010 ゴブリン程度なら余裕だった。
ダンジョンの中は有り体に言えば洞窟である。イワノフとケインを先頭に進んで行くと前方にモンスターがあらわれた。醜悪な外見に邪悪な性格を持ち、初心者向きの雑魚として最も有名なモンスターである。
そのゴブリンが三匹いた。
「とりあえず、オレがやる」
「僕も手伝うよ」
イワノフが剣を抜き、ケインが詠唱を始めた。
素早く接近したイワノフが速攻で左端の首をはねる。残りの二体はケインの火炎魔法でこんがりと燃えていた。ちょっと臭い。
「すごいな」
この世界での魔法は初めて見たけれど結構な威力だった。てか、こんな狭い洞窟の中で火炎魔法とか自殺行為な気もするけれど。いいのだろうか。
「魔法って簡単につかえるものなの?」
暇そうにしているユニテに問いかける。突然話しかけたからか、驚いて後ずさった。ちょっとカワイイ。
この世界の魔法は、魔力と魔力探知と魔力操作を駆使して使うらしい。魔力探知と魔力操作は訓練でレベルが上がるらしいけれど、魔力は生まれながらに保有量が決まっていて、ほとんど増えたりしないそうだ。使える属性も相性次第だ。
王族は魔力も多く、相性の良い属性もいくつか所有しているらしい。
チートだな。
「わたしは一つしか使えませんけれど」
そう言ってユニテは寂しげにわらった。
それでも、聖女見習いになるくらいはすごいんだろう。種類は少なくても、人並み外れた威力があればそれは立派な戦力だと思うのだ。
そう言ったら、ユニテは照れてた。
やっぱカワイイ。
ダンジョンの魔物は倒すと魔石と呼ばれるクリスタルっぽいものをドロップして消えていった。それはギルドに持ち込めばポイントに加算され、それ相当の報酬をもらえるらしい。ただ、ゴブリンの魔石にはほとんど価値はなかった。
そのまま奥に進んでいくとまたゴブリンが現れた。
丁度いい。自分の力を試す番だ。
「今度はわたしが殺るよ」
その言葉にケインの顔が僅かにゆがむ。
「大丈夫なのか?」
「大丈夫だ。問題ない」
心配したケインが尋ねるが、イワノフは自信ありげにそう答えた。そう言えば目の前で、腐った冒険者を瞬殺したのを見られていた。
前の世界では防御がメインのいわばタンク役だったけれど、別に攻撃が不得意なわけではなかった。少なくとも攻撃力では国内で十本の指には入っていたはずだ。
つまり強すぎて相手が居ない。
だからこの状況は楽しかった。
レベルの低い体で強い相手に戦える事にワクワクしていた。
「アイツのことを戦闘狂とか馬鹿にできないなぁ」
前の世界での相棒を思い出してひとりごちる。
「さて、行きますか」
以前のようなつもりで力を込めたが、思うように動かない。もとの体が村娘だから多少筋肉はついているが、榛名の思い通り動いてくれない。いや、動かしたら一気に体が壊れる感じがした。
仕方なくゆっくりとゴブリンの前まで歩いていく。一人で向かってくる相手に少しだけ動揺しているようだ。
直前で一旦止まり、この体で最大限の種発力を使い、一番近いゴブリンの目の前に飛び飛び出し、唯一のスキルを発揮する。
居合だ。
一瞬だけ刀を振っって鞘に収める。
小さな金属音とともに、ゴブリンのアタマが落ちた。そして魔石を残して消えていった。
少しばかり足に痛みを感じた。やはりこの体で無茶はできない。戻ったらイワノフに頼んで少し体を鍛えよう。そんなことより残りのゴブリンだ。
何が起こったのか理解できていない残りのゴブリンが一瞬呆ける。そのすきを逃すこと無く、榛名は順番に倒していく。木偶の坊をただ切り倒していく簡単なお仕事だった。楽勝だった。
最後の一体を倒してから、刀に地を振り払い鞘に収める。
振り返るとケインがアホ面で立っていた。
「なにあれ」
「だから問題ないと言ったはずだ」
「いやしかし」
イワノフは心配していなかったようだけれど、ケインは驚いたようだった。流石にFランクの村娘がゴブリンとはいえ五匹を瞬殺したのである。
「たぶんオレより強いぞ」
「ありえない」
目の前で確認したにもかかわらず、ケインは納得できないようだった。
「どうする、もう少し進むか」
村娘のステータスなのでゴブリン程度でも結構経験値は溜まっているだろうけれど、今日中にレベルを二桁には上げて行きたい。それにまだここに入ってから一時間も経っていなかった。
「いけるところまで行きたね」
「わかった」
シヴァのレベル上げを優先してくれるということで、そこからしばらく現れるモンスターはすべて榛名が倒していった。モンスターも次第に強くなっているが、まだまだ余裕だった。名前は知らないけれど、オークとかオーガとかなかそんな感じのモンスタだった気がする。レベルは一つ上がって九になった。
名前:シヴァ(榛名桜子)
種族:不明
年齢:十六歳
職業:冒険者(F)
レベル:六
HP:三九〇 > 四二九
MP:三九〇
攻撃力:三〇 > 三二
防御力:九〇 > 九一
どうやら魔力は上がらないというのは本当のようだった。
かなり進んだその奥に重厚な扉があった。
「ここは中ボスの部屋だ。どうする」
「イワノフなら倒せるのか」
「ケインがいれば余裕だろう」
「ならばいこうか」
部屋の中に居たのは鬼だった。
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