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自覚主人公  作者: 稲平 霜
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上田玲

2章『上田玲』


上田もどき(モモナ)が俺に攻撃を与えてくる。

俺は全てを見切り回避していた。

しかしどこか無気力で無意識に回避している。


その時涙の雫に、ある光景が映し出されていた。

その光景は広い草原に一軒。

水を多く吸い老朽化した木の家。

屋根は木の板で複数の釘でただ留めただけの家。

床はそのまま地面に藁の束が敷かれてある。


その家に息を切らしながら1人走ってくる少女が見えた。

その少女は藁をの束を抱えていた。

少女は1人で暮らしており、周りには人の気配も無く、草食動物がちらほら見える程度の土地だった。


動物たちからは信頼を得られているのか、少女の頬に頭を擦りつけてくる動物や頭を下げる動物たちが少女の友達だった。


しかし、そんな穏やかな時はすぐに去った。


紅蓮に染まる大地。

少女は家から飛び出し、辺りを見渡すとあれ程までに美しく生い茂っていた草原が真っ赤に染まっていた。

よく見ると動物達は人影に槍の様なもので突き刺され、そのまま火の海に投げ捨てられていた。


少女の眼に映る炎が永遠と続く。

動物たちの嘆き声、植物が泣き叫ぶ燃える音、真っ赤な空に打ち上げられる灰。


少女の瞳から炎が消えた。


起きると知らない所にいた。

ガッチリと補強されたであろう木の壁に石で出来ている天井、見つけられるだけでも高価な硝子、羊の毛皮を刈り取って絹で包んだ掛け布団にベッド。

どれも今まで体験したことの無いものばかり。

少女は掛け布団に顔を疼くめ、じわじわと涙が染み込んでいく。


「動物たち...自然...家...全部...!うわぁぁぁぁん!あの家は...!私にとって....かけがえのない物だったのに...!うわぁぁぁぁん!」

少女は顔を疼くめたまま、ただ嘆いてた。


いつの間にか少女は眠りにつき頬には涙痕が残っていた。

その夜何者かが少女に近寄り、頭を撫でていた。

「いいのよ...あなたは何も悪くないわ...」

少女に喋りかける声はどこか優しくまた穏やかな声かけだった。

その声に少女はどこか安心したように微笑を浮かべた。


いつの間にか雲が隠していた月が顔を出し、月光と同時に消えた謎の人影は誰も知らない。


少女が起きると同時にドアをノックされ、少女は小声で「はい...」と応じた。

するとドアは開かれ、香ばしく焼けた匂いがした。


ドアの隙間から見えた人は膝までの黒いワンピースの様なふくに、その上から淵にひらひらがついているエプロンを着ていた。

その姿からするにメイドだとわかった。


メイドの手には木を加工し紐のように編んでいる籠があり、その籠の中には丸っこいパンが複数入っていた。


少女がメイドを見やるとメイドは頷き、少女は食べて良いものだと確認し、両手にパンを持ち勢い良く食べだした。


パンを齧るとスポンジを顔を出し、スポンジから香ばしい匂いが漂う。

パンの匂いは少女を虜にし、がっつかせる。


少女が食べ終えた頃にドアから入ってくる人が見えた。

その姿は鎧を纏っている人、兵隊だった。


兵隊は少女に近寄り、膝に両手を置いて姿勢を低くして少女にこう言った。

「君はどうしてあんな所にいたの?」

その言葉に少女は怒号する。

「お前のせいで!動物達が!植物が!家が...!全部!ぜん...ぶ...なくなった...」

少女の叫ぶ声は段々小さくなっていく。


一刹那過ぎ、兵隊は少女に話し出す。

「君は“魔女”を知っているかい?魔女というのは人々に疫病を流行らせ、飽きたら人々を黒炭になるまで燃やす残忍な魔女。僕らはそんな魔女をいなくするために追っていたんだ。その魔女は僕ら兵隊をすべて塵になるまで焼き殺していった。悪いのは魔女だと思わないかい?」

