第574話
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2017年7月15日午後2時14分。歌舞伎町を歩く。巡回するごとに、この街には多数の人種がいることが目に付いた。月井も難しさを感じ取っている。労働力として、いろんな国の人間が来てくれることはありがたいのだが、一方では治安の悪化などを気にしていた。実に複雑だ。実際、日本自体、人口が減ってきているのだし……。
思う。高度な技術化などで、そういったことが解決されるかもしれないと。だが、そう簡単には行かない。警察官だって、人間のような知能を持ったロボットが出来れば、要らなくなるのだろうが、果たして理論通りになるのだろうか?そうなるまでには、10年20年掛かるだろう。その時に、この街はどうなっているのか?想像が付かない。
午後3時10分。暑い新宿の街を歩きながらも、疲れを感じていた。肉体は疲労している。時折、足を止めて、呼吸を整えた。疲労があっても、逃げるわけにいかない。そう思い、踏み止まっていた。逃げの姿勢というものはない。ずっと頑張っている。多少無理してでも。
昔からスランプのようなものは抱え込んでいた。それを一番感じていたのは、交番勤務から晴れて刑事になった時だ。当時、相当きつい毎日を送っていた。デカとして、いろんな任務をこなすのは、かなりの体力や精神力を必要とする。それがあの時はまだなかった。
月井もいろいろある。日常において。決して平板じゃない。特に一課の刑事というだけで、難しいことを迫られる。南雲のような精神科医に世話になっていたのも、悩んでいたからだ。警察官にも当然ながら、メンタルケアは必要となる。特にここ最近のように、何かと変化しやすい時代は。警視庁捜査一課も、内部ではいろいろある。常に思う。同僚たちだってきついだろうと。それに殺しのヤマなどを追う警察官は、不規則な生活が続くのだった。楽じゃない。当たり前のことなのだが……。(以下次号)




