第880話
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2017年8月8日午前8時1分。会議が終わり、席を立って、会議室を出た。そして一課のフロアへと歩き出す。自分のデスクに着き、紙の資料の束を置いて、軽く整理整頓してから、フロアを後にした。時間はない。今日も通常通り仕事だ。
午前8時8分。警視庁の駐車場から車に乗り込み、エンジンを掛けて、アクセルを踏み込む。通りに出し、新宿方向へと向かった。無理なことをたくさんしている。この仕事はきつい。だが、慌てずに一つずつこなしていく。そういった強さはあった。昔からそうだ。歌舞伎町交番にいた頃は、いろんな仕事を朝から晩までこなしていた。その時の経験が十分活きている。
もちろん、食事や休憩を取らないと、やれる仕事もやれない。ずっとそうだった。地獄を感じることもある。常にいろんなことに追われ続けていた。ただ、マイペースを崩さない。人間はやれることが限られているのだ。肉体も絶えず消耗する。
午前8時32分。新宿の街に着き、いつも車を停める駐車場に駐車した。そして中枢部へと歩いていく。繁華街やオフィス街は入り組んでいる。慣れはあった。昼間はずっとこの街にいるからだ。新宿自体、刺激が強い。街に接していて、いろいろあった。負の感情やストレスもたくさんある。
夏場の外勤は地獄だ。暇なく動く。おそらく、日常レベルでも相当な数の捜査員が散らばっているだろう。個々の警察官のことまでは知らない。また知っていても、個人的な付き合いなどはないのだ。ただ、ずっと動き続けていた。暗黙裡に上層部は命令を出している。月井たちヒラの刑事に対して……。
無理が利かなくなってきているのは感じる。ある意味、必然だ。思う。いずれ部署替えなどがあるだろうと。その時は、素直に応じないといけない。一公僕として……。
午前8時42分。ビル街は、朝の通勤客で混雑している。見送りながら、いろいろ感じていた。今のハードな仕事がいつまで続くのだろう?複雑な心境でいる。同じことが持続するわけじゃないのだから……。(以下次号)




