表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/2

プロローグ


夜。遮断機の降りる音がする。

踏切で止まる一台の車。ピンクのヒョウ柄のダッシュボードマットが目立つ白い軽自動車だ。

運転席の若い女はシフトレバーをPレンジに入れブレーキから足をはなした。


「ちっ、ついてないな。」


女は車の窓を開け4分の1程しか吸っていないメンソールの煙草を投げ棄てた。ここの踏切は一度捕まるとかなり待たされる事で有名なのだ。

それから、助手席に置いてあった高級ブランドのハンドバックから携帯電話を取り出し、メールボックスを開いた。

待ち合わせ場所まであと少しだったが、遅刻の断りをいれるためだ。

 女は昼頃から携帯の出会い系アプリを使って今夜の相手と連絡を取り合っていた。彼氏がいる時は全く利用しないのだが、一人になると人肌恋しくて、つい出会い系に手が出てしまうのである。

とは言えタダで抱かれるつもりはなく、いただくものは頂いていた。つまり、女の羽振りが良い時は、いつもシングルの時と決まっていた。

 半分ほど開けた車の窓から2本目のタバコを投げ棄てた時、電車のやって来る音が聞こえてきた。


「やっとかよ。」


煙を吐き捨てながら、そう呟いた時、車がいきなり前進しだした。


「えっ?」


女は何が起きてるのか分からず動きが止まってしまった。

それは、停車中、隣の車が動き出した為に自分の車が動きだしたのかと思う錯覚に似ていた。

直ぐさまシフトレバーを確認すると、何故かDレンジに入っていたのだった。

女は慌ててブレーキを踏み込んだ。だが、すでに遮断機を押し上げ線路内に入ってしまっていた。

電車のライトがどんどん眩しくなってきて来る。

今度は床を抜く勢いでアクセルを目一杯踏み込んだ。


グゥオオオオオオオーーーン!!


だが、なぜかエンジンが唸るだけで、一向に進まない。


「何でPになってんだよ!」


と、女が叫んだ次の瞬間、特急電車が軽自動車を濁流のごとく飲み込んだ。

物凄い衝突音が近隣の住宅を襲い、車はボーリングのピンの様に勢い良く弾き飛ばされてしまった。


遮断機から十数メートルの所で止まった車は、無惨にも運転席が削り取らた様な形になっていた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