第三話 俺と陰謀と試験の結果
明日投稿するはずだったものを今日投稿しました。明日も投稿し、ストックも増やしておくのでその点はご安心ください。
カケルはスズカの言葉を断ち切るように、必死になって勉強した。アオイの力もあって基礎的な部分は理解できた。
テストまで一週間を切った時、カケルとアオイは最後の勉強会を終える。
「モンスターにも理解できるくらい分かりやすく教えたつもりでござる」
「いや本当に助かった。俺一人じゃ二週間勉強してもここまで理解できなかった。」
「IQ百十は伊達ではないでござるね」
「まったくだ。アオイがいなっかたらいつもの通り赤点すれすれだよ」
断っておくが、カケルはこの世界でこそ池沼といわれるほど頭が悪いが、元の世界では違う。
文字通り必死になって勉強すれば、カケルの通っていた学校のトップは余裕で狙えるほど、カケルは頭が悪くはない。
ただ、元の世界に寝食まで削って平日六時間、休日十四時間勉強をできる人は希少かもしれないが。
「もう拙者が教えてもカケル氏は理解できなさそうでござるから、あとはカケル氏の力でござる」
「あぁ、頭は馬鹿でも努力はできる。このまま突っ走るぞ!」
「それじゃあ試験の時まで通信は控えるでござる。……生死の分かれ目までもうすぐでござるね」
「おい、ビビらせることを言うなよ」
通信を切った時、カケルは一度も息抜きをしていないことに気づく。
カケルは少し位休憩しても罰は当たらないだろう。切りも良いしなと考え、近所のカフェで食事をすることにした。
この行動が、カケルの後の人生に大きな影響を与えるとは、カケルは露程も考えなかった。
カケルが学校の近くのビル中にあるカフェに入ろうとすると、カケルは見かけた女性を見つける。
「あら、カケルじゃない奇遇ね。会えてうれしいわ」
「……そうだな。シュリに会えて、俺はうれしい」
「そうよ、あなたのようなダメ人間は、私のような美人で頭のいいひとに従わないと」
「……そうだな」
カケルは会えて全然嬉しくない相手と遭遇してしまった。
後悔と苛立ちを覚えながらもカケルはなるべく穏便に事を済ませるように努力した。
ここで変に刺激したりして、対抗心を燃やされたら迷惑極まりない。そうカケルは考えていた。
「それで、カケルは何しにここへ来たの。あっ……まさかあたしが此処へ来ることを感知してとか!? だめよカケル。あなたと私はまだまだ釣り合ってないから」
そんなこと思ってねえよこの自意識過剰女! と叫びそうになるのをこらえ、カケルは何とか言葉を絞り出す。
「……いや、俺は勉強の休憩に来ただけだ。お前の顔を見れて俺はうれしい。」
「ふん、池沼は池沼並みに頑張ってるようね。けど、そんなお世辞であたしの気分がよくなるとか考えている時点で、まだまだ池沼ってとこね」
くそ! このアマ! カケルは切れそうになっていた。カケル的にはクリーンヒットに決まったお世辞をを切り捨てられたからだ。それが引き金となり、カケルは絶対に言ってはならない言葉を言ってしまった。
「お前を今度のテストで叩き潰す! 覚悟しておけ!」
「え! あなたそれって――」
シュリの言葉を最後まで聞かずカケルはカフェを飛び出し一直線に家に向かった。
勘違いしてそうなシュリを残して。
「まさかカケルと私って両思いなの!? それなら今回のテスト、カケルの勝負に応えるような点数を取らなきゃ!」
「で、なんでそんなことを言ったでござるか」
「勘弁してくれ。もう聞くの五回目だろ」
「まさか拙者もカケル氏が此処まで馬鹿だとは想像がつかなかったでござる」
「むぐっ……でもシュリが俺の言葉を奇跡的に聞いてないとか、あるんじゃないか!?」
「大声でいったと、カケル氏は言っていたでござろう。それも忘れたのでござるか?」
カケルの状況はまさに万事休すといった感じだ。最後の希望はカケルの努力と奇跡のみ。
「シュリが俺なんて眼中にない……はないか。今日は友達料金から親友料金に格上げされて今までの二倍の金をとられたから」
「あとは、運次第でござるね」
「おし、じゃあテストを始めるから各自ボックスの中に入ってくれ」