と兵隊が少女に答えた。


少女は下を向いて俯き、兵隊にこう言った。

「なら、どうして....動物達を刺し殺す必要があったの?」

俯いていて顔は見えなかったが泣いているのが兵隊にはわかった。

そして兵隊は答えた。

「本当は土地を広げたかったからなんだ...」

その一言に少女は身を揺らし、裸足のまま駆け出した。

そのまま外に走り出て、上を向いて頬を濡らしながら、叫んで走る。


少女は走り疲れて暗く、狭い路地に腰かけて息を切らしていた。

空はとっくに暗くなっていた。

少女は空を見ると真っ赤に染まった空を思い出してしまった。


少女は首を横に振り、ため息を零した。


突如、少女の口元辺りに衝撃が走った。

布のようなもので手を覆い、少女の口を塞いでいる。

そのまま少女は持ち上げられ、目を塞がれ、どこがに連れていかれていることが分かった。


少女はいつの間にか意識を失っていた。


少女が目を覚ますと、頬が地面に擦りつけられていた。

部屋は石などで出来ており狭い部屋だった。

手足はどちらも拘束され、口は猿轡で縛られていて喋ろうにも喋れない。


体を動かそうとしても縛る力が強いせいか思うように動かない。

耳を澄ましてみると足音に揉めているような声が聞こえる。

内容はよく聞こえない。

足音が近づいてきて見ると男性二人が揉めていた。

その男性一人が少女が起きたのに気づき、少女を指さした。

男性は壁に少女をもたらせるように座らせると、服をナイフなどで破いた。


少女は抵抗していない。

それをいい事に男性は少女のズボンも切り裂いた。


暗い路地に響く男性の吐息に少女の吐息混じりの喘ぎ声。

男性は更に激しくやる。

それと同時に少女は喘ぐ。

段々やる事に少女から求めるようになってきた。

男性はニヤつき何度もやった。


そして休憩中に聞こえた。

甲高い笑い声が町中に響き渡る。

「イィッヒッヒッヒッヒ!」

その笑い声はだんだん少女と男性の方に近づいて来るように声が鳴り響く。


突如部屋に突風が吹き荒れた。

男性二人は少女と反対側の壁に飛ばされた。

それと同時に少女の拘束も破られた。


少女の前に立つのは“魔女”だった。

黒いドレスに広いつば付きの帽子、少し歪んだほうきを持っている。

その魔女は横目で少女を見遣り、こう言った。

「待ってて...助けてあげるから....」

その声は優しく少女を撫でるようだった。


少女はその言葉を聞き、少女の目に炎が戻ったのだった。


魔女は男性二人を見やり、こう言った。

「この子になにかするならお前ら末代まで....呪ってあげるよ....」

その言葉は絶対的な重さだった。


男性二人は怯えてすぐさま逃げ出した。


少女は魔女にこう言った。

「ありがとうございます....」

魔女はその言葉を無視して、魔女が言葉を放つ。

「あんたは本心で求めてたのかい?」

「どちらとも言えません。この頃色々とあったのできっとどうでもよくなったから...きっと本心では無いと...」

「そう?私の勘はほとんど本心って言ってるけど?」

「そうかもしれません」

「そっか!なら...今日からあんたは“色欲”の罪を背負って生きな!」

魔女が少女にそう告げると、少女の足元に紫色の魔法陣が表れ、少女の周りを紫の光が包み込み、やがて消えた。


そして魔女は切り替え、少女の名を聞いた。

「ところであんたの名前は?」

「私の名前は“桃菜(モモナ)”」

「よろしくな!モモナ!」

「はい!ところであなたの名前は?」

「私の名前は(アヤ)だよ!」

「アヤ!よろしく!」

魔女の挨拶が終わり、またモモナは光に包まれる。

モモナが目を開くと豪華なドレスを自分に身につけられた事に気づいてはしゃいでいた。


二人の女の人笑い声が聞こえる。

それはどこか楽しげだった。


しかし、パチッパチッ!火が燃える音。

モモナは火で焼ける光景を見ている。

真っ赤な火で焼いているのは魔女...アヤルマ・ヒルテ...

人々は魔女が焼けるのを見ながら歓喜を上げる。


その時、いや、ずっと前から気づいていた...

「私は私の周りの生き物に不幸をもたらす存在...なんだ....」

モモナは俯き泣きながら歩く。


たどり着いた場所は崖だった。

モモナは崖の先に立ち、空を歩いた。

モモナは頭から一直線に落ちた。

顔はぐちゃぐちゃに潰れ、関節はあらぬ方向に曲がり、目は霞んできた。


そして死んだ。


目が覚めるとモモナは知らない森の中にいた。

モモナは手を自分で見た。

すると自分の手は黒いモヤが体にへばりついたようだった。

急いで水の音のする方へ行き水面を見た。

すると全身黒いモヤに覆われていた。


モモナは何故か落ち着いていて、今できることを調べた。

調べたところ髪を自在に操れる事だった。


人々が住んでいる町に行くと石を投げられる。

モモナは自分の居場所はないと思い、髪を足のように操り海を渡った。


着いた街は硝子が多く使われている高い建物。

光が絶えない街だった。

モモナは街を観察していると昔の自分と瓜二つの少女を見つけた。

モモナはその少女を暗い路地裏に導き、モモナは少女に乗り移った。


そのまま時は流れ、モモナは黒い影として何度も永友の前に姿を表していた。


そして今、目の前にモモナは俺と目を合わせている。


俺が流した涙の中にあったモモナの記憶は上田の記憶と共に見てしまった。


俺は戦闘態勢を崩しモモナへと歩き、モモナを抱いて耳のそばで囁くようにこう言った。

「モモナ...辛かったな...悲しい思いもしたな...だからって全てお前が悪いんじゃない...だから悔やむんじゃない...責めんるんじゃない....もし辛くなったら俺がなんでも聞くから...」

「勝手な事を言うな!どれだけ辛かったかお前に知って堪るか!」

「確かにお前がどれだけ辛かったか俺には分からない!だからって辛い思いをしている人を見捨てる何てことはしたくないんだ!」

「なら...力で証明して見せなよ!力でねじ伏せて納得させてみな!」

モモナの叫ぶ声で戦いは始まった。

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