第536話
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2017年7月12日午前7時半。一課のデカが集まり、定例の会議が始まった。月井もデスクから立ち上がり、パソコンをセーフティーモードに切り替えて、会議室へと行く。一課には夜勤の刑事は一人もいなくて、皆帰っていた。これから、警視庁もデイタイムとなる。
夏場の日勤は、肉体や神経が擦り切れそうだ。ある意味、過酷である。月井も配られた紙の資料にすぐ目を通し、持っていたタブレットのキーを叩く。記録を録り始めた。刑事たちの発言は一際重要となる。学校の授業でノートを取るのと同じ原理だ。聞き逃しても大丈夫なように、二重で録音までしていた。
今までいろんな場を経てきたのだが、常に冷静さを失わない。かっとなった方が負けなのである。武道と似ていた。剣道はチャンバラじゃない。勝ち負けを気にするんじゃなくて、心を鍛えるスポーツなのである。勘違いしている人間もいるようだが、月井には剣道の原点がしっかりと分かっていた。
午前7時50分。会議が終わりに近い。タブレットで、記録を録り続ける。確かに焦ることもあった。何せ同じことの繰り返しだからである。だが、初志を貫徹すれば、必ず結果が残るのだ。あくまでそう思っていた。世の中に無意味なことなど一つとしてない。少なくとも、現役の警察官である月井にはそう思えていた。歌舞伎町を見張るのも、意味がないわけじゃない。同じことを欠かさず続ける。一見単調なようで変化があった。人間も社会が変わるのと共に、変化し続けている。
午前8時1分。会議が終わり、タブレットや録音用のICレコーダーを持って席を立つ。そして一課を素通りし、階下へと歩き出した。常にいろんなことを考える。同じようなことの繰り返しでも、頭には違うことが過ぎっていた。もちろん、何もないことはない。いつもいろんな出来事を経て、警察官生活が続いている。酷なことも多々あった。こんなに蒸し暑いのに、焼けるアスファルトがある新宿で、丸一日外勤するということも……。(以下次号)




