第611話
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2017年7月18日午後1時26分。街を歩きながら、辺りを見て回る。歌舞伎町には日々いろんな人間が出入りしていて、月井たち警察官も大変だ。昔からここは荒れていた。難しいものを感じる。刑事には捜査権や逮捕権などがあっても、そういった権限を乱用するわけにいかない。それに、ほぼ丸一日立ち仕事というのもきつかった。絶えず足腰が痛む。
ただ、慣れはあった。実際、歌舞伎町交番勤務から捜査一課に移り、刑事になって、新宿勤務も板に付いたのである。基本的にデカは大変なのだが、それもだいぶ緩和されたと思う。
公務員という仕事以外は、新宿での飲食店のバイトしかしたことがない。当時、薄給だった。警察学校在籍時は、ろくに食べられないような生活をしていて、バイト先の店の賄いに有り付いていたのだ。一学生だったから、貧乏していた。ただ、あの頃、散々苦しんで今がある。それに月井自体、楽観論者だった。たとえ今が悪くても、将来は明るい。常にそう思うことにしている。
確かに、いろいろと苦しいことはあった。耐えることを心掛けている。日常でも考えることがたくさんあって、何かと辛い。でも、逃げないのだ。一刑事として、街を守ることを考える。
午後2時15分。アイスの缶コーヒーを一缶買って飲みながら、木陰で休憩した。疲労がある。暑さで肉体をやられていた。メンタル面でもきつい。合間に休みを取ることも必要だ。常にそう思っていた。
この街にも多数の捜査員がいる。スーツを着用してない私服警官も混じっているから、外見からは見分けが付かない。警察も事情が複雑だと思う。月井も普段から、他の捜査員とは接触がない。それでもやっていけるのだ。昔から誰かとコンビを組むことをしなかったのだし、今だってそうである。危険な状態に陥った際はまずいのだが、あまり気にしてない。その時どうするかまで、考えてなかった。もちろん、刑事にもまさかの状態はあるのだが……。(以下次号)




