は、ズボンのポケットに手を突っ込みニヤつきながら、それでいて他を威圧する様に勝乎の席に近づいて行った。


他生徒達は避ける様に道をあけた、勝乎は伊勢原に離れるように目配せした、そして勝乎の前に生徒が立つと。


「よお三浦ぁ、元気そうじゃねえかぁ。」


狡猾で悪そうな声で不良生徒、大和竜二(やまとりゅうじ)は勝乎に話しかけた、それに対して勝乎は不機嫌そうに対応した。


「あ?なんの用だよ大和?、学校ではお互い干渉しねぇ約束だろうがよぉ。」


「おいおい、そんなにツンケンする事ねぇだろぉよ、クックックッ、ただよぉ、いい御身分だなぁと思ってよぉ。」


「あっ?何が言いてぇんだよテメぇー・・つーか昨晩はてめえは見かけなかったな?ブルってどっか隠れてたのか?あっ?。」


「バカか?抗争なんて面倒な真似、俺がワザワザ出向くかよ?馬鹿どもでやりあってろってよ・・言ったろ?良いご身分じゃねえか、女とイチャつくなんてよお。」


「あん?、テメぇには関係ねぇーだろ?用がねぇならとっとと失せろよ。」


竜二はチッと、舌打ちして踵を返し、歩いてきた道を戻り始めた、3メートルぐらい戻ると振り返り勝乎に指差して言い放った。


「・・調子に乗ってられんのも今のうちだぜ?俺らに楯突いた事、必ず後悔させてやる・・お前も透もな・。」


そう言い残し、竜二は帰っていった・・。


緊迫緊張した空気が徐々に消え、教室に活気が戻ってきた。


ガヤガヤ・・


「・・相変わらず感じ悪いなぁ・・大和君、ひねくれてると言うかぁ、何と言うかぁ・・昨夜なんかあったのかなぁ?。」


房子が心配そうに、それでいて興味津々な顔で訪ねてきた。


「なんでもねーよ・・、つーかアイツには絶対関わんなよ伊勢原、アイツまじで危ねーから。」


「まぁー、大和君は悪い噂絶えないしねぇ・・悪人顔だし、私は自分からはお近づきしないよ・・そういえば彼が言ってた透って・・もしかして3年の葉山先輩の事かなぁ?。」


「・・それより移動教室だったな・・後3分しかねぇーし急ごうぜ伊勢原、パソコン室って4階だったよな。」


気持ちを察したのだろう、房子はちょっとした茶目っ気を見せた。


「情報の授業でエッチなサイト見ちゃいけないよぉ、先生に怒られちゃうぞぉ?。」


「見ねーよ!!。」


1時限目の情報の授業の為、最上階にあたる4階に上がり、通常の教室内と同じ席順で座る。


1分前に予鈴が鳴り、各々、眼前に有る、ゴツいブラウン管のパソコンの電源を入れた。


この情報の授業は、去年までは存在しなかったという、時代の流れか、彼等の通う高校でもまた、新たな試みを図っていた。


ワードだのエクセルだの、魔法の様な言葉が教室内に飛び交う。


勝乎は、割れそうな頭を押さえながら、右人差し指でキーボードを押していく・・。


画面に3文字「だりぃ」とだけ打ち、房子を見た。


房子は頬杖をつき、窓の外を眺めていた・・。


海沿いに建てられ、S湾が一望できる見晴らしのいい立地にある学校・・。


秋晴れた空に透き通った海、房子は遠い目で水平線を見つめているのだった・・。



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