第652話
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2017年7月21日午後零時23分。読書を続ける。目は幾分疲れていた。昔からいろいろあって、時間がない生活を送っている。今日は潤沢に時があり、ゆっくりするつもりでいた。刑事というのは、実に酷な仕事だ。様々な制約があるからだった。ノンキャリアのデカとして、使われ続けている。
確かに警察内には想像もつかないことがあった。特に金銭面での問題など、長年警視庁にいても知らないことの方が多い。難しいのだ。ただでさえ、過酷な外勤ばかりなのだし……。
新宿は雑多な街である。昔からその認識は変わってない。歌舞伎町交番勤務時代は懐かしいのだ。最初配属になった場所を、デカという人種は執拗に覚えている。未だに夢に出てくるのだ。当時の夜間の光景などが……。
午後1時10分。読んでいた本を閉じて、ベッドに寝転がり、休憩した。取り巻く状況はそう変わらない。月井にとって、警察学校時代のバイト先としての歌舞伎町は、いろんな感情を持てるものだった。あの当時、居酒屋で働きながら、自由な連想をしていたのである。ネオンが煌々と灯った街は一向に退屈しない。
心配事はある。この先、一刑事として勤務していても、稼ぎは少ないだろう。果たしてやっていけるのか?それは頭の中に常にあった。だが、普段からあまり金を使わない。実際、食事代やコーヒー代は足し合わせてもそう大した額じゃない。倹しいのだ。貧乏時代が沁みている。ある意味、何とかやっていけそうな気はしていた。いろいろと事細かい事情などがあったとしても……。(以下次号)




