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くたびれた男=セクシー

短めなので本日2回更新します!次話18時です。




薬草を摘み、畑の手入れを終えて研究所に戻る途中。


「いやあ……それにしても、格好よかったなあ。占ってもらえるなんて、むしろ俺はソフィアが羨ましいよ」

「女難の星が羨ましいんですか……?」

「羨ましい」


 ノエルさんの呆れの声にも羨ましいと即答するスヴェンに、羨ましいのならすぐにでも変わってあげたいなあ、と私は遠い目をした。


「そこまでファンなのねえ」

「いやほら、桁違いの天才って、見てて清々しいじゃん。特にフレデリック・フォスターは雰囲気が渋い」


 ナンシーさんとノエルさんの呆れ混じりの視線は意に介さず、スヴェンが「滲み出る天才オーラが成せる業だよ。俺は努力ができるだけの凡人だから本物の天才には憧れる」とうんうん頷く。


 確かに錬金術や占星術にあまり詳しくない私でも、彼の凄さはなんとなくわかる。

 占星術はとても複雑な計算の果てに、ようやく占えるものなのだと聞いたことがあるからだ。

 それを私の顔を、パッと見ただけで言えるだなんて、超一流の方ともなると、複雑な暗算ができるのだろう。すごい。


 それに鉱物をお薬に使うという発想は、なかなか出てくるものじゃない。

 一度お話を聞いてみたいな、一体どんなきっかけから閃いたのかしら……と、考え事をしている私の耳に、ナンシーさんがおっとりとした声で「格好いい、ねえ」と頬に手を当てた。


「私はもう少し男らしい方がいいわ。がっしりとした大柄の――たとえばほら、陛下直属の騎士団長のクロード様とか」

「えっ」


 ナンシーさんの言葉に驚いて思わず声をあげると、ナンシーさんが「あら」と口元に手を当てた。


「失言だったかしら。クロード様からの求婚を断ったというから、てっきりソフィアちゃんはクロード様には興味がないのかと思っていたけれど」

「え、ソフィア、クロード・ブラッドリーまで振ってたの? そんな大人しい顔をしてバッサバッサと……強欲にも程があるだろ……」

「ごっ、誤解です! あ、あれは善意で! クロードさまは、友達です!」

 

 驚いているナンシーさんと、ドン引きしているスヴェンの言葉を否定して、私は慌てて説明をした。


「王宮薬師になって求婚がたくさん来るようになって、困っていた私をクロードさまが見兼ねてそう申し出てくださっただけで、それは申し訳ないので自力で頑張るとお伝えしたんです! ふ、振るなんてとんでもありません」


 クロードさまの名誉のためにも、ここはきちんとわかってもらわなければいけない。

 大体、ヴァイオレットさまの婚約者候補から外れたクロードさまには、たくさんの求婚が殺到しているらしいのだ。

 それはそうだろうと思う。見目麗しい侯爵家の次男で、国王陛下の覚えもめでたい騎士団長なのだ。


「わ、私では釣り合いません。ですのでお友達としても恥ずかしくないように、精進中で……」


 私がそう言うと、三人は顔を見合わせた。


「……クロード・ブラッドリーって、案外苦労してそうだな」

「そうねえ。でも、苦労している男の人ってセクシーじゃない? 狙えなくて残念だわ」

「それは男の俺にはわからない境地だよ」

「女の私にもわからない境地です」

「スヴェンもノエルちゃんもまだまだねえ」


 そんな三人の会話の意味自体が、よくわからず。

 私は頭の中をはてなでいっぱいにしながら、ナンシーさんの「この世で一番かわいくてセクシーなのはくたびれた男の人」というお話を、真剣に聞いていたのだった。



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