新兵器は唐突の御約束
「こちらEV01<イクセリオン>。
司令部、聞こえるか?」
「こちら司令塔<ノーデンス>ブリッジ。
精神感度良好、続きをどうぞ」
「視界及びセンサー内に邪神群の反応はなし。
隕石群が多めに見られるぐらいだ」
「ブリッジ了承。
引き続き哨戒に当たって下さい」
「EV01了解」
戦艦からの指示にEV01<イクサラン>は砕けた返礼を返す。
その姿はまるで旧世紀のロボットアニメの様である。
だが、あながち間違いではないのだろう。
邪神に対抗する為に生み出されたその造形は現行兵器の汎用性を活用すべくどうしてもパワードスーツ的になってしまう。
特に精神制御システムによって制御された構造は巨神を模したデザインだ。
高感度センサー群が多数搭載された戦艦がいるのに、何故彼らが哨戒などをしているのかというと、視えないのだ。
機械に制御された通常のセンサーでは邪神群を補足できない。
リンマスカーによって精神制御された疑似器官センサーと時代錯誤な有人視界のみが奴等を捉えられる。
その理由は数多あるらしいが戦場で戦う軍人にとっては唯一つ。
役に立つか立たないか、だけだ。
よって機神及び搭載艦による有視界哨戒のみが邪神群発見の一番有効な手段であった。
「!! ブリッジ!」
「どうした、01」
「奴等だ!」
「どういうことだ!?
こちらには何も――」
「隕石だ。
奴等隕石に擬態してやがる!」
その声が聞こえた訳ではないのだろう。
しかし次の瞬間、突如として奴等はその本性を現す。
隕石の表面に浮かぶ無数の眼。
真空の宇宙、なのに耳に響き渡る忌まわしき咆哮。
いあ! いあ! はすたあ!
はすたあ くふあやく ぶるぐとむ ぶぐとらぐるん ぶるぐとむ
あい! あい! はすたあ!
鴉でもなく、
土竜でもなく、
禿鷹でもなく、
蟻でもなく、
腐乱死体でもない。
蜂と翼竜を出鱈目に掛け合わせたような形容しがたきもの。
「C級邪神<バイアキー>だ
フーン器官による超高速攻撃に気を付けろ!」
警告も空しく、響き渡る爆発音。
宇宙空間で光速の1/10。
腰にある「フーン器官」を使うことで光速の400倍のスピードによる飛行が可能とするその能力。
機神によるフォースフィールドが展開されている為、かなり弱体化されている。
とはいえ視認できる速さではなくまるで瞬間移動の様に自身を魚雷の様に潜り込ませる。
地獄が始まった。
「艦長!!
敵の第二波、来ます!」
戦艦ブリッジではオペレーターが悲鳴を上げていた。
次々と移り行く戦況報告。
それは悪化の一途を告げるばかりだ。
「シールド全開、緊急回避!
動ける機神は!?」
「01、03は交戦中。
02は本艦の直衛に当たってます!」
「02の任務を解除、対処に当たらせろ!」
「駄目です、間に合いません!
艦底部に直撃します!」
「ぬう~なんてこった!」
死力を尽くすもシールドの隙間をつき迫る敵。
誰もが頭に浮かぶ「第三艦橋大破!」の報告は――
いつまで経っても流れなかった。
「か、艦長!?」
「どうした!?」
「第三艦橋前……敵ロスト。
いえ、邪神群の大規模消失を確認!」
「何が起きた!?」
「ふむ、こちら第三艦橋主任技師ミーヌ・フォン・アインツヴェール。
説明が必要か、艦長」
「ミーヌ中佐か!
いったいなにが起きた!?」
「私とノルン少尉で秘密裏に開発していた兵器を発動させた」
「何だそれは!?」
「波動防壁だ」
「は、波動……防壁?」
「そうだ。
機神を起動させる為に必要なRP値を攻勢的な防壁として射出展開。
邪神群の位階数値を削り存在そのものを直接乖離させた」
「……分かりやすく頼む」
「要は機神を起動させるエネルギーを全て、攻撃可能な波動障壁にした。
さっきのはその成果だ」
「つまり?」
「今がチャンスだ。
『こんなこともあろうかと』私達が造り出していた。
他にもカートリッジ型波動弾などもあるが……使うか?」
「勿論だ、中佐!
ゆくぞ、諸君。
人類に勝利を!!」
「「おお!!」」
新兵器の登場で歓声に揺れるブリッジ。
対比的に拡散とした第三艦橋でミーヌとアルティアは向かい合う。
「やりましたね、中佐殿」
「うむ。少尉のお陰だ」
「自分は何も」
「いや、私の理論を身を以て証明してくれた」
コクピットを模した台座に座り瞑想するアルに、ミーヌは深く感謝する。
それはミーヌの提唱する新しい理論。
機神の様なフォースフィールドによる中継点を必要とするのでなく、戦艦『そのもの』の位階値を上げ特攻する。
これなら熟達パイロットによる戦闘技能を必要とせず、リンマスカーの素質が有る者だけで起動できる。
従来の戦艦そのものの装備を活かした戦いを可能にする。
それは凡人の凡人による凡人の為の兵装。
まさにコロンブスの卵であった。
「感慨深いですね。
自分がこんな転機に立ち会えるなんて」
「フィルムでは見慣れた展開と理論だ」
「確かに(苦笑)
かの技師長なら想定の範囲内だ、とでも言いますね」
「ふふ、そうだな。
さあ~今日をもって人類は反旗を翻す。
まずは目の前の敵の殲滅だな。
ぬかるなよ、少尉!」
「了解です、中佐!」
20世紀フィルムを参照にした新兵器が艦長申請の下、次々と射出されていく。
それはまさに人類反攻を告げる華々しい幕開けの花火。
この日を境に人類は果敢に邪神群に応戦していくのだが……
それはまた別のお話。
ただこれ以降、第三艦橋配属は死亡フラグではなく最重要ポスト配置扱いされるようになるのだが――
その事に安堵し笑い合う二人の軍人がいたかは、定かではない。
第三艦橋配属になった俺は全力で死亡フラグを回避する~成功END~
作者初のSFものでしたが、いかがだったでしょうか?
不器用な二人のラブストーリーは別のシリーズをご参照下さい。
それではまたどこかで^^