第963話
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2017年8月15日午後5時8分。駐車場に着き、車のドアロックを解除して、乗り込む。そしてエンジンを掛け、しばらくアイドリングさせた後、アクセルを踏み込んだ。ゆっくりと発進させる。ハンドルを切りながら、通りへと走っていった。辺りは、車列の洪水だ。相当混雑している。いろんな意味で、無理していた。特に昼間は仕事が重なり、疲れる。
午後5時38分。新宿から、千代田へと出た。ビルが、辺りを取り囲んでいる。見慣れた光景だ。この街は大抵、風景が似ている。月井もここにいながら、いろんなことを感じ取っていた。もちろん、考えることはいろいろある。思考だって、通り一遍じゃないのだ。
昔から、警察官をやっていて、難しい事情もたくさんあった。ハードボイルドや警察小説などに出てくるような刑事は、そういない。長年やっているから、経験で分かるのだ。特に新宿にいる警察官など、犯罪者や裏社会の人間たちから、頻りに恐れられている。もちろん、警察サイドだって、犯罪を極力警戒していた。事件など、ないなら、ない方がいい。普通はそうだ。当たり前にそう考える。
別に月井も警察業務などを一通り心得ていても、あまり手荒な真似をしたくなかった。武器を携帯してない以上、危険であることに変わりはないのだし……。一般的に、警察官が銃などを持つのは、事件発生時だけだ。通常は所持してない。ある意味、いろんなことを想定してないと、危ないだろう。
午後6時。警視庁に着いた。会議には、また遅刻だ。いろいろある。人間の日常など、常に時間で動くにしても、だ。それに交通の状況など、アクシデントも複雑に重なってくる以上、日頃は余裕がない。仕方ない、と思う。人間は決して万能じゃないのだから……。(以下次号)




