第661話
661
2017年7月22日午前11時21分。もうすぐお昼だ。かなり空腹だった。この時間帯は食事のことばかりを考える。月井も昔は食えない時代があったから、ある意味、食のありがたさは十分感じていた。一刑事として絶えず立ち働いていても、やはり思うことはあるのだ。葛藤しながらも……。
新宿にいれば、様々な事態と遭遇する。だが、慣れてしまって、そう気にしてなかった。この街は変わらない。20年前も今も、多くの部分が、だ。歓楽街としての要素も減ってない。昔からここにいて、ずっと頑張っている。警察の今と昔を同時に知っているのは、警視庁でも月井のような古株ぐらいなものだった。
正午前になると、定食屋やファーストフード店など、各店舗には長蛇の行列が出来る。誰もが食事を取りたいのだ。月井も朝食後は水しか飲んでなかったので、しんどかった。スーツの下はすでに汗だくである。食の贅沢などないのだし、食べられれば何でもいい。
この街は生存競争が激しい。難しいなと思う。日本中にある普通の街のような場所とは違っていた。絶えずサバイバルレースがあって、厳しさが感じ取れる。
正午になり、待っている時間がもったいないと思ったので、人があまり集まらない店へと行く。入ってから、テーブルに座り、食事と飲み物のアイスコーヒーをオーダーした。待っている間、スマホを見る。ネットニュースは次々と配信されてきて、読む方も大変だ。もちろん、全部の記事に目を通すことは出来ない。俯瞰しながら、ピックアップして読んでいく。警察官も学ぶことが続くのだ。月井もそうだった。もちろん、デカとしての複雑な事情はいろいろとあるのだが……。(以下次号)




