同好者は激萌な天邪鬼
「つかぬ事を聞くが――少尉。
きょ、今日も暇か?」
「はい中佐殿。
勤務後は特に何も予定はありません」
「うむ、そうか。
ならば――今日も付き合え」
「了解です」
傍目にも嬉しそうに頷く中佐殿。
本人はクールぶってるつもりだろうが、表情筋がだらしなく歪んでいる。
年齢相応の素顔を部下の前で覗かせてしまうとは余程楽しみなのだろう。
それほど日々の鑑賞会が充実しているという証か。
俺も同好の士を迎え、大いに満足している。
事の始まりは雑談の折りに出た20世紀フィルムの内容が切っ掛けだった。
亜空間航法が実現したこの時代、他星系を訪れる事は夢ではなくなっている。
技師として新造戦艦の性能を推し量るのが中佐殿の任務。
こうして未到達海域を航海しているのも、新造戦艦故の装備面向上に他ならない。
何が必要で、何が不要か。
全てが絶無な宇宙では常にコスパを求め続けられる。
昔の人々は如何に苦労して宇宙を航海していたか――
それを語り始めた時に出たのだ。
俺の聖典である宇宙戦艦フィルムの話が。
後は話が早い。
同属の匂いを嗅ぎつけるのは我々は得意なのだ。
ふとした会話に含まれる、
「~~エンジン出力上昇」
「~~か。何かも懐かしい」
等々の台詞から怪しいとは踏んでいたが大当たりである。
さり気なく応じた返答に俺が同様に応じたところから互いの趣味が露呈した。
「み、皆には内緒だぞ」
そっと近寄り手招きされる。
かがみ込み顔を寄せると、赤面しながら耳打ちする中佐殿。
ふむ、萌える。