担任の指示に従い、カケルはテストの準備を始めた。
「いける、いける、俺ならいける」
カケルは必死に念じながも、ふとスズカの言葉を思い出した。
『そう。けどあなたは多分冒険者になると思うわ。私と一緒に心中するその日までね』
「そんな訳あるか。お前に俺の未来は終わらせない」
運命のチャイムが鳴った
一週間後カケルはある種の興奮に包まれていた。
テストが返される時までは眠れない日々が続いた。けれど今日でようやく終わる。勝負に勝っても負けても今日が自分の人生の分かれ目だとカケルは薄々感づいたいた。
「な、何でござるかカケル氏。そんな気持ち悪い笑みを浮かべて」
「いや、おまえとの付き合いも、これで最後になるかもなーと思って」
「死体は解剖しておくでござる」
「いやそこは埋めとけよ!」
こういう軽口も、アオイが自分を気遣ってくれているんだと感じると少しうれしくなった。
「――? ちょっとカケル氏。カケル氏はどこかでスズカ殿としゃべったでござるか?」
「……いや、スズカとは喋ったことはない」
「そうでござるか……いや、カケル氏のことをスズカ殿が微笑みながら見ているので少し気になっただけでござる。はっ! もしかしたらカケル氏、この土壇場で春がきたでござるか!?」
アオイの冗談に、カケルは全く笑えなかった。
なんだあの目は。何を考えてやがる。そうかカケルが熟考している間にテスト返しはすでに終わっていた。
「ちょっと、カケル氏。テストのデータ、もう配布されたでござるよ」
「……えっ、あぁ悪い」
カケルがテストの点数のデータを見ると三十点という赤点すれすれな点数と、本日をもって貴方は退学となりました。という簡素な言葉だけが記されていた。
「はぁ!? ちょっと待て! 俺は明らかに三十点以上の点数はとったぞ! それに、なんでテストのデータが返ってきてないんだよ!」
アオイが黙って指をさすと、そこには都市機密指定と書かれていた。
「都市機密指定!? こんなテストのどこにそんな要素があるんだよ」
「このテスト、社会主義者が作ったらしいわよ」
振り向くとスズカが微笑みながら立っていた。
「スズカ殿、それはどこで聞いたでござるか?」
「百億エールだせる?」
それは言外に話す気はないと言っているようなものだ。
「そこはもういい、肝心なのは俺の点数が三十点で退学処分を受けたということだ。スズカ、おまえ仕組んだな」
「あら、何のことかしら」
「とぼけんじゃ――」
「待つでござるカケル氏! 死にたいのでござるか!?」
アオイに止められるカケル。だがカケルにはスズカ以外、犯人とは考えられなかった。
「お前俺に言ったよな。私の言った通りになる的なことを!」
「えぇ言ったわよ。よかったわ、外れなくて」
さらにスズカはカケルにだけ聞こえるように小声で言った。
「あなたの本当の順位は四位よ。あなたからしたら三位に入れなくて悔しいのかもしれないけど、私の予想をはるかに上回った。まぁ三位だったら少しは考えたけど。この点数は、四位を取ってくれたカケルへのご褒美よ」
「てめぇおれの人生を何だと思って――」
「待ってくれカケル君。そんな酷い疑いを掛けるなんてよくないよ」
カケルはタクミの言葉に心底苛ついたが、カケルが何か言う前にタクミは続けて話す。
「カケル君。君には才能がないかもしれない。だからと言って才能のある人を妬むのはお門違いだ。カケル君は人を妬まずしっかり努力するべきだ」
「そうだぞカケル、おまえちゃんと勉強しろよ!」
「カケル、もしかして私のこと嫌いになったの?」
クラスのほとんどが人気者のタクミとアキラの雰囲気に流され、カケルを非難した。一名ほど見当違いな奴がいたが。
カケルは反論しようと立ち上がる素振りを見せたが、アオイに耳打ちされた。
「カケル氏ここで反論したらスズカ殿の思惑通りでござる」
カケルはアオイの言葉で再び席に居直ったが、再び我慢しきれなくなった。
「アオイ、ごめんな。今までありがとう」
アオイへ謝罪と別れの言葉を伝えるとカケルは教室から出て行った。
最初シュリはただの典型的な嫌な奴にするつもりでしたが、どうしてこうなった……