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【休載】戦闘メイドは異世界で魔女を探す  作者: 瑞城弥生
第一章 ようこそ異世界へ
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006 金さえ払えば冒険者には成れるのだ。

 血の匂いが充満した屋敷をにして街に戻った榛名は、とりあえず護衛として着いてくる予定のイワノフと共通認識を持ちたいと思い、どこか内緒話ができる場所を知らないかと尋ねた。


「それなら冒険者ギルドの会議室を借りるといい。防音結界が張っているから内緒話にはもってこいだ」

「誰でも使えるの?」


 一般的に言えば、そう言うのはギルドの登録をしている冒険者でないと借りれないと思う。組合というのはそう言う類のものだろう。あっちの世界では、会員専用の物件は、会員でないと使えなかった。

 ここではそうでもないらしい。


「大丈夫だ、問題ない」


 イワノフは冒険者だった。それは想定内だったが、ランクがBで驚いた。

 それよりも冒険者という制度があることに笑ってしまった。思いっきりハイファンタジーな世界ではないか。なんだか色々楽しみになってきた。

 魔女を探せと言われたが、その期限は言われていないし。もとの世界に戻ったところで代わり映えしない生活が待っているだけだ。最初はすぐに魔女を捕まえて帰ろうとは思ったけれど、折角だからこの世界を目一杯楽しもう。異世界転生物の小説のようでとても楽しそうである。

 そうすることに今決めた。


 冒険者にはその能力に応じたランクがあり、最上級のSから初心者のFまで七つの階級があるらしい。まさに異世界ファンタジーのテンプレだな。

 つまりイワノフはそれなりのレベルとして認められた冒険者であり、当然のように冒険者ギルドの会議室を借りる程度の資格もあった。そんなやつがどうしてあんな悪徳貴族の用心棒みたいな事をやっていたのか、とても不思議である。


「それはあんたには関係ないだろう」


 それはもちろん関係ないけど、やっぱり気になる。

 

 ギルドの会議室のレンタル料は、一回でパフェ一杯と大体同じ金額だった。時間制限はないらしい。料金はイワノフがさっきのお詫びだと言って支払ってくれたけど、お詫びにしては安すぎると思う。後で夕食もおごってもらおう。


「それで、あんた一体何者だ」


 部屋に入るなり、イワノフはずっと言いたかっただろう疑問を投げてきた。どうやらB級冒険者である自分を圧倒した目の前の少女の存在が気になるらしい。しかし何者といわれてもうまく説明できる気がしない。


「ただの村娘だよ」

「嘘を付くな、嘘を」


 ちょうどギルドの職員がお茶を持ってきてくれたので喉を潤す。普通に日本茶だった。普通に美味しかった。と現実逃避を決め込んだけれど、イワノフは騙されてくれなかった。


「ある極秘任務をちょっとね」

「極秘任務だと」

「魔女って知ってるかな」


 魔女を見つけろと言われてはいたが、この世界の住民が魔女に対してどういう認識を持っているのかとても気になった。魔王と同じ程度の存在かもしれない。


「魔女? 知らないな。いや、おとぎ話で聞いた事はあるが、実在するという話を聞いたことはない」


 最悪じゃん。手がかりなしかよ。

 B級というそれなりの冒険者が知らないのなら絶望的である。さてどうしてくれようか。無意識に腕を組んで、榛名は唸り声を上げていた。


「オレは知らないが、S級冒険者なら知ってるかもしれないな」


 伝説級であるS級冒険者は、この国には三人しかいないらしい。その人間離れした力と知識を持つ連中であれば、なにか情報を持っているらしい。いや、持っているかもしれない。そう言うことだった。


「そのS級冒険者って、何処に行けば会えるのかな」

「さあな」


 国内を転々としている彼らに会うのはほぼ運だそうである。時々王都にあるギルド本部に顔を出すから、王都に行けばエンカウントの可能性は上がるらしい。

 ちなみにこの街はハナサキという王都から最も離れた村だった。

 やっぱ村なんだ。


「で、その魔女がどうしたんだ」

「とりあえず魔女を探すのが目的なんだよね」


 まずは魔女を探す。

 にしても手がかりが殆ど無いとかクソゲーだな。RPG見たく片っ端から話しかけて歩こうかと思ってしまう。そんなことはしないけれど。


「なるほど」

「じゃあまずそのS級冒険者とかに話を聞くために王都に向かおう。道案内をよろしく頼むよ、イワノフくん」

「は?」

「なにか問題でも」


 とぼけた返事をするので、圧力を掛けてイワノフを黙らせた。

 最初のミッションは王都に行く事だ。行くだけなら簡単だろう。


「いや無理だろ」


 よくよく聞いてみると、村娘のままでは王都どころか他の街にも入れてもらえないらしい。この世界は村娘に厳しかった。いったいどうしろというのだ。


「冒険者になればいい」


 そんな榛名に、イワノフが助言した。

 冒険者でDランク以上なら国内の移動に制限はない。Aランクになれば、国をまたぐことも容易になるらしい。商人になっても可能だが下積みが長いし、それ以前に榛名に商才はない。だからそっちの方法は諦めた。


「冒険者になってオレとパーティーを組めば問題ないだろう」


 上位の冒険者と一緒であれば低ランクでも行動制限はかからないらしい。

 そう言う事ならやぶさかかではない。本当に、イワノフを道案内に選んでよかった。イワノフとの出会いに乾杯。


「じゃあそうしようか」


 登録自体は登録料を払うだけでいいらしい。イワノフとのパーティー登録も同様に手続きだけで済んだ。それから市民カードに『冒険者ランクF』と書き加えられた。手書きではなく焼付だ。職業は冒険者に変わっていた。


 そして榛名は冒険者になった。


 名前:シヴァ(榛名桜子)

 種族:不明

 年齢:十六歳

 職業:冒険者

 レベル:一

 HP:三九〇

 MP:三九〇

 攻撃力:三〇

 防御力:九〇



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