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自覚主人公  作者: 稲平 霜
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2章『針』


またか....

俺の周りには幾つもの時計があり、針が逆に回っている。

チクタクチクタクチクタクチクタク.....

甲高い音が耳元で鳴り止まない。

頭がおかしくなりそうになる。


まるで別の空間にいるような感覚が俺を襲う。

耳を塞いでも重低音で鳴り響く。


俺がうずくまった時に針の音は止んだ。

そして目を開けると強固な髪で作られた床が身の前にあった。

俺は状況を再確認し、頭をあげた。


強固な髪で作られた部屋の天井を見ると上田が吊るされていた。

もうすぐ上田は全方位から串刺しにされる...

その前に上田を天井から引き剥がさないと、また殺される。


俺は立ち上がり脚に力を込める。

そして飛び上がった。

5、6mあった天井はすぐに届き、上田を捕まえた。

しかし上田に纏わり付いている髪は上田の下半身と殆ど同化していて、引き剥がそうとすると上田の下半身が引きちぎられそうになる。


俺は上田に纏わり付いている髪を切ろうとするが、切ろうとするほど上田に纏わり付いていく。

髪の毛は上田の毛穴から縫い付けるように侵入し、同化しようとしている。


どうすれば...!


気付けば俺と上田の周りを槍の形をした髪が俺たちを狙っていた。

いつ来るか分からない攻撃を俺は見極める。

自然と呼吸は薄くなる。

眼球が動くのがよくわかる。

黒い眼に黒い槍が複数写る。


そして突然の摩擦音と空気を切る音が耳に入る。

それだけで複数の黒い槍が全方位から襲ってきたことが分かった。

俺は咄嗟に全体に突風を吹き荒らした。


風の音で何も聞こえなくなり、数cm先で黒い槍が止まっている。

風の壁を作り出したのだ。

しかし、自分の体力も消耗しているせいか長く続かないことが風を起こした時にわかった。


段々と風の威力が無くなってきた。

額から汗が滴り落ちる。

俺は歯を食いしばり最後の力を引き出し、部屋全体に風を飛ばした。

すると髪と髪同士にほんの少しだけ隙間が空き、全体的に部屋が崩れた。


同時に俺は傷を最小限に抑え、上田を髪から引き抜いた。

そして、落下した。

俺が下になり上田を上で持ち、できるだけ振動が弱くなるように落ちた。


直後、視界がぶれ黒い槍が再形成されるのが見えてしまった。

また失敗なのか....?


俺がそう思った瞬間。

俺達を囲んでいた強固な髪は一部に収縮され、地面に転がる。

視界が元に戻ってきた。


そして見た光景は髪のみで象られた人がいて、更にまとまってきてドレスを着ている人の様になった。

そしてその髪で作られたドレス姿の人は俺の方を向き、何かを喋っているように思えた。


俺は重症の上田を病院に運び、俺は念の為検査を受け、病院から1番近いホテルに泊まった。


テレビを付けると土砂の被害について報道されていた。

被害についてはたまたま人は居らず誰にも被害は出ていないということ。


俺達を除けば被害は無しだ。


というか俺達が土砂災害の原因なんだけど...


俺は一息ついてベッドに寝転がり、天井を見つめる。

流石に疲労が溜まったのか。

眠気が襲ってきた。



翌朝。

俺は自分の重たい体を起こし、窓の方を向く。

空は蒼く澄んでいて、山の向こう側には幾つかの雲が浮かんでいる。


俺はその景色をただ眺めていた。

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