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新宿  作者: 竹仲法順
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第528話

     528

 2017年7月11日午前5時32分。外出準備が出来たのだが、今行ったら、早くに着き過ぎるから、しばらくスマホでネットを見ることにした。普段なら警視庁に朝早く行くのだけれど、今日は病院だから、午前8時半ぐらいに着けばいい。確か、南雲の経営する精神科の病院は、新宿の某ビル内にある。電話番号は覚えているのだが、連絡なしで行っても診てもらえるだろう。

 南雲は古株の精神科医だ。月井が20代の頃、50ぐらいだったから、今は70代だろう。交番勤務時代に一度重度のノイローゼに罹り、その時、助けてもらった。昔の精神安定剤は服用後、急激に眠気が来るものが多く、コーヒーを飲んで睡魔を振り払っていたのを覚えている。

 交番に巡査としていた時、一番疲労が激しかった。当時、朝から晩まで働き詰めで、夜間も眠れないことがあったのだ。南雲の診断は急性のストレス障害だった。向精神薬を使い、治したのである。誰もが歌舞伎町交番など、物騒な場所に勤務すると、ノイローゼになるのだ。

 晴れて一課の刑事になっても、いろいろあった。ストレス障害は治っても、何となく精神的に不調だったのだ。だが、新宿担当となり、街に張り付いていたので、南雲に診てもらう暇はなかった。ご無沙汰しているのである。今の南雲はどんな感じだろう?70代だと、白髪が多いに違いない。月井よりも30ぐらい年上だから、年齢相応に人生経験も豊富だ。

 ちょうどネットニュースを一通り読み終え、午前7時になった。そろそろ出かけよう。そう思い、カバンにタブレットやスマホを詰め込んで、持ってから歩き出す。地下鉄や電車を乗り継いで、行ける場所にある。電車代は安い。都心を行くには、電車かバス以外は徒歩が多い。存分に歩くつもりでいた。昔から体力は十分あったのだし……。

 午前8時22分。電車を降りて、病院最寄りの駅に着いた。歩いてビルへと向かう。この辺りは新宿区でも外れに近い。近辺は圧倒してビルが多かった。久々にこの近辺を歩く。多分10年ぶりぐらいだ。それだけ同じ新宿区でも疎遠なのである。いつもいる歌舞伎町方面とは方向が逆だから、行き来がない。歩きながら、南雲に話したいことを考える。特に今日一番に相談するのは夜間の覚醒など、不眠の件だ。おそらく診察に加えて、睡眠導入剤を処方されるだろう。不眠症の治療としては、極当たり前のやり方なのだが……。(以下次号)


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