先任者は怜悧な美幼女
「ようこそ、地獄に最も近い職場へ。
不幸なる貴様の赴任に対し、心からお悔やみ申し上げよう」
気負いながら赴いた戦艦で行われたブリーフィング。
顔合わせ早々、尊大に反り返り縁起でもない挨拶をいきなりかますのは――
上官にして先任にあたる主任技師。
ミーヌ・フォン・アインツヴェールである。
飛び級で大学院を卒業し、軍に招聘された紛れもない天才。
金髪碧眼。
怜悧な相貌の持ち主で、俺を睥睨する視線は氷の様に冷たい。
俺がMだったら変な趣味に目覚めそうである。
一応技師主任ということで中佐相当の左官待遇なのだが……
踏み台上で偉そうにしている様子からは威厳が欠片も感じられない。
っていうか、すっげー小さい。
事前に聞いていなかったら「迷子の幼女?」って尋ねてしまいそうだ。
思わず中佐殿をマジマジ見詰めてしまう俺。
すると中佐殿は居心地悪そうにこちらを見詰め返し、さらには軍服の上に着込んだ白衣の裾をもじもじと弄り出す。
「なっ何だ、貴様。
私の顔に何かついているか?」
「はい、いいえ中佐殿。
失礼致しました。
本日付けで補佐を命じられましたアルティア・ノルン少尉であります。
誠心誠意サポートしますので、今後とも宜しくお願い致します!」
「う、うむ。
良い返事だ、少尉。
きさみゃには期待している」
あっ、今噛んだな。
何だか口元を抑え、恥ずかしそうにしてるし。
まあ見た目の外見はともかく実年齢も中学生くらいだろうしな。
年上の厳つい軍人を相手にすれば緊張するのも無理はないか。
俺は特に動揺を見せず、びしりと敬礼で応じる。
顔を赤面させたまま返礼する中佐殿。
ふむ、可愛い。