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新宿  作者: 竹仲法順
814/1001

第814話

     814

 2017年8月3日午前5時30分。自宅マンションの駐車場から車に乗り込み、エンジンを掛けて、アクセルを踏み込み、走らせる。幾分疲れていた。運転しながら思う。今日も一日が始まったと。体はだるい。メンタル面でも疲労気味だ。実際、外勤に際してもいろんなことがあった。ただ、決して逃げない。苦しいことがあっても、しっかり受け止める。月井にはそういった強さがあった。これは十分分かっていることだ。確かに難しいことなのだが……。

 早朝の新宿は一際静かだった。住宅街は静まり返っている。街はこれから動き出す。繁華街は眠らない街だ。いつも思っている。新宿はトラブルの絶えない街だと。月井も日々動く。治安を守るために。裏ではいろんなことが巻き起こっているのだろう。ただ、ベストを尽くすだけだった。常に無理している。ある意味、苦労が抜け切れない。いろんなことを味わい続けていた。一刑事として。

 午前6時1分。千代田区へと入り、車を運転し続ける。何かと難が多い。通りの車列を見ながら、そう思っていた。走りながら、時折後方も見る。いろんな人間が辺りにいるのだ。月井も常に周囲を観察している。デカなら当たり前のことだ。それに難しいことに遭遇しても、極めて落ち着いている。

 午前6時12分。警視庁に着き、車を停めて建物へと歩く。そして食堂に向かった。今から朝食だ。本庁の食堂は早朝も営業している。券売機で定食とアイスコーヒーの食券を買い求めて、カウンター越しに差し出し、待ち続けた。スマホを起動させて、ネットニュースを見ながら待つ。

 長年、朝起き抜けに食事する習慣がない。いつもコーヒーだけだ。その点は不健康だと思う。実際、何か食べないと身が持たない。料理を待ちながらも、いろいろと考え続けた。もちろん、警視庁の警察官といっても、小説やドラマなどに出てくるような刑事ばかりじゃない。それは十分分かっていた。日々いろいろある。一々気にする暇もないぐらい、いろんなことが……。(以下次号)


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