真実
2章『真実』
う...え.....だ...
俺は....何を....?
「これだからお前はダメなんだよ」
自分の耳元から聞こえた声。
その声は自分の声に似ていた気がした。
「またお前は死んでしまうのか?」
「死ぬわけが無い。俺が死んだらこの世界は終わりだから」
「いやお前は死ぬ。お前は死んで俺がこの世界の主人公だ」
「そんなことにはならない。俺が生きている限り」
「お前はもう死にそうだぞ?」
「俺を俺が殺すわけがない。俺は生きる」
「残念だな。お前とお別れだな」
「そうだなお前が死ぬからな」
最後の俺の一言で俺の周りに光の粒が舞い、包み込む。
俺を包み込んでいた光が広範囲に散らばり飛んでいき、周りにあるものを示してくれた。
頑丈な髪の毛で造られた部屋。
光の差さない部屋。
俺が衝撃を与える事に壁と屋根が俺に迫ってくる。
「じっとしてろってか...」
俺は座り込んで動けなくなっていく。
心が折れる....
俺が弱っている時にまた声がした。
しかし、さっきの声とは違う声。
「上田?」
俺が天井を見ると上田が逆さに吊るされていた。
そして上田の横の壁あたりから槍の様な形をした髪が迫っている。
僅か1cmの所に迫っていた尖った髪は止まる。
その数秒後全方位から同じように迫っていき、俺の立っているところが揺れ動く。
俺は体勢を直し上田の方を向くと、上田は全方位から串刺しになっていた。
槍のような形をした髪は上田の体を突き抜け、先っぽから血がたれている。
俺はただただその状況を眺めていた。
自分の顔にまで飛び散ってきた血飛沫は頬を伝い、顎からまたポタポタ....と流れていく。
俺は血の他に頬を伝っている液体に気づいた。
なんで?
どうして涙を流しているのか分からない。
そして涙が地面に一滴落ちた時に上田が動き出した。
既に死んでいるはずなのに動き出す。
折れたはずの首や手、脚をメキメキ...とゴキゴキ...と全身を奏でる。
上田は顔をこちらに向け喋り出す。
「どう...し...て?どうし...て....助け....て...くれな...かっ....タノ...?」
喉を貫通しているはずなのに喋っている。
その状況は俺にとって地獄以外の何者でもなかった。
俺はただ立ち尽くす。
そして上田はまた喋り出す。
「ねぇ...どうして....?ねぇねぇねぇねぇぇねぇぇぇねぇねぇねぇ!!どうして?ねぇねぇねぇぇぇぇ!」
怨念のように聞こえる憎悪の言葉の数々は俺の耳に痛めつけた。
そして、時間は経ち点いては消えてはを繰り返す世界。
俺は、誰も救えなかった。
俺は傲慢だった....